タイトルの通り, ものすごい積分です. 私はこれを見たときに, 美しすぎて感動してしまいました.
とっても感動したので, 積分を考えるのも, 証明も, 自力ではやっていないのですが, みなさんにこの感動を伝えるために, 記事にします.
使う道具は, 複素解析です.
${}$
$$ \displaystyle\int_0^1\frac{\sin\pi x}{x^x(1-x)^{1-x}}\,dx=\frac{\pi}{e}$$
${}$
(証明)
$$\displaystyle f(z)=\exp\big(-iπz-z\log z-(1-z)\log(1-z)\big)$$
とおきます.
これの特異点(というのでしょうか...?)は, $z=0,1$です.
$\mathrm{branch\ cut}$ を, $\log z$の偏角は $-π<\arg z\leqqπ$, $\log(1-z)$ の偏角は $0<\arg(1-z)\leqq2π$ とすると, なんと負の実軸上で$f(z)$は連続になります!
これを確認するために, $x$を正の実数として, $f(-x)$の上下を調べます.
負の実軸に上から近づいた場合はもちろん連続で,
$$\begin{eqnarray*}
f(-x+0\,i)&=&f(-x)\\[5pt]
&=&\exp\big(iπx+x(\log x+iπ)-(1+x)(\log(1+x)+2πi)\big)\\[5pt]
&=&\exp\big(x\log x-(1+x)\log(1+x)\big)
\end{eqnarray*}$$
となります. 一方, 下から近づいた場合は,
$$\begin{eqnarray*}
f(-x-0\,i)&=&\exp\big(iπx+x(\log x-iπ)-(1+x)\log(1+x)\big)\hspace{32pt}\\[5pt]
&=&\exp\big(x\log x-(1+x)\log(1+x)\big)=f(-x)
\end{eqnarray*}$$
となって一致するので, $f(z)$は区間$(-\infty,0)$で連続であることが分かりました.
${}$
ここで, $r$を十分小さい実数とし, 次のようなダンベル形の積分路をとります.
$$\begin{eqnarray*} C_0:z&=&re^{i\theta}~~(\theta:0\to2π)\\[5pt] L_-:z&=&t-0\,i~~(t:r\to1-r)\\[5pt] C_1:z&=&1+re^{i\theta}~~(\theta:-π\toπ)\\[5pt] L_+:z&=&t+0\,i~~(t:1-r\to r) \end{eqnarray*}$$
ただし, $+0\,i$とは, 区間$(0,1)$に上から近づいていったときの$f(z)$の値を積分することを表します.
また, $C=C_0\cdot L_-\cdot C_1\cdot L_+$ とします.
${}$
まず, $r\to0$とすると, $C_0,C_1$での積分は, $f(z)$が$z\to0,~z\to1$ で有界である一方で積分路の長さは$0$になることから, 積分値も$0$となります.
次に $L_-,L_+$での積分ですが, 実数$0 < x < 1$に対して
$$\begin{eqnarray*}
f(x+0\,i)&=&\exp\big(-iπx-x\log x-(1-x)(\log(1-x)+2πi)\big)\\[5pt]
&=&\exp\big(iπx-x\log x-(1-x)\log(1-x)\big)\\[5pt]
f(x-0\,i)&=&\exp\big(-iπx-x\log x-(1-x)\log(1-x)\big)
\end{eqnarray*}$$
なので, $r\to0$とすると,
$$\begin{eqnarray*}
\bigg(\int_{L_-}+\int_{L_+}\bigg)f(z)\,dz&=&\int_0^1\big(f(x-0\,i)-f(x+0\,i)\big)\,dx\\[5pt]
&=&-2i\int_0^1\frac{\sin\pi x}{x^x(1-x)^{1-x}}\,dx
\end{eqnarray*}$$
従って, 求める積分を$I$として,
$$\displaystyle \int_Cf(z)\,dz=-2iI$$
と分かりました.
${}$
一方, $f(z)$は$C$の外側では無限遠点を除き正則なので, 無限遠点の留数を利用して, $\displaystyle\int_Cf(z)\,dz$ の値を求めることができます.
具体的には,
$$\displaystyle\int_Cf(z)\,dz=-2πi\ \underset{z=\infty}{\mathrm{Res}}f(z)$$
となります.
$$\begin{eqnarray*}
\underset{z=\infty}{\mathrm{Res}}f(z)&=&-\underset{z=0}{\mathrm{Res}}\frac1{z^2}f\big(\frac1z\big)\\[5pt]
&=&-\underset{z=0}{\mathrm{Res}}\frac1{z^2}\exp\Big(-\frac{iπ}z+\frac1z\log z-\big(1-\frac1z\big)\big(\log\big(\frac1z-1\big)+iπ\big)\Big)\\[5pt]
&=&-\underset{z=0}{\mathrm{Res}}\frac1{z^2}\cdot\exp\big(\log\frac z{1-z}+\frac1z\log(1-z)-iπ\big)\\[5pt]
&=&\underset{z=0}{\mathrm{Res}}\frac1{z^2}\cdot\frac z{1-z}\cdot(1-z)^{\frac1z}\\[5pt]
&=&\lim_{z\to0}\frac1{1-z}\cdot(1-z)^{\frac1z}\\[5pt]
&=&\frac1e
\end{eqnarray*}$$
なので,
$\displaystyle\int_Cf(z)\,dz=-\frac{2πi}{e}$
が分かりました.
${}$
最後に, $\displaystyle -2iI=-\frac{2πi}{e}$から, $$\displaystyle I=\fracπe$$ を得ます.
${}$
ちなみに, 同様にして
$$\displaystyle\int_0^1\frac{\sin\pi x}{x^{1-x}(1-x)^x}\,dx=(e-2)π$$
も求めることができます.
${}$
${}$