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大学数学基礎解説
文献あり

ウォリス積絡みの極限

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今回はつぎの式(☆)を示したいと思います

(☆)

limnn0πf(x)sinnxdx=2πf(π2)

但し、f(x)は区間[0,π]で連続な関数

証明の概略

STEP1
xπ2から遠いところでlimの中身が0に収束することをしめす。
STEP2
xπ2に近いところでの極限値を計算する。

(注)この記事ではウォリス積の証明はしません。
代わりに高校数学の美しい物語さんウォリス積のページのリンクを貼っておきます。
https://manabitimes.jp/math/760

証明 STEP1

まず以下の式(甲)を示します

(甲)

limnn0π2εf(x)sinnxdx=0
但しε=n13

0xπ2での|f(x)|の最大値をMとすると
|n0π2εf(x)sinnxdx|n0π2ε|f(x)sinnx|dxn0π2εMsinnxdxn0π2εMsinn(π2ε)dx=M(π2ε)ncosnεM(π2ε)(1ε)32((1(12ε2124ε4))112ε2124ε4)12ε124ε
5行目から6行目はマクローリン型不等式
cosx112x2+124x4
を用いた。
ここでnε0だから
limnM(π2ε)(1ε)32((1(12ε2124ε4))112ε2124ε4)12ε124ε=0
これと上の不等式より
limnn0π2εf(x)sinnxdx=0

また、(甲)を使うと
π2+επf(x)sinnxdx=0π2εf(πx)sinnxdx
より

(乙)

limnnπ2+επf(x)sinnxdx=0

が導かれます。
また、途中式をみるとつぎの式(丙)もわかります

(丙)

limnn0π2εsinnxdx=limnnπ2+επsinnxdx=0

証明 STEP2

まずつぎの式(丁)を示します。

(丁)

limnnπ2επ2+εf(x)sinnxdx=2πf(π2)

条件より、区間π2εxπ2+εで常に|f(π2)f(x)|anかつlimnan=0となる正数列{an}が存在する。
よって
|nπ2επ2+ε(f(π2)f(x))sinnxdx|nπ2επ2+ε|f(π2)f(x)|sinnxdxannπ2επ2+εsinnxdxann0πsinnxdx
ここで
limnn0πsinnxdx=2π
(∵ウォリス積)に注意すると
limnann0πsinnxdx=0
よって
limn|nπ2επ2+ε(f(π2)f(x))sinnxdx|=0
したがって
limnnπ2επ2+εf(x)sinnxdx=limnf(π2)nπ2επ2+εsinnxdx=limnf(π2)n0πsinnxdx(∵(丙))=2πf(π2)

(甲)、(乙)、(丁)より
limnn0πf(x)sinnxdx=2πf(π2)
です。

あとがき

f(x)の条件はもっと緩くできると思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました。

参考文献

投稿日:20211015
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  1. 証明の概略
  2. 証明 STEP1
  3. 証明 STEP2
  4. 参考文献