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さいころの目の積が30の倍数になる確率?

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 この記事では, 受験数学でありがちな, さいころの目の積について考えていこうと思います.

 素因数としてありえるものは2,3,5しかありませんから, これらをx,y,zとおきましょう. (←これが何言ってるか分からなくてもしばし我慢してみてください) そして, 以下のような式を考えます.

f(x,y,z)=(1+x+y+x2+z+xy)n

 これを展開することを考えると, n乗の展開というのは, この6項のうちからどれかを選らんで掛け合わせるのをn回繰り返すのですから, 場合の数の計算と同等になります.
 つまり, 例えば積が15になる場合の数はこれのyzの係数ですし, 積が120になる場合の数はx3yzの係数に等しくなります!

積が偶数になる確率

 まずは積が偶数になる確率を求めてみましょう. これは簡単で, x1つ以上含まれているものの係数の和を求めれば良いのですから, 逆に全体から, xに関する定数項を引けば良いです. 従って, (係数を求めるためにy,zには1を代入します)

f(1,1,1)f(0,1,1)=6n3n

が場合の数であり, 確率は112nとなります.

積が4の倍数になる確率

 これは問題集とかでは頻出でしょうか. 普通なら並べ方とかを考えるのですが, この考え方を使うともっと楽に解くことができます!
 今度はxの定数項と, x1の係数を全体から引けば良いのですが, ここで「微分してx=0とするとxの係数のみが出てくる」ことを利用します!ついでに毎回y=z=1とするのも面倒なのでF(x)=f(x,1,1)=(x2+2x+3)nとおいて,

F(1)F(0)F(0)=6n3n2n3n1
が場合の数であり, 確率は112nn32n1となります.

積が8の倍数になる確率

 これは真面目にやると計算が激しすぎるでしょうね. 今度はx2の係数は, 2階微分でx=0としたものの12倍であることに注意して,

F(1)F(0)F(0)12F(0)=6n3n2n3n1n(2n+1)3n2
より, 確率は112nn32n1n(2n+1)92nとなります.

積が20の倍数になる確率

 これは昔, 東大で出たのでしたっけ. x2z以上の係数を求めれば良いですね. これにはまずfからzに関する定数項を除いたものをG(x)=f(x,1,1)f(x,1,0)=(x2+2x+3)n(x2+2x+2)nとした上で, G(x)の定数項とxの係数を除いて,

G(1)G(0)G(0)=6n5n(3n2n)(2n3n12n2n1)=6n5n(2n+3)3n1+(n+1)2n
なので, 確率は1(56)n2n+332n+n+13nとなります.

積が30の倍数になる確率

 いよいよ本題です. xyz以上の係数を求めれば良いですね. x,y,zそれぞれに関する定数項を引いてあげれば良いのですが, それだと引きすぎなのでx=y=0としたものをその分足してあげて...と, 包除原理みたいにしてやれば良いです. 即ち

x,y,z{0,1}(1)x+y+z+1f(x,y,z)=6n3n4n5n+2n+3n+2n1
なので, 確率は1(56)n(23)n+2(13)n(16)nとなります.

 ここまで読んでくださった方, ありがとうございました. こういう風にあえて変数にして母関数をとると, 代入や微分によって面白い結果を得られることがあります.
 この方法を利用すると, 例えば目の数字が「1,2,2,4」である四面体のさいころをn回振って, 目の積が2でちょうどk回割れる確率は(2nk), とかも簡単にわかりますね.

 興味のある方は 私の過去の記事 もご覧ください. 同じような手法で解ける問題をもうひとつ紹介しています.

投稿日:2021916
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東大数理M1

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