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力学の形式

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記事で必要になるため、以下の力学の定式化

  • ニュートンの運動方程式
  • ラグランジュ形式(Lagrange formalism)
  • ハミルトン形式(Hamilton formalism)

に関して簡単に記します。もうひとつハミルトン-ヤコビの方法というものもありますが、ここでは触れません。

Notationに関しては以下:

  • 位置はqi、速度はq˙i(ドットは時間微分)、運動量はpiと表す。iは空間成分のindexであり、空間次元がdならi=1,,d
  • ある項に同じindexが2つ存在するとき(qipiなど)、そのindexに関して和をとっている。
  • 本来indexがついている変数に対しそれを省略したときは、その変数の集合を表す。例えばqiに対しqと書いたら{qi}i=1,を表す。

ニュートンの運動方程式

これはいわゆる"F=ma"というやつです。
ニュートンの運動方程式は以下のように表されます:

運動方程式

mdqidt=Fi

Fiと初期条件を与えてこの微分方程式を解くことで、時刻に依存する位置ベクトルqi(t)が求まります。これは時間に関して局所的な形式です。微小な時間発展の積み重ねで(=運動方程式を積分して)qi(t)を求めます。

ラグランジュ形式

ラグランジュ形式は時間に関して大域的な形式です。運動を空間のみならず時間的に俯瞰します。

作用(action)と呼ばれるqの汎関数
S[q]:=t1t2dt L(q(t),q˙(t))
を考えます。L(q(t),q˙(t))はラグランジアンと呼ばれ、系に特有な量です。これにより運動が特徴づけられます。本来さらにtにあらわに依存していてもよいですが、ここでは簡単のためその依存はないものとします。

時刻t1における位置q1:=q(t1)t2における位置q2:=q(t2)の値は固定します。このとき

(t1,q1), (t2,q2)の間の質点の運動は、Sqに関する変分の極値で与えられる。ただし変分関数δqδq(t1)=δq(t2)=0を満たすものに限る

というのがラグランジュ形式における運動の法則です。すなわち、tに依存する微小量δqによる任意の変分の1次が消える条件
δS[q]=O((δq)2)
を満たすqが実際に実現する軌道です。ただし変分は境界でゼロ、すなわち
δq(t1)=δq(t2)=0
となるものを考えます。

以下変分の2次以上は無視することにします。

具体的な軌道の計算はLが満たす時間の微分方程式を解いて行います。この微分方程式を求めるため、実際に変分を行うと
δS[q]:=S[q+δq]S[q]=t1t2(Lqiδqi+Lq˙iδq˙i)
です。δq˙=ddtδqより、最後の行の第2項で部分積分を行うと、境界でδq=0であることから表面項は消えて
=t1t2(Lqiddt(Lq˙i))δqi
を得ます。変分関数はiに関して独立であり、任意の変分に関してこれが消えることから、カッコの中はゼロです。このことから導かれる以下の式がオイラー・ラグランジュ方程式です(Euler-Lagrange equations。私の記事ではE-L eqs.と略します):

オイラー・ラグランジュ方程式

Lqiddt(Lq˙i)=0   (i=1,,d)

これを初期条件を与え解くことで、qiの時間発展が求まります。

ハミルトン形式

ラグランジュ形式はq,q˙およびラグランジアンLを基礎とする形式でした。一方ハミルトン形式(正準形式(canocnical formalism)とも呼ばれる)は位置座標q、運動量p、およびハミルトニアンH(q,p)を基礎とする形式です。

運動量pi
(1)pi:=Lq˙i
で定義されます。
ハミルトニアンは、ラグランジアンから以下のルジャンドル変換を行うことで得られます:
(1)H(q,p):=qipiL(q,q˙(q,p))

この形式ではqi,piは独立とみなすので、運動の決定には(iごとに)2つの方程式が必要です。それが以下の正準方程式(canonical equations)です:

正準方程式

{q˙i=Hpi,p˙i=Hqi

これを解くことでqi,piの時間発展が求まります。(q,p)の空間を相空間(phase space)と呼びます。位相空間と呼ぶこともあるのですが、数学のtopological spaceとは全くの別物です。

投稿日:20211119
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