この記事では, 私が過去に作った自作問題の解説を書いていこうと思います.
大学受験のような問題ですので, 少しつまらないと思われるかもしれませんが, 許してください.
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$f_n(x)=x^3-n2^nx^2-4^nx+n$ とし, $x$の方程式 $f_n(x)=0$ の解を小さい順に$\alpha_n,\,\beta_n\,\gamma_n$とします. $\alpha_n,\,\beta_n\,\gamma_n$ の$\mathrm{growth}$を求めてください.
ただし, $\mathrm{growth}$を求めるとは, この場合, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\alpha_n}{a_n}=1$ なる数列$a_n$であって $a_n=p\cdot n^q\cdot r^n$ の形でかけるものが存在するので, そのような$p,q,r$を求めるということです. ($\alpha_n$と$p\,n^q\,r^n$が大体等しくなるということです. ) ちなみに, これを $\alpha_n\sim a_n$ と書きます.
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まずは, $f_n(x)=0$ が$3$つの実解を持つことを確認しましょう.
$f(0)=n>0,\ f(1)=1-4^n+n(1-2^n)<0$
また, $\displaystyle\lim_{x\to-\infty}f(x)=-\infty,\ \lim_{x\to\infty}f(x)=\infty$ なので, 中間値の定理のように考えれば, $f_n(x)=0$ は $x < 0,\ 0 < x < 1,\ 1 < x$ にそれぞれ$1$解ずつ持つことがわかりました.
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従って $0<\beta_n<1$ がわかったので, $\beta_n\to0$ と予想することができます.
そこで, $\displaystyle f\Big(\frac{n}{4^n}\Big)$ を考えてみると, (最後の$2$項が打ち消すようにしました)
$\displaystyle f\Big(\frac{n}{4^n}\Big)=n\Big(\frac{n}{4^n}\Big)^2\Big(\frac1{4^n}-2^n\Big)<0$ となっているので, $f(0)>0$と併せて $\displaystyle0 < \beta_n < \frac{n}{4^n}$ とわかり, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\beta_n=0$ が示せました.
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次に, 解と係数の関係の利用を考えます. 即ち,
$\alpha_n+\beta_n+\gamma_n=n2^n$ $\cdots(1)$
$\alpha_n\beta_n+\beta_n\gamma_n+\gamma_n\alpha_n=-4^n$ $\cdots(2)$
$\alpha_n\beta_n\gamma_n=-n$ $\cdots(3)$
これらを用いて考えていきます.
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$(1)$式の両辺を$n2^n$で割ると, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\beta_n}{n2^n}=0$ なので,
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\alpha_n+\gamma_n}{n2^n}=1$ $\cdots(4)$ が分かります.
$(2)$式を $(\alpha_n+\gamma_n)\beta_n+\alpha_n\gamma_n=-4^n$ と書いて, 両辺を$n^24^n$で割ると,
$\displaystyle\frac{\alpha_n+\gamma_n}{n2^n}\cdot\frac{\beta_n}{n2^n}+\frac{\alpha_n}{n2^n}\cdot\frac{\gamma_n}{n2^n}=-\frac1{n^2}$ となります.
$\displaystyle\frac{\alpha_n+\gamma_n}{n2^n}\to1,\ \frac{\beta_n}{n2^n}\to0$ なので,
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\alpha_n}{n2^n}\cdot\frac{\gamma_n}{n2^n}=0$ $\cdots(5)$ が分かります.
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$(4)$式と$(5)$式は, 和と積ですので, $\alpha_n<\gamma_n$と併せて, $\displaystyle\frac{\alpha_n}{n2^n}\to0,\ \frac{\gamma_n}{n2^n}\to1$ と予想できます. (これらの極限が存在するかはわからないので, まだ断言はできません. )
そこで, $f(-2^n)$を考えてみると,
$f(-2^n)=n(1-8^n)<0$ となるので, $f(0)>0$と併せて $-2^n<\alpha_n<0$ と分かり, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\alpha_n}{n2^n}=0$ が示せます.
これと$(4)$式より, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\gamma_n}{n2^n}=1$ と分かりました! 従って, $\gamma_n\sim n2^n$ です.
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今度は $(2)$式を $(\alpha_n+\gamma_n)\beta_n+\alpha_n\gamma_n=-4^n$ と書いて, 両辺を$4^n$で割ってみます. すると,
$\displaystyle\frac{\alpha_n+\gamma_n}{n2^n}\cdot\frac{n\beta_n}{2^n}+\frac{n\alpha_n}{2^n}\cdot\frac{\gamma_n}{n2^n}=-1$
と書けます.
$\displaystyle\beta_n\to0,\ \frac{n}{2^n}\to0$ より $\displaystyle\frac{n\beta_n}{2^n}\to0$ で, また$(4)$式より$\displaystyle\frac{\alpha_n+\gamma_n}{n2^n}$は有限の値に収束するので, 第$1$項は$0$に収束し,
$\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n\alpha_n}{2^n}\cdot\frac{\gamma_n}{n2^n}=-1$
が分かります. ここで $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{\gamma_n}{n2^n}=1$ だったので, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{n\alpha_n}{2^n}=-1$と分かりました! 従って $\displaystyle\alpha_n\sim-\frac{2^n}n$ です.
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最後に$(3)$式を用いて $\beta_n$について考えます.$(3)$式は
$\displaystyle\frac{4^n\beta_n}n\cdot\frac{n\alpha_n}{2^n}\cdot\frac{\gamma_n}{n2^n}=-1$
と書けますので, 両辺で$n\to\infty$ とすることで, $\displaystyle\lim_{n\to\infty}\frac{4^n\beta_n}{n}=1$ と分かります! 従って, $\displaystyle\beta_n\sim\frac{n}{4^n}$ です.
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まとめると, $f_n(x)=x^3-n2^nx^2-4^nx+n$ の根 $\alpha_n,\, \beta_n,\, \gamma_n $ の$ \mathrm{growth} $は,
$$ \displaystyle\alpha_n\sim-\frac{2^n}n,\ \beta_n\sim\frac{n}{4^n},\ \gamma_n\sim n2^n$$
のようになることが分かりました.
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読んでくださった方, ありがとうございました. いろいろな係数の多項式の根の$\mathrm{growth}$を調べてみると面白いです.
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