次の定理は置換積分とか積分の変数変換公式と呼ばれ,定積分の計算においてしばしば強力な道具となります:
関数 $f(x)$ の変数 $x$ を,微分可能な全単射 $\phi \colon [a,b] \to [c,d]$ によって $x = \phi(t)$ と変換するとき,次の等式が成り立つ:
$$ \int_{c}^{d} f(x) dx = \int_{a}^{b} f(\phi(t)) \cdot \left| \frac{d\phi}{dt}(t) \right| dt. $$
右辺の絶対値は,$\phi$ が単調減少の場合(このとき $\phi(a) = d$ かつ $\phi(b) = c$ となる)の符号を調整するものです.
多変数関数の場合にも,同様に変数変換の公式が存在します.変数系 $x, y$ を変数系 $s,t$ へと変換する場合,しばしば $x,y$ のそれぞれが $s,t$ の関数,すなわち
$$ x = \phi(s,t), \quad y = \psi(s,t)$$
のように変換されることになりますから,定理1での調整部分($\frac{d\phi}{dt}$ の部分)はもう少し複雑になります.
2変数関数 $f(x,y)$ の変数系 $x,y$ を,性質の良い(詳細は省きます)変数変換 $\phi, \psi$ によって $x = \phi(s,t)$, $y = \psi(s,t)$ と変換するとき,次の等式が成り立つ:
$$ \iint_A f(x,y) dxdy = \iint_B f(\phi(s,t), \psi(s,t)) \left| J(x,y;s,t)\right| dsdt,$$
ただしここで $$J(x,y;s,t) = \det \begin{pmatrix}
\frac{d\phi}{ds} & \frac{d\phi}{dt} \\
\frac{d\psi}{ds} & \frac{d\psi}{dt}
\end{pmatrix} $$ はヤコビ行列式(ヤコビアン)を表す.