今回は、最近おもしろいなと思った ウリゾーンの補題 の証明を(詳しめに)書こうと思います。ウリゾーンの補題の主張は次のようなものです:
ウリゾーンの補題
を正規空間、 を互いに交わらない閉集合とする。このとき、連続関数 で なるものが存在する。
ここで、位相空間 が 正規 であるとは、次の 2 つの条件をみたすことをいいます。
- は 空間。すなわち、任意の相異なる 2 点 に対し、ある開集合 で なるものが存在する。
- の任意の交わらない閉集合 に対し、ある開集合 で なるものが存在する。
この定義だけを見ると、条件に実数と直接関係のあるものは含まれていないため、ウリゾーンの補題の主張は(個人的に)かなり非自明なものだと思います。実は、ウリゾーンの補題はある意味で正規空間の特徴づけになっています:
正規空間の特徴づけ
を 空間とする。このとき、次の 2 条件は同値である。
- は正規空間。
- 任意の交わらない閉集合 に対し、連続写像 で なるものが存在する。
ウリゾーンの補題から明らか。
を の交わらない閉集合とする。
- 仮定より、連続写像 で なるものが存在する。
- とおくと、 は の開集合であるから、 は の開集合である。
- の定め方から であり、
が成り立つ。
よって は正規である。
それでは、ウリゾーンの補題を証明していきます。補題 4 が重要な補題で、補題 3 はその準備になります。補題 5 において(ウリゾーンの補題とほとんど同じ条件をみたす)連続写像 を構成します。
を正規空間、 を閉集合、 を なる開集合とする。このとき、開集合 で なるものが存在する。
- とおくと、 は の閉集合で をみたす。
- は正規空間だから、ある開集合 で なるものが存在する。
- はわかったから をいえばよい。
- より である。 は の閉集合であるから、閉包の性質より となる。結局、
を正規空間、 を閉集合、 を なる開集合とする。このとき、 なる任意の 進小数 に対して、次の 2 つの条件をみたす開集合 が存在する。
- .
- なら .
この補題は(正確さをある程度無視すれば)、 の間を、開集合 たちによって "十分に細かく" かつ、 " から へ順に積み重なるように" 分割できる 、ということを意味しているといえます。
を既約分数として ( は正の整数)と表す。この の表示の 分母の の指数 に関する帰納法 によって を定める。
( のとき) を、補題 3 から得られる なる開集合として定める。
( なる自然数 について定まっているとき)
- を任意の なる正の整数としたとき、任意の既約な 進分数 について が定まっていると仮定する。
- に対して、 はともに偶数である。したがって、 はともに、既約分数で表したとき分母の の指数が 未満となる。 よって開集合 はすでに定まっていて、 が成り立つ。
- 閉集合 と開集合 に対し補題 3 を適用すれば、開集合 で なるものが選べる。この を とおく。
- 3 で選んだ に対して主張の (i) が成り立つことは明らか。よって (ii) が成り立つことを示せばよい。 とする。
a. なら、 の選び方から が成り立つ。
b. なら、 が条件 (ii) をみたすことから が成り立つ。 - もし なら、閉集合 と開集合 に対して補題 3 を適用して なる開集合 を選ぶ。これが主張の条件をみたすことは 4 の b と同じようにして確かめられる。
以上より、すべての に対して補題の条件をみたす が定められた。
補題 4 の状況で、写像 を
と定める。このとき、 は連続写像 で、 をみたす。
補題 4 の直感によれば、この補題の は、 と の間の点 (厳密には定義のように なる が存在する点 )に対して、「層のように積み重なっている たちの中で はどの階層から含まれるのか」、その "番号" を与える関数である、といえます(厳密には "" なので の値が実際の "番号" であるとは限りません)。
に対し とおく。 の範囲は であるから、 の定義より任意の に対し 。すなわち、 は写像 である。
まず、
が成り立つ。
なら、条件「」がみたされるから、 の性質より が成り立つ。
なら、 より 。このとき の性質から、ある が存在して となる。よって、補題 4 の条件 (ii) から が成り立つ。
したがって、 に対し、
が成り立つ。
(Step1: であること)
- もし なら、任意の に対して だから、 より である。よって が成り立つ。
- もし なら、任意の に対して 、すなわち が成り立つ。よって である。
(Step2: が連続であること)(i) なる での連続性:
- 任意の に対して、ある の開集合 で なるものが存在して が成り立つことを示す。
- より、 から任意の に対して である。よって、 なる 進分数 を 1 つ選んだとき となる。
- とおくと、 より任意の に対し である。すなわち、 が成り立つ。
- ゆえに、1. の主張が示された。
(ii) なる での連続性:
- 任意の に対して、ある開集合 で なるものが存在して が成り立つことを示す。
- なる 進分数 に対し、 の対偶から となる。補題 4 の条件 (ii) より だから が成り立つ。
- 上の 2. における を なるように選び、この に対して とおけば、 は の開集合で 2. より 。
- 任意の に対し だから、 の対偶より 。すなわち が成り立つ。
- ゆえに、1. の主張が示された。
(iii) なる での連続性:
- 任意の で なるものに対して、ある開集合 で なるものが存在して が成り立つことを示す。
- なる 進分数 に対し、
a. から 、すなわち
b. と の対偶から
c. と から
d. a. と b. から
e. c. と d. から
となる。 - 上の 2. における を なるように選び、 とおくと 2. より で、 は の開集合( であり は の開集合である )。
- 任意の に対して、 だから より
が成り立つ。すなわち、 である。 - ゆえに、1. の主張が示された。
正規空間 の交わらない閉集合 が与えられたとき、 とおいて補題 5 を適用することにより、直ちにウリゾーンの補題が得られます。
ウリゾーンの補題(再掲)
を正規空間、 を互いに交わらない閉集合とする。このとき、連続関数 で なるものが存在する。
今回は省きましたが、ウリゾーンの補題からは ティーツェの拡張定理 を示すことができ、この定理もある意味で正規空間の特徴づけになっています。また、「第二可算かつ正規な位相区間は距離付け可能である(すなわち、その位相と同じ位相を与える距離が存在する)」という ウリゾーンの距離付け可能定理 もウリゾーンの補題から導かれます。