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高校数学解説
文献あり

フィボナッチ数の一般項の総積表現 & 正n角形からn番目のフィボナッチ数を作る方法

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はじめに

この記事では、数学を愛する会(@mathlava)さんの募集していた【フィボナッチ計算選手権】(n番目のフィボナッチ数を計算する方法)に私が応募した次のツイートについて解説します。

つまり、正n角形から n 番目のフィボナッチ数を作ることができるというわけです。
実際にやってみるとこんな感じになります。

!FORMULA[9][-2057940397][0] F2=1,F3=2,F4=3

!FORMULA[10][-1219350957][0] F5=5,F6=8,F7=13

!FORMULA[11][1342670982][0] F8=21,F9=34,F10=55

原点から頂点までの距離の中には整数ではないところもありますが、それらの総積は整数になります。近似値ではありません。厳密にフィボナッチ数である整数になっています。
そのことをこれから示したいと思います。

また、その過程で次のようなフィボナッチ数の総積による表現も導出しますのでお楽しみいただきたいと思います。

Fn=k=1n12(3+2cos2kπn)

記号について

この記事では φ は黄金比(黄金数)を表します。

φ=1+52

また、Fn でフィボナッチ数を表します。

{Fn}={1,1,2,3,5,8,13,21,34,55,}

xn1 を因数分解する

突然ですが、n 次方程式 xn1=0 の複素数範囲の解は、複素数平面上、単位円を n 等分した位置にあることから次のように複素数範囲で因数分解ができます。

xn1=k=0n1(xe2ikπn)

複素数平面の単位円上に等間隔に解がある(!FORMULA[22][36584128][0]の例) 複素数平面の単位円上に等間隔に解がある(n=7の例)

この式を共役複素数となる組合せに書き直します。
n が偶数か奇数かで式の形が変わることに注意します。

xn1={(x1)k=1n12(xe2ikπn)(xe2ikπn)if n is odd(x1)(x+1)k=1n12(xe2ikπn)(xe2ikπn)if n is even

右辺のカッコを展開して

xn1={(x1)k=1n12(x2x(e2ikπn+e2ikπn)+1)if n is odd(x1)(x+1)k=1n12(x2x(e2ikπn+e2ikπn)+1)if n is even

cosθ=eiθ+eiθ2 を使って書き換えると

xn1={(x1)k=1n12(x2+12xcos2kπn)if n is odd(x1)(x+1)k=1n12(x2+12xcos2kπn)if n is even

これで準備が整いました。

フィボナッチ数の総積による表現を作る

ビネの公式に先ほどの定理を適用したいと思います。

ビネの公式

Fn=φn(φ)n5

まずは、ビネの公式を xn1 を適用できる形に変形します。

φn(φ)n5=(φ)n5((φ2)n1)

(φ2)n1 の部分に定理1を適用します。

(φ2)n1={((φ2)1)k=1n12((φ2)2+12(φ2)cos2kπn)if n is odd((φ2)1)((φ2)+1)k=1n12((φ2)2+12(φ2)cos2kπn)if n is even={(φ2+1)φn1k=1n12(φ2+φ2+2cos2kπn)if n is odd(φ2+1)(φ)φn2k=1n12(φ2+φ2+2cos2kπn)if n is even

ここで
φ2+1=(φ+φ1)φ=5φ
及び
φ2+φ2=3
を使うと、

(φ2)n1={5φnk=1n12(3+2cos2kπn)if n is odd5φnk=1n12(3+2cos2kπn)if n is even

ですから、元の式に適用して

φn(φ)n5=(φ)n5((φ2)n1)={(φ)n5(1)5φnk=1n12(3+2cos2kπn)if n is odd(φ)n55φnk=1n12(3+2cos2kπn)if n is even=k=1n12(3+2cos2kπn)

となります。
最後の行で、偶数の場合も奇数の場合も同じ式になるのが不思議な感じがしますね!

フィボナッチ数の総積による表現

Fn=k=1n12(3+2cos2kπn)

フィボナッチ数を、cos を使った式の総積で表現することができました。なかなか面白い形だと思います。

余弦定理で原点と頂点の距離を計算する

次に余弦定理を使って、元のグラフの原点と頂点の距離を計算します。

余弦定理

a2=b2+c22bccosA

下のグラフでいうとABOの部分について余弦定理を使い、OBの長さを計算します。

余弦定理で!FORMULA[43][1150477][0]の長さを計算する 余弦定理でOBの長さを計算する

余弦定理でOBの長さを計算すると

(OB)2=φ2+φ22φφ1(cos2kπn)

ここで
φ2+φ2=3
φφ1=1
なので

(OB)2=3+2cos2kπn

OB=3+2cos2kπn

!FORMULA[50][1150477][0]の長さ OBの長さ

となります。

したがって、正n角形の(5,0)以外の頂点と原点の距離の総積を Pn とすれば

Pn=k=1n13+2cos2kπn

と書くことができます。

(1,0)にある頂点と原点の距離が 1 であることと、x 軸に対する対称性から、この式は次のように整理できます。

Pn=k=1n13+2cos2kπn=k=1n12(3+2cos2kπn)

定理2より Fn=k=1n12(3+2cos2kπn) ですから、Pn=Fn とわかりました!

Pn=Fn

おわりに

というわけで、正n角形から n 番目のフィボナッチ数を作ることができることをご理解いただけましたでしょうか。

ところで、証明のために作ったこの式を再掲します。

xn1={(x1)k=1n12(x2+12xcos2kπn)if n is odd(x1)(x+1)k=1n12(x2+12xcos2kπn)if n is even

この式にいろんな x を代入してみると、いろいろと面白い式をつくることができます。
是非遊んでみてください。

追記(別解等)

別解について

(2021.11.15追記)
この記事を投稿した後、数学を愛する会さんからとてもシンプルな別解を紹介していただきましたのでここに追記します。

蛇足かもしれませんがこの別解について少し図解してみたいと思います。

元になる図形を複素数平面上に配置して、全体を実軸マイナス方向に1φ移動してから全体を1φ倍に縮小すると、正n角形の頂点は単位円上に等間隔に並びます。

平行移動して縮小すると正!FORMULA[70][38042][0]角形の頂点が単位円上に並ぶ 平行移動して縮小すると正n角形の頂点が単位円上に並ぶ

これらはn次方程式 zn=1の複素数範囲の解ですから、頂点の座標は

(1φ(z1φ))n=1

の解となります。
全体を φn して移項すると

(z1φ)nφn=0

複素数の積の絶対値は複素数の絶対値の積になりますから、求める総積を Pn とすると、上記方程式の解の総積の絶対値と 5Pn が一致することになります。上記方程式の解の総積の絶対値は、解と係数の関係より |φn(1φ)n| ですから、

5Pn=|φn(1φ)n|

Pn=φn(1φ)n5

Pn=Fn

となり、総積がフィボナッチ数となることが示せました。
実にシンプルでキレイな証明ですね!

別証明について

(2021.11.15追記)

フィボナッチ数の総積表示については、 🌹 みゆ@ますらば副会長🌹 さんの

フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解

という記事でも取り扱われておりますので、あわせて見ていただくとより楽しめると思います。

参考文献

投稿日:20211113
OptHub AI Competition

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  3. フィボナッチ数の総積による表現を作る
  4. 余弦定理で原点と頂点の距離を計算する
  5. おわりに
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