3

∫[0,1]1/(x^2+1)dxをいろんな方法で解こうとした話

97
0
$$$$

こんにちは!突然ですが次の積分を考えます。

$$ I = \int_{0}^{1}\frac{1}{x^2+1}dx $$

簡単のために$I$と置きました。この記事見てる人たちならやったことあると思います。まずは普通に解いてみます。

解法1

$\displaystyle x=\tan \theta$とおく。$\displaystyle dx=\frac{d\theta}{\cos^2\theta}$であるため、定積分は次のように書き換えられる。
$$ I=\int_{0}^{\frac{\pi}{4}}d\theta $$
よって、$\displaystyle I=\left[\theta\right]_{0}^{\frac{\pi}{4}}=\frac{\pi}{4}$

まあよく見る解法ですね。
僕は積分の勉強を始めたての時この置換は思いつくことができませんでした。そこでもしこの置換を思いつけなかった時のために$\tan\theta$で置換しない方法でこの積分を解いてみます。

解法2

複素数の範囲で部分分数分解する。
$\displaystyle I = \int_{0}^{1}\frac{1}{x^2+1}dx=\int_{0}^{1}\frac{1}{(x+i)(x-i)}dx\\ \displaystyle=\frac{1}{2i}\int_{0}^{1} \left( \frac{1}{x-i}-\frac{1}{x+i}\right)dx\\ \displaystyle=\frac{1}{2i}\Biggl[\log(x-i)-\log(x+i)\Biggr]_{0}^{1}=\frac{1}{2i}\Biggl[\log\frac{x-i}{x+i}\Biggr]_{0}^{1}\\ \displaystyle \frac{1}{2i}\left(\log\frac{x-i}{x+i}-\log(-1)\right)=\frac{1}{2i}\log i\\ ここで、\displaystyle i=e^{\frac{\pi}{2}i}であるため、\\ \displaystyle \frac{1}{2i}\log e^{\frac{\pi}{2}i}=\frac{1}{2i}\frac{\pi}{2}i=\frac{\pi}{4}$

一応値を出すことはできますが、そもそも実関数を複素数に拡張していいのかっていうのと、複素対数が多価であるので、あまり好ましくない解法ですね。
そこで、被積分関数とは別で複素関数を用意して、実軸上では実数から実数の関数であることを利用して留数定理を用いて導いてみます。

解法3

$\displaystyle 被積分関数は偶関数なので、2I=\int_{-1}^{1}\frac{1}{x^2+1}dx\\ \displaystyle sを複素数として、f(s)=\frac{1}{s^2+1}とする。\\ \displaystyle Nを正の数として、実軸を直径とした半径1+\frac{1}{N}の半円の閉路C=C_1+C_2をとる。\\ \displaystyle C_1:x\hspace{5mm}\left(x:-\left(1+\frac{1}{N}\right)\rightarrow 1+\frac{1}{N}\right)\\ \displaystyle C_2: \left(1+\frac{1}{N}\right) e^{i\theta}\hspace{5mm}(\theta:0\rightarrow\pi)\\ \displaystyle f(s)は実軸上では\mathbb{R}\rightarrow\mathbb{R}の関数と見ることが出来るため、\\ \displaystyle留数定理からN\to\inftyとしたときの\int_{C_1}を求める。\\ \displaystyle f(s)はs=iに1位の極を持つため、\\ \displaystyle \mathrm{Res}\left[f(s),i\right]=\lim_{s \to i}(s-i)f(s)=\frac{1}{2i}\\ \displaystyle よって、\oint_C=2\pi i\times\frac{1}{2i}=\pi\\ \displaystyle 簡単のため、R=1+\frac{1}{N}とする。\\ \displaystyle \int_{C_1}について、\\ \displaystyle \int_{C_1}=\lim_{R \to 1+0}\int_{-R}^{R}f(s)ds=\int_{-1}^{1}f(s)ds=2I\\ \displaystyle \int_{C_2}について、\\ \displaystyle \int_{C_2}=\int_{0}^{\pi}\frac{Rie^{i\theta}}{\left(Re^{i\theta}\right)^{2}+1}d\theta\\ \displaystyle ここで、z=Re^{i\theta}とすれば、dz=Rie^{i\theta}, \theta:0\to\piのときz:-R\to Rなので、\\ \displaystyle \int_{C_2}=\int_{-R}^{R}\frac{1}{z^2+1}dz\xrightarrow{R\to 1+0}\int_{-1}^{1}\frac{1}{z^2+1}dz=2I\\ \displaystyle 以上より、2I+2I=4I=\piなので、I=\frac{\pi}{4} \\[2ex]$
無事に値を出せました!今回は実軸上の区間が$[-1,1]$になるように積分路をとりましたが、次に示す解法のように$[0,1]と[1,\infty)$で積分値が等しいことを用いれば、積分路の半径を$\infty$に飛ばすことで積分値を求めることができます($\tan$で置換しない方法では多分これが1番良い)。

解法4

$\displaystyle sを複素数として、f(s)=\frac{1}{s^2+1}とする。\\ \displaystyle\int_{0}^{1}\frac{1}{x^2+1}dx=\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^2+1}dx を示す。\\ \displaystyle x=\frac{1+t}{1-t}とすれば、dx=\frac{2}{\left(1-t\right)^{2}}dt であるため、\\ 定積分\displaystyle\int_{1}^{\infty}\frac{1}{x^2+1}dxは次のように変形できる。\\ \displaystyle\int_{1}^{\infty} \frac{1}{x^2+1}dx =\int_{0}^{1}\frac{1}{\left(\frac{1+t}{1-t}\right)^{2}+1}\frac{2}{\left(1-t\right)^{2}}dt\\ \displaystyle =\int_{0}^{1}\frac{\left(1-t\right)^{2}}{2\left(t^2+1\right)}\frac{2}{\left(1-t\right)^{2}}dt =\int_{0}^{1}\frac{1}{t^2+1}dt$
被積分関数は偶関数なので、求める積分は、$\displaystyle\frac{1}{4}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{x^2+1}dx$と等しい。
$\displaystyle Rを正の数として、実軸を直径とした半径Rの半円の閉路C=C_1+C_2をとる。\\ \displaystyle C_1:x\hspace{5mm}\left(x:-R\rightarrow R\right)\\ \displaystyle C_2: Re^{i\theta}\hspace{5mm}(\theta:0\rightarrow\pi)\\ \displaystyle f(s)はs=iに1位の極を持つため、\\ \displaystyle \mathrm{Res}\left[f(s),i\right]=\lim_{s \to i}(s-i)f(s)=\frac{1}{2i}\\ \displaystyle よって、\oint_C=2\pi i\times\frac{1}{2i}=\pi\\ \displaystyle \int_{C_1}について、\\ \displaystyle \int_{C_1}=\int_{-R}^{R}\frac{1}{x^2+1}dx\xrightarrow{R\to \infty}\int_{-\infty}^{\infty}\frac{1}{x^2+1}dx=4I\\ \displaystyle \int_{C_2}について、\\ \displaystyle \int_{C_2}=\int_{0}^{\pi}\frac{Rie^{i\theta}}{\left(Re^{i\theta}\right)^{2}+1}d\theta\\ \displaystyleここで、 \left|\int_{0}^{\pi}\frac{Rie^{i\theta}}{\left(Re^{i\theta}\right)^{2}+1}d\theta \right|\leq\int_{0}^{\pi}\left|\frac{Rie^{i\theta}}{\left(Re^{i\theta}\right)^{2}+1}\right|d\thetaである。\\ \displaystyle(右辺)=\int_{0}^{\pi}\left|\frac{R}{R^{2}+1}\right|d\theta=\frac{R}{R^{2}+1}\pi=\frac{\pi}{R+\frac{1}{R}}\xrightarrow{R\to \infty}0\\ \displaystyle よって、\int_{C_2}\xrightarrow{R\to\infty}0\\ \displaystyle 以上より、\oint_{C}=\int_{C_1}+\int_{C_2}=4I=\piなので、I=\frac{\pi}{4}$

いかがでしたか?(テンプレ)
今回は4つの方法でよく見る積分を解いてみました。(TeXのいい練習になった)mathlogの記事も初めて書いたので、まだわからないことが多いですが、最後まで読んでいただきありがとうございました!

投稿日:20211226

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

RusK
RusK
8
918
さくさく

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中