どうも, しょぼんです. この記事では面さいころ(特に)を回投げて出た目の総和がの倍数になる確率について書きます. 学部1年生で習う線形代数の知識を使います.
この記事で扱う結果
- 任意のでの一般項を導き, 特にでの場合の一般項を求める.
- なら, どのようなでものとき確率はに収束する.
漸化式を立てる
回投げてで割った余りがになる確率をとします. このとき, 回投げてで割った余りがになる確率は, ををで割った余りとして
- で割って余りがのときからの確率でが出る
- で割って余りがのときからの確率でが出る
- で割って余りがのときからの確率でが出る
場合だけなので, 次の漸化式が立てられます.
ここで, とします. 理由は何もたさない場合, その和はと考えるからです.
たとえば面さいころを投げての倍数になる確率を考える場合,
となり, 行列で表すと,
となります.
特別な形のについて
の値によって, 漸化式がかんたんに解ける場合があります.
がの約数である場合
たとえば面サイコロを回振っての倍数になる場合などです. この場合, は整数なのでに対しはどれも均等に回出てきます. よって
さて、なので
となります. 上の漸化式はに成り立つので, はのときになります.
の場合の結果
の正の約数はであるので, 上の議論が使えて, とすると
のとき
のとき
のとき
のとき
ということがわかりました.
の場合
たとえば面サイコロを回振っての倍数になる場合などです. この場合, はのうち以外が回ずつ出てきます. よって
となって, 以外の状態に依存しません. これは隣接2項間漸化式となり, 解くことができます. 高校数学でよくある形です.
を解くととなるので,
とすると, であり等比数列になるので, とわかります. のときなので
がわかりました. のときはとなるのでとなります.
の場合の結果
に対して上の議論が使えて,となります.
一般のについて
いま, が特別な形のときを解きましたが, 一般のに対してはどうなるでしょうか?たとえばのときなどです.
行列累乗で表す
はの一次結合で表されるので
を満たす次正方行列があります. これを繰り返し使うと,のとき
となります. もしが行列によって対角行列に対角化される, すなわちのとき, となります. の固有値をとして
とするとき,
となるので, が求まれば行列の積を回行うことで簡単に一般項が計算できます.
は巡回行列になる
巡回行列とは,
と表される行列のことです. が巡回行列となることを示しましょう. まず,
と表されるとします.
より,
ということで
となりは巡回行列です. たとえばのとき
となることは先ほど求めましたが, として
が確かめられます.
巡回行列の固有値と固有ベクトル
巡回行列
について, , としてつの複素数が固有値になり, それぞれに対応する固有ベクトルはの値に関係なく
となることが知られています. さらにそれらは標準内積で正規直交基底になります. これは直接示せます. を整数として,
の第成分を比較すると, 左辺は, 右辺はです. はを満たすことに注意すれば
(ただしの場合は第2項は省略)となって一致します. さらに固有値に対する固有ベクトルの標準内積の第項について, となるので, のとき内積は, そうでないなら内積はとなります. よって固有ベクトル
は正規直交基底をなします.
以上の性質から, 次の巡回行列なら
としては正規直交基底であることからはユニタリ行列(が単位行列になる)で
を満たします. さらに,
と対角化できます. ちなみにはDFT行列という名前があり, 離散フーリエ変換と関係があるそうです(詳しくないので今は書けません…)
一般のについてを求める
いよいよ面さいころを回投げて出た目の総和がの倍数になる確率を求めます. 次の巡回行列によって
と表されるので, 上の節で見た通り, で対角化されます. より,
となります. 一番うしろのベクトルが第成分以外であることに注意すれば, の列目だけを見ればよいです.
で,
より
となり, ということがわかりました. さらにを考慮すれば, ということがわかるので, となります.
のとき
となるので, となります. より
となります. より,
となって, だったので,
が導けました!いくつか項を計算すると,
となります.
今回はも計算してみます. ですが
となり
です. 同様にして
となります. 綺麗ですね!
のとき
より, となります. であるので,
に注意して
となるので,
となって, だったので,
が導けました!いくつか項を計算すると,
となります. 同様にからも計算してみると
となります. ちなみにが分かるので, 各項は具体的に計算できます.
のとき
(めっちゃ大きい…)より, となります. であるので, のときと同様に考えて
となります. 大変ですね!に注目すれば
とすると, となりますが, よりよってです. に注目するとであるので, に注目すれば
同様に に注目すれば
だったので,
が導けました!大変でしたね(はもっと大変ですが…)いくつか項を計算すると,
となります. の式は結構美しい感じになりましたが, からは未確認です...(さらに複雑な式になりそう)
のときのの一般項の表
この表を見ると, どれもに収束しそうということがわかります. 次の節では, これを証明します.
のときの挙動
のとき, ではに収束することを示します. であったので, を示せばよいです.
ですが, ここで等号が成立すると仮定すると, においてであるような任意のにおいてが成り立ちます. これは (は整数)に同値であるから, はの倍数です. しかし, より矛盾します. よって, で, でとなります. これがで示されるから, です. 一方でです. 以上から, のときではに収束します.
これで,
さいころをn個投げたときの目の和の確率について
にあった,
全てのに対して、を満たすが存在し、は必ずに収束する
という予想を示せました.
最後に
ここまで読んでくれてありがとうございました!質問や間違いなどがあったらぜひコメント欄でおしえてください!