積分が座標変換に対して不変ということは、つまりは座標のとり方に依存しないということです。
多様体のお話にもちこむとその視点が明確になるなぁ、という、まあ教科書によく書いてようなことをつらつら述べます。
けっこう適当な、私の感覚も書いてあります。また多様体論に言及しますが、そのあたりのこと全く詳しくないので、へんなこと言っていたらすみません&良ければご指摘ください。
本記事はRef.[1-3]を参考にして書かれています。
以下の内容におかしな点があれば、それはすべて私の理解不足や勝手な妄想に基づくものであり、これら教科書に罪はありません(名著ばかりなので当たり前ですが)。
高校数学で区分求積法を習います。
これは関数
区分求積:等分割した例
でも横の長さ一定の長方形にする必要はありません。長方形の横の長さがどれも十分短ければ、こんな切り方でもいいです:
区分求積(?):等分割ではない例
この議論を一般化します。
ある
この
が成り立つでしょう。ここで
上の式の右辺を
と変形しておきます。あとは
となります。これは置換積分に他なりません。
つまり置換積分は、区分求積の長方形の横の長さのとり方の任意性と解釈できます。
もうすこし違う言葉で言えば、元の座標
以下前章での座標の任意性を多様体論・微分形式の言葉で理解します。
可微分多様体は、局所的にEuclid空間と同相で、いたるところ座標近傍への同相写像が存在するような空間です。また、座標近傍が重なるところで、その間の座標変換が滑らかです。
多様体それ自体は採用する座標と無関係な性質を持ちます。多様体の何らかの性質の計算には具体的な座標を設定しなければいけないときもあります。しかしどのような座標をもってきても、どれも等価です。多様体の座標近傍として、ユークリッド座標を採ってもいいし、極座標を採ってもいいです。
人は時として、何か「空間」が存在すると、そこに暗黙に座標が存在すると思ってしまいます。多様体にはそのようなアプリオリな座標は存在しません。多様体上の点
ベクトル空間
このような双対を、多様体上の接空間(多様体上のある点
を余接バンドルと言います。
多様体
です。
いまある接ベクトル
です。
(この表式は
接ベクトル
とか
と表します。これはすなわち、
ここまでは局所座標に依存しない話でしたが、ここで座標を入れます。
ある座標近傍
点
そこで
および各点
を考えると、1形式
と表せます。これが1形式の局所座標表示、
1形式
が成立しています。
多様体
この曲線に沿った
です。これはいわゆる線積分です。
この表式の第1項および第2項は具体的な座標に依存していません。つまり積分が座標に依存しない量であることを物語っています。1形式とベクトル場を
Eq.(1)はEq.(2)と同じ形をしています。これはつまり、Eq.(1)は多様体上ある曲線に沿った1形式の積分=線積分とみなせるということです。そしてEq.(2)の形にすると、これが具体的な座標のとり方に依存しないことが明確になります。よって、座標変換しても値は変わりません。
このような感じで、ふつう「積分」と呼ぶものを、多様体上の1形式の積分とみなせば、採用する座標に依らないことがわかりやすいですね。
次の2つの見方は同じことを言っています:
1. は関数の積分をする感じ。座標がもともとあって、そこに関数をプロットして積分する。
2. は、先に図形が存在し、その大きさを座標を入れて計算する感じ。
そして2.の視点は、相対論における一般座標変換不変性、ゲージ理論におけるゲージ対称性の考え方の大元になります。
当たり前といえば当たり前のことでした。
ちょっとした覚書でした。
おしまい。