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大学数学基礎解説
文献あり

選択公理⇔連結グラフは全域木をもつ

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選択公理が「すべての連結グラフは全域木をもつ」ことと同値であることを示します.グラフについては自分は詳しくないので,間違いがあればご指摘ください.

  1. $V$を頂点の集合,$E$を辺の集合とし,写像$\phi:E\to\mathcal{P}(V)$が任意の$e\in E$に対し$\phi(e)$の濃度が$1$または$2$であるとする.このとき三つ組$G=(V,E,\phi)$をグラフという.また$V=\mathrm{vert}(G),E=\mathrm{edge}(G)$と表す.
  2. グラフ$G'=(V',E',\phi')$$V'\subset V,E'\subset E,\phi'=\phi|_{E'}$を満たすとき,$G'$$G$の部分グラフという.
  3. $v,v'\in V$に対し,頂点の列$v=v_0,v_1,\cdots,v_n=v'$と辺の列$e_0,\cdots,e_{n-1}$が存在して$\phi(e_i)=\{v_i,v_{i+1}\}(0\leq i\leq n-1)$を満たすとき,$v$を始点とし$v'$を終点とする道が存在するという.
  4. 任意の$v,v'\in V$に対し,$v$を始点とし$v'$を終点とする道が存在する道が存在するとき,$G$は連結であるとする.
  5. 始点と終点が一致する道をサイクルという.
  6. $G$がサイクルをもたない連結グラフであるとき,$G$は木であるという.
  7. 部分集合$E'\subset E$が存在して,$T=(V,E',\phi|_{E'})$が木となるとき,$T$を全域木という.

次は同値である.

  1. 選択公理
  2. すべての連結グラフは全域木をもつ.
1$\Longrightarrow$2

$G=(V,E,\phi)$を連結グラフとする.$\mathcal{T}=\{(V',E',\phi')\mid (V',E',\phi')$$G$の部分グラフであり,木である$\}$と定める.また,$\mathcal{T}$上の二項関係$\preceq$を部分グラフであることにより定めると,$(\mathcal{T},\preceq)$は半順序集合になる.これが帰納的であることを示す.$\mathcal{C}$を任意の$\mathcal{T}$の鎖とする.$T_0=(\bigcup_{T\in\mathcal{C}}\mathrm{vert}(T),\bigcup_{T\in\mathcal{C}}\mathrm{edge}(T),\phi|_{\bigcup_{T\in\mathcal{C}}\mathrm{edge}(T)})$とおく.任意に$v,v'\in T_0$をとるとき,$\mathcal{C}$が鎖であることからある$(V_1,E_1,\phi_1)\in\mathcal{C}$が存在して$v,v'\in V_1$となる.ゆえに$v$を始点とし$v'$を終点とする道が存在する.また,もし$v$を通るサイクルが存在するとき,そのサイクルを含むような$(V_2,E_2,\phi_2)\in\mathcal{C}$が存在することになり矛盾が生じる.よって$T_0$は連結かつサイクルをもたないことから,木である.よって,$T_0$$\mathcal{C}$の上界である.したがって,Zornの補題より$\mathcal{T}$は極大元$T$をもつ.もし,$T$$G$の全域木でないとすると,ある$w,w'\in V$が存在して,$w$を始点とし$w'$を終点とする道は$T$に存在しない.他方$G$は連結であるので,$w$を始点とし$w'$を終点とする道は$G$には存在するので,この道を含むように$T$を拡大したものを$T'$とすれば,これは$T\prec T'$を満たすので,$T$の極大性に反する.よって,$G$の全域木$T$の存在が示された.

2$\Longrightarrow$1

$(X_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}$を空でない集合からなる族とする.グラフ$G=(V,E,\phi)$を,
$$ \begin{align} V&=\{\bullet\}\cup\{\bigcirc_\lambda\mid\lambda\in\Lambda\}\cup\{\square_\lambda\mid\lambda\in\Lambda\}\cup\Bigl(\bigcup_{\lambda\in\Lambda}(\{\lambda\}\times X_\lambda)\Bigr)\\ E&=\bigcup_{\lambda\in\Lambda}\left(\{a_\lambda\}\cup\{b_{\lambda,x}\mid x\in X_\lambda\}\cup\{c_{\lambda,x}\mid x\in X_\lambda\}\right) \end{align} $$
とし(未定義の文字はすべて異なる),
$$ \phi(a_\lambda)=\{\bullet,\bigcirc_\lambda\},\;\phi(b_{\lambda,x})=\{\bigcirc_\lambda,(\lambda,x)\},\;\phi(c_{\lambda,x})=\{(\lambda,x),\square_\lambda\} $$
で定める.
Gのイメージ Gのイメージ
$G$は連結グラフである.よって全域木$T=(V,E',\phi|_{E'})$が存在する.$T$の連結性より,任意の$\lambda\in\Lambda$に対し$\bigcirc_\lambda$を始点とし$\square_\lambda$が終点となる道が存在し,$T$がサイクルを持たないことからこれは一意に定まる.すなわち,$b_{\lambda,x_\lambda},c_{\lambda,x_\lambda}\in E'$を満たす$x_\lambda\in X_\lambda$が一意に定まる.
Tのイメージ Tのイメージ
このとき,$(x_\lambda)_{\lambda\in\Lambda}\in\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda$であるから,$\prod_{\lambda\in\Lambda}X_\lambda$は空でない.

参考文献

[1]
Ervin Győri, Gyula O. H. Katona, László Lovász, Gábor Sági, "Horizons of Combinatorics", Springer, 2008, pp. 192-193
投稿日:202228

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