は成立する
以下を、複素数を要素にもつの正方行列の集合とします。
行列の指数関数はTaylor展開で定義されます。とすると、以下のようになります:
行列の指数関数では、としたとき、
は一般には成立しません。は一般にはBaker-Campbell-Hausdorffの公式
Baker-Campbell-Hausdorffの公式
のようになります。
ここで、上記公式の右辺以降の項にはすべてが積として含まれることから、であればであることがわかります:
(が数のとき、を、両辺を展開することにより証明できますが、この証明はが可換行列でも成り立つことからも公式2の成立がわかります)
は成立しない
逆はどうでしょう。すなわち
は成立するでしょうか。
実はこれは成立しません。
反例を挙げます。例えばなら
という例があります(Ref.[1]より引用)。
だが
この例の場合、を示すには、の固有値さえ求めればよく、固有ベクトルは必要ありません。
の計算: はすでに対角化されており、である。
(に注意)
の計算: の固有値はで対角化可能であり、対角化された行列をとするとなので、。よって対角化するための正則行列をとすると
の計算: の固有値はであるため、対角化された行列をとすると、。よっての計算と同様の議論から。
よって。
は直接計算で簡単に確かめられます。
なら
という例があります(Ref.[2]より引用)。
だが
これも上の例と同様、固有値を計算すれば示せます。この場合の固有値は全ての形をしており、固有値の縮退もないので対角化可能です。よっての例での計算を踏まえれば、
がすぐにわかります。
は簡単に確かめられます。
以上より
は成立しません。