この記事は、留数定理を知っていれば理解できる内容で書いてみたつもりです。知らなくてもDirichlet eta関数についての話は分かるかもしれないと思います。
まず、Dirichlet eta関数とDirichlet beta関数を以下で定義します。
あとポッホハマー記号も定義します。
今回は、この二つの関数の特殊値の漸化式を導出します。
以下が成り立ちます。
このようにDirichlet eta関数とDirichlet beta関数は非常に似た漸化式を満たすことが分かります。ここでは二つの漸化式の類似性が分かりやすい書き方をしましたが,Dirichlet eta関数の方は移項することで
と纏められ、さらには解析接続
を使えば
と非常に簡潔な漸化式を満たすことが分かります。
ではこれらを複素積分を使って証明します。以下対数は主値をとるものとします。
まずDirichlet beta関数を積分表示してから、留数定理を使って示します。
非負整数kについて
これの両辺を
次に、
として、以下の積分経路を考えます。
留数定理より、
です。ここで、
となり、両辺を
を得ます。
実際に
とDirichlet beta関数の特殊値が求まります。
Dirichlet eta関数の漸化式は、Dirichlet beta関数の時よりも少しトリッキーなことをして得られます。
以下で定義される多重対数関数を使います。
となります。これにより、以下の不定積分を表すことができます。
部分積分により、
では漸化式を求めてみましょう。唐突ですが、以下の変形を考えます。
両辺を
となります。両辺を
が得られます。実際に
が得られます。また、Riemann zeta関数
との関係式
から、
それぞれ別の方法で求めたDirichlet beta関数とDirichlet eta関数の漸化式が、よく似た形になっていて面白いですね。最後まで読んでくださりありがとうございました。