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初等的な不等式 :>

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はじめに

使う不等式は理解しやすく簡単なものだけですが,少し複雑だと感じる部分があると思います.「意味がわからない」ってなっても,落ち着いて見れば簡単に分かるかもしれません.
また,数学オリンピックの不等式で出題されるような不等式の知識がある人は,この節は飛ばしても問題ないと思われます.

Cauchy-Schwarzの不等式

任意の実数ai,biと,任意の正整数nに対して,
(i=1nai2)(i=1nbi2)(i=1naibi)2
が成立する.等号成立条件は「「すべてのi=1,2,,nに対して,aix=biとなるx」が存在する.」.

Cauchy–Bunyakovski–Schwarzの不等式だったり,単にSchwarzの不等式と呼ばれることもあります.
証明は こちら を参考にすると良いでしょう.

次に,この定理の特殊な場合についてみていきます.

Radonの不等式

任意の実数xiと,任意の正数yiと,任意の正整数nに対して,
i=1nxi2yi(i=1nxi)2i=1nyi
が成立する.等号成立条件は,「「すべてのi=1,2,,nに対して,xia=yiとなるa」が存在する.」.

Tituの補題,Sedrakyanの不等式とも言います.

定理1ai=xiyi,bi=yiを代入した式を,i=1nyiで割れば,定理2を得る.

有名不等式(a2+b2+c2ab+bc+ca)の一般化も使うので紹介しておきます.

有名不等式の一般化

任意の2以上の整数nと,任意の正数aiに対して,
(i=1nai)21i<jnaiaj2nn1
が成立する.等号成立条件はa1=a2==an.

1i<jn(aiaj)20(n1)i=1nai221i<jnaiaj(n1)(i=1nai)22n1i<jnaiaj(i=1nai)21i<jnaiaj2nn1

今回示す不等式は,定理2と定理3を使います.

あまり見慣れないと思われる記号を使うので,以下で定義しておきます.

cycf(x1,x2,,xn):=f(x1,x2,,xn)+f(x2,x3,,xn,x1)++f(xn,x1,,xn1)

cycf(x1,x2,,xn)とは,上記のようにn個の和を表すものとする.

目標の不等式

では,いきましょう.

任意の正数aiと,任意の2以上の整数nと,B=b2+bn=b3+bn1==bn+22+bn+22をみたすai(1in)によらない任意の正数biに対して,
f(a1,a2,,an)=a1i=2naibiとしたとき,
cycf(a1,a2,,an)2nB(n1)
が成立する.等号成立条件は,a1=a2==an.

定理2,定理3をそれぞれ(2),(3)と表す.
cycf(a1,a2,,an)=cyca1a2b2+a3b3++anbn=cyca12b2a1a2+b3a1a3++bna1an=a12b2a1a2+b3a1a3++bna1an+a22b2a2a3+b3a2a4++bna2a1++an2b2ana1+b3ana2++bnanan1(a1+a2++an)2b2a1a2+b3a1a3++bna1an+b2a2a3+b3a2a4++bna2a1++b2ana1+b3ana2++bnanan1((2))=(i=1nai)2B(1i<jnaiaj)2nB(n1)((3))

この不等式が使える問題をいくらか紹介しておきます.

IMO Shortlist 1993 A-3

a,b,c,d>0のとき,以下の不等式を示せ.
ab+2c+3d+bc+2d+3a+cd+2a+3b+da+2b+3c23

出典は こちら .

解答
定理4において,n=4,b2=1,b3=2,b4=3とすればよく,B=4であるから,2nB(n1)=23となり示された.

Nesbittの不等式の一般化

n2とする.a1,a2,,an>0のとき,以下の不等式を示せ.
a1a2+a3++an+a2a1+a3++an++ana1+a2++an1nn1

こちらは,ゾンブラさんの記事『Nesbittの不等式とその一般化』の定理2の不等式です.記事は こちら .

解答
定理4において,b2=b3==bn=1とすればよく,B=2であるから,2nB(n1)=nn1となり示された.

自作問題

n2とする.a1,a2,,an>0のとき,以下の不等式を示せ.
a1a2+2a3++(n1)an+a2a3+2a4++(n1)a1++ana1+2a2++(n1)an12n1

一応自作の問題です.n=4のとき,問題1と同じものになります.つまり,問題1の一般化ということになります.
n=3のときもどこかの数オリでみたことがありますがどこかは忘れました.

解答
定理4において,bi=i1 (2in)とすればよく,B=nであるから,2nB(n1)=2n1となり示された.

おわりに

この不等式を数学オリンピックで使うことはないと思います.どちらかといえば,定理2の不等式のほうがよくみる気がします.
とりあえず一般化って楽しいですよね!!
ここまで読んでいただきありがとうございました!!!!!

投稿日:2022125
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2006年に生まれました

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