32

さいころの目の積が30の倍数になる確率?

6100
0
$$\newcommand{a}[0]{\alpha} \newcommand{asn}[0]{\hspace{16pt}(\mathrm{as}\ n\to\infty)} \newcommand{b}[0]{\beta} \newcommand{beq}[0]{\begin{eqnarray*}} \newcommand{c}[2]{{}_{#1}\mathrm{C}_{#2}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{cb}[0]{\binom{2n}{n}} \newcommand{d}[0]{\mathrm{d}} \newcommand{del}[0]{\partial} \newcommand{dhp}[0]{\dfrac{\pi}2} \newcommand{ds}[0]{\displaystyle} \newcommand{eeq}[0]{\end{eqnarray*}} \newcommand{ep}[0]{\varepsilon} \newcommand{G}[1]{\Gamma({#1})} \newcommand{g}[0]{\gamma} \newcommand{hp}[0]{\frac{\pi}2} \newcommand{I}[0]{\mathrm{I}} \newcommand{l}[0]{\ell} \newcommand{limn}[0]{\lim_{n\to\infty}} \newcommand{limx}[0]{\lim_{x\to\infty}} \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{nck}[0]{\binom{n}{k}} \newcommand{p}[0]{\varphi} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{R}[0]{\mathbb{R}} \newcommand{space}[0]{\hspace{12pt}} \newcommand{sumk}[1]{\sum_{k={#1}}^n} \newcommand{sumn}[1]{\sum_{n={#1}}^\infty} \newcommand{t}[0]{\theta} \newcommand{tc}[0]{\TextCenter} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

${}$

 この記事では, 受験数学でありがちな, さいころの目の積について考えていこうと思います.

 素因数としてありえるものは$2,3,5$しかありませんから, これらを$x,y,z$とおきましょう. (←これが何言ってるか分からなくてもしばし我慢してみてください) そして, 以下のような式を考えます.

$$ f(x,y,z)=(1+x+y+x^2+z+xy)^n$$

 これを展開することを考えると, $n$乗の展開というのは, この$6$項のうちからどれかを選らんで掛け合わせるのを$n$回繰り返すのですから, 場合の数の計算と同等になります.
 つまり, 例えば積が$15$になる場合の数はこれの$yz$の係数ですし, 積が$120$になる場合の数は$x^3yz$の係数に等しくなります!

積が偶数になる確率

 まずは積が偶数になる確率を求めてみましょう. これは簡単で, $x$$1$つ以上含まれているものの係数の和を求めれば良いのですから, 逆に全体から, $x$に関する定数項を引けば良いです. 従って, (係数を求めるために$y,z$には$1$を代入します)

$$ f(1,1,1)-f(0,1,1)=6^n-3^n$$

が場合の数であり, 確率は$\ds1-\frac1{2^n}$となります.

積が$4$の倍数になる確率

 これは問題集とかでは頻出でしょうか. 普通なら並べ方とかを考えるのですが, この考え方を使うともっと楽に解くことができます!
 今度は$x$の定数項と, $x^1$の係数を全体から引けば良いのですが, ここで「微分して$x=0$とすると$x$の係数のみが出てくる」ことを利用します!ついでに毎回$y=z=1$とするのも面倒なので$F(x)=f(x,1,1)=(x^2+2x+3)^n$とおいて,

$$\beq && F(1)-F(0)-F'(0)\\[5pt] &=& 6^n-3^n-2n\cdot3^{n-1} \eeq$$
が場合の数であり, 確率は$\ds1-\frac1{2^n}-\frac{n}{3\cdot2^{n-1}}$となります.

積が$8$の倍数になる確率

 これは真面目にやると計算が激しすぎるでしょうね. 今度は$x^2$の係数は, $2$階微分で$x=0$としたものの$\frac12$倍であることに注意して,

$$\beq &&F(1)-F(0)-F'(0)-\frac12F''(0)\\[5pt] &=&6^n-3^n-2n\cdot3^{n-1}-n(2n+1)3^{n-2} \eeq$$
より, 確率は$\ds1-\frac1{2^n}-\frac{n}{3\cdot2^{n-1}}-\frac{n(2n+1)}{9\cdot2^n}$となります.

積が$20$の倍数になる確率

 これは昔, 東大で出たのでしたっけ. $x^2z$以上の係数を求めれば良いですね. これにはまず$f$から$z$に関する定数項を除いたものを$G(x)=f(x,1,1)-f(x,1,0)=(x^2+2x+3)^n-(x^2+2x+2)^n$とした上で, $G(x)$の定数項と$x$の係数を除いて,

$$\beq &&G(1)-G(0)-G'(0)\\[5pt] &=&6^n-5^n-(3^n-2^n)-(2n\cdot3^{n-1}-2n\cdot2^{n-1})\\[5pt] &=&6^n-5^n-(2n+3)3^{n-1}+(n+1)2^n \eeq$$
なので, 確率は$\ds1-\left(\frac56\right)^n-\frac{2n+3}{3\cdot2^n}+\frac{n+1}{3^n}$となります.

積が$30$の倍数になる確率

 いよいよ本題です. $xyz$以上の係数を求めれば良いですね. $x,y,z$それぞれに関する定数項を引いてあげれば良いのですが, それだと引きすぎなので$x=y=0$としたものをその分足してあげて...と, 包除原理みたいにしてやれば良いです. 即ち

$$\beq &&\sum_{x,y,z\in\{0,1\}}(-1)^{x+y+z+1}f(x,y,z)\\[5pt] &=&6^n-3^n-4^n-5^n+2^n+3^n+2^n-1 \eeq$$
なので, 確率は$\ds1-\left(\frac56\right)^n-\left(\frac23\right)^n+2\left(\frac13\right)^n-\left(\frac16\right)^n$となります.

${}$

 ここまで読んでくださった方, ありがとうございました. こういう風にあえて変数にして母関数をとると, 代入や微分によって面白い結果を得られることがあります.
 この方法を利用すると, 例えば目の数字が「$1,2,2,4$」である四面体のさいころを$n$回振って, 目の積が$2$でちょうど$k$回割れる確率は$\ds\binom{2n}{k}$, とかも簡単にわかりますね.

 興味のある方は 私の過去の記事 もご覧ください. 同じような手法で解ける問題をもうひとつ紹介しています.

${}$

投稿日:2021916

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

東大理数B3です

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中