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NCLTで話す予定だったもの。僕の推し級数。

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あいさつ

こんにちは。僕です。
諸事情でNCLTに出られなくなってしまったので、ここで話そうと思っていたことを書こうと思います。
時間制限が無い分、いろいろと書こうと思っているので、よかったら読んでみてください。
まず、僕がNCLTで話そうと思っていたものとは、次のものです。
$$ \sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{H_{n-1}}{n^2}=\zeta(3) $$
この式は僕が10月6日に遊んでいたら得られた式で、今まで僕が導いた式の中で最も綺麗だと思っています。
今でも最もお気に入りの級数なので、ヘッダーにしています。
ちなみに$\zeta(3)=\displaystyle\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{1}{n^3}$です。

級数の解説

それでは、今から僕がどのようにしてこの級数を得たのかを説明していきたいと思います。
とは言っても、過去に もっと詳しい解説 をしたことがありますので、ここではざっくりと解説します。
以下の定積分を考えます。
$$ \int_0^1\dfrac{\log^2(1-x)}{x}dx $$

解法1
$\log(1-x)=-y$とすると、$x=1-e^{-y}$であり、積分範囲は$0\to\infty$となります。
すると求める積分は
$$ \int_0^{\infty}(-y)^2\dfrac{e^{-y}}{1-e^{-y}}dy $$
となります。
ここで
$$ \dfrac{e^{-y}}{1-e^{-y}}=\sum_{n=1}^{\infty}e^{-ny} $$
であることを用いると、上の積分は
$$ \int_0^{\infty}y^2\sum_{n=1}^{\infty}e^{-ny}dy=\sum_{n=1}^{\infty}\int_0^{\infty}y^2e^{-ny}dy $$
と書き換えられる。この積分を頑張って計算すると
$$ \int_0^1\dfrac{\log^2(1-x)}{x}dx=2\zeta(3) $$
であることがわかります。

解法2
$\log^2(1+x)$をMaclaurin展開すると
$$ \log^2(1+x)=2\sum_{n=1}^{\infty}(-1)^n\dfrac{H_{n-1}}{n}x^n $$
である。(証明略)
ここで$x\mapsto-x$とすると
$$ \log^2(1-x)=2\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{H_{n-1}}{n}x^n $$
となる。このことを用いて求める積分を書き換えると
$$ \int_0^1\dfrac{1}{x}\cdot2\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{H_{n-1}}{n}x^ndx=2\sum_{n=1}^{\infty}\int_0^1\dfrac{H_{n-1}}{n}x^{n-1}dx $$
となる。これを計算すると
$$ \int_0^1\dfrac{\log^2(1-x)}{x}dx=2\sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{H_{n-1}}{n^2} $$
となる。

したがって、2つの計算結果を比較することによって
$$ \sum_{n=1}^{\infty}\dfrac{H_{n-1}}{n^2}=\zeta(3) $$
を得ることができます。

この級数の意味とは

こんな見出しを書いたものの、ここでの意味は、僕なりの解釈と捉えてもらいたいです。
まずは左辺に注目してみましょう。左辺の最初の方の項を素直に書き出すと、
$$ \dfrac{1}{1}\cdot\dfrac{1}{2^2}+\dfrac{1}{1}\cdot\dfrac{1}{3^2}+\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{3^2}+\dfrac{1}{1}\cdot\dfrac{1}{4^2}+\dfrac{1}{2}\cdot\dfrac{1}{4^2}+\dfrac{1}{3}\cdot\dfrac{1}{4^2}+\cdots $$
となります。この級数を以下のように表現します。
$$ \sum_{0\lt n \lt m}\dfrac{1}{n\cdot m^2} $$
僕も最近知ったんですけど、これある関数の特殊値になっているんですよね。
その関数とは以下のものです。

多重ゼータ値

多重ゼータ値(Multipul Zeta Value)とは、以下の級数で定義される値のことである。
$$ \zeta(k_1,\cdots,k_r)=\sum_{0\lt n_1\lt\cdots\lt n_r}\dfrac{1}{n_1^{k_1}\cdots n_r^{k_r}} $$

この多重ゼータ値(以降、MZVと呼ぶ。)に上の級数を当てはめてみると、$\zeta(1,2)$となっていることがわかると思います。
なので、結局僕が見つけた式が表していたのは
$$ \zeta(1,2)=\zeta(3) $$
だったんですよね。
MZVは存在は知っていたものの、そこまで興味はなかったのですが、この式をきっかけにかなり興味が湧きました。

さいごに

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。
本当はこの話をNCLTで話したかったんですが、叶わなかったのでこのような形で僕の推し級数を紹介させていただきました。
ちなみに、NCLTのためだけにこのアカウントを作ったわけではありません。
今後もいろいろと記事を書いていく予定ですので、見てくれると大変嬉しいです。

投稿日:2020118
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投稿者

みずき
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