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フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解

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フェルマーの最終定理とフィボナッチ数とリュカ数を因数分解

フェルマーの最終定理を因数分解

いつものように 1z=Pkn=e2kπni を基底の元とする斜交座標系を考えておりましたところ、ふと、こんなイメージが浮かびました。


{x,yRnZ+} において

k=0n1(x+y Pkn)=xn(1)nyn
 n が偶数なら xnynn が奇数なら xn+yn
k=0n1(x+y PknPn2(1)n)=xnyn
   n の偶奇に依らず xnyn

k=0n1(x+y PknP12n(1)1n)=xn+(1)nyn
 n が偶数なら xn+ynn が奇数なら xnyn
k=0n1(x+y PknP12n(1)1nPn2(1)n)=xn+yn
   n の偶奇に依らず xn+yn

すなわち
{xnyn=k=0n1(x+y PknPn2(1)n)=k=0n1(x+y Pn2+2k2n)xn+yn=k=0n1(x+y PknP12n(1)1nPn2(1)n)=k=0n1(x+y Pn2+2k+12n)
これらの式は、右辺をみますと k=0 から n1 までの n 個の因数の積に因数分解できることがわかります。

また、k の和が n1 になるペア同士で複素共役となり、最終的に偏角が相殺されて全体としては実数になります。すなわち、右辺の各因数は絶対値をとったもの同士でも比率は合いますので全体としての値は変わりません。

{xnyn=|k=0n1(x+y Pn2+2k2n)|=k=0n1|x+y Pn2+2k2n|xn+yn=|k=0n1(x+y Pn2+2k+12n)|=k=0n1|x+y Pn2+2k+12n|

ここで、右辺の |x+y Pa| をユークリッド距離で表しやすいように 1i を基底の元とする直交座標系上で考えてみましょう。

|x+y Pa|=|(x+y Re Pa)+(y Im Pa)i|=(x+y Re Pa)2+(y Im Pa)2=x2+y2[(Re Pa)2+(Im Pa)2]+2xyRe Pa=x2+y2+2xy Re Pa=x2+y2+2xycos(a2π)

cos(nπ)=(1)n も用いて改めて書き直すと、

{xnyn=k=0n1x2+y2+2xycos(n2+2knπ)=k=0n1x2+y2+(1)n2xycos(2knπ)xn+yn=k=0n1x2+y2+2xycos(n2+2k+1nπ)=k=0n1x2+y2+(1)n2xycos(2k+1nπ)

ちなみに、nZ+ ということで、n>0 であることにご留意くださいませ。

cos 関数は与えられる偏角が共役ペアのとき同じ値をとりますので、そのような組み合わせで2乗を作ればそこだけ根号を外すことができます。右辺が k=0 から k=n1 までの n 個の因数の積であることに注目し、共役つまり偏角の和が2πになるペアを探してみましょう。

k012n2n1
2knπ02nπ4nπ2n4nπ2n2nπ
2k+1nπ1nπ3nπ5nπ2n3nπ2n1nπ

偏角の和が 2π=2nnπ になるペアが cos をとった時に同値となる共役ペアですが、n が奇数のときと偶数のときでは 0n1 の個数が異なりますのでペアを作れない組に違いが出てきそうですね。

n=2m(偶数) のとき

k012m1mm+1n2n1
2k2mπ022mπ42mπ2m22mππ2m+22mπ4m42mπ4m22mπ
2k+12mπ12mπ32mπ52mπ2m12mπ2m+12m2m+32mπ4m32mπ4m12mπ

この場合、偏角の和が 2π=4m2mπ になる組が共役ペアですので、赤字のところ以外は同値同士で二乗を作れて根号を外せます。


n=2m+1(奇数) のとき

k012m1mm+1n2n1
2k2m+1π022m+1π42m+1π2m22m+1π2m2m+12m+22m+1π4m22m+1π4m2m+1π
2k+12m+1π12m+1π32m+1π6nπ2m12m+1ππ2m+32m+1π4m12m+1π4m+12m+1π

この場合、偏角の和が 2π=4m+22m+1π になる組が共役ペアですので、赤字のところ以外は同値同士で二乗を作れて根号を外せます。

ペアを作れない因数については二乗にならないので根号をつけたまま残すとしまして、cos のとる範囲は 0<θ<π で、n が偶数のときは π2 で対称的になっていることから、全体としては次のようにまとめられます。

n=2m>0 において
{x2my2m=k=02m1x2+y2±2xycos(2k2mπ)=[(x2+y2±2xy)(x2+y22xy)]k=1m1[x2+y2±2xycos(kmπ)]=(x±y)(xy)k=1m1[x2+y2±2xycos(kmπ)]x2m+y2m=k=02m1x2+y2±2xycos(2k+12mπ)=k=1m[x2+y2±2xycos(2k12mπ)]

n=2m+1>0 において
{x2m+1y2m+1=k=02mx2+y22xycos(2k2m+1π)=[x2+y22xy]k=1m[x2+y22xycos(2k2m+1π)]=(xy)k=1m[x2+y22xycos(2k2m+1π)]=(xy)k=1m[x2+y2+2xycos(2k12m+1π)]x2m+1+y2m+1=k=02mx2+y22xycos(2k+12m+1π)=[x2+y2+2xy]k=1m[x2+y22xycos(2k12m+1π)]=(x+y)k=1m[x2+y22xycos(2k12m+1π)]=(x+y)k=1m[x2+y2+2xycos(2k2m+1π)]





フェルマーの最終定理の因数分解
{x, yRn, mZ0+}

n=2m>0 において
{x2my2m=(x+y)(xy)k=1m1[x2+y2±2xycos(kmπ)]x2m+y2m=   k=1m[x2+y2±2xycos(2k12mπ)]

n=2m+1>0 において
{x2m+1y2m+1=(xy)k=1m[x2+y22xycos(2k2m+1π)]=(xy)k=1m[x2+y2+2xycos(2k12m+1π)]x2m+1+y2m+1=(x+y)k=1m[x2+y22xycos(2k12m+1π)]=(x+y)k=1m[x2+y2+2xycos(2k2m+1π)]


n=0 において
{xnyn=0xn+yn=2

フィボナッチ数とリュカ数を因数分解

続いて、フィボナッチ数とリュカ数を因数分解してみます。

フィボナッチ数とリュカ数のなす数列は、 前回の記事 にて詳しく解説させていただきました通り、z2z1=0 の共役複素数解 {z=1252i=ϕz=12+52i=1ϕ を生成元としたときの第1種ガラパゴ数列と第2種ガラパゴ数列に一致します。

 ここでは ϕ をムリヤリ複素数と「みなし」ているため、次にあげる実部と虚部も「みなし実部」と「みなし虚部」ということになりますが、この解釈できちんと正しい式が導出されますのでご安心(?)ください。

{Gn=Im znIm z=znz nzz=ϕn(1ϕ)n5=FnGn=Re znRe z=zn+z nz+z=ϕn+(1ϕ)n1=Ln

これを先程のフェルマーの最終定理の因数分解にあてはめてみましょう。

{x=ϕy=1ϕx+y=ϕ+(1ϕ)=1xy=ϕ(1ϕ)=5x2+y2=ϕ2+(1ϕ)2=6+254+6254=124=3xy=ϕ(1ϕ)=1

を代入して

n=2m>0 において
{F2m=ϕ2m(1ϕ)2m5=155k=1m1[3±2(1)cos(kmπ)]=k=1m1[32cos(kmπ)]L2m=ϕ2m+(1ϕ)2m1=11k=1m[3±2(1)cos(2k12mπ)]=k=1m[32cos(2k12mπ)]

n=2m+1>0 において
{F2m+1=ϕ2m+1(1ϕ)2m+15=55k=1m1[32(1)cos(2k2m+1π)]=k=1m[3+2cos(2k2m+1π)]=k=1m[32cos(2k12m+1π)]L2m+1=ϕ2m+1+(1ϕ)2m+11=11k=1m[32(1)cos(2k12m+1π)]=k=1m[3+2cos(2k12m+1π)]=k=1m[32cos(2k2m+1π)]

以上により、フィボナッチ数とリュカ数は次のように因数分解可能です。

{Fn=k=1n22[3+2cos(2knπ)]Ln=k=0n22[3+2cos(2k+1nπ)]





フィボナッチとリュカ数の因数分解
{x, yRn, mZ0+}

n>0 において

Fn=k=1n22[3+2cos(2knπ)]
{F2m=k=1m1[3±2cos(kmπ)]  n=2m>0F2m+1=k=1m[3+2cos(2k2m+1π)]  n=2m+1>0

Ln=k=0n22[3+2cos(2k+1nπ)]
{L2m=k=1m[3±2cos(2k12mπ)]  n=2m>0L2m+1=k=1m[3+2cos(2k12m+1π)]  n=2m+1>0


n=0 において

{Fn=ϕ0ϕ0ϕϕ=115=0Ln=ϕ0+ϕ0ϕ+ϕ=1+11=2

最後に

検証に協力くださったハーディ先生こと nayuta_ito さんに感謝いたします。

投稿日:2021210
更新日:2024825
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投稿者

https://mathlog.info/articles/323         数学を愛する会 副会長 CCO / ガラパゴ数学 開拓者 / 猫舌・甘党・薄味派

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