11
大学数学基礎解説
文献あり

ウリゾーンの補題

4967
0

 今回は、最近おもしろいなと思った ウリゾーンの補題 の証明を(詳しめに)書こうと思います。ウリゾーンの補題の主張は次のようなものです:

ウリゾーンの補題

X を正規空間、A,BX を互いに交わらない閉集合とする。このとき、連続関数 f:X[0,1]f(A)={0}, f(B)={1} なるものが存在する。

ここで、位相空間 X正規 であるとは、次の 2 つの条件をみたすことをいいます。

  1. XT1 空間。すなわち、任意の相異なる 2 点 p,qX に対し、ある開集合 UXpU, qV なるものが存在する。
  2. X の任意の交わらない閉集合 F1,F2X に対し、ある開集合 U,VXF1U, F2V, UV= なるものが存在する。

 この定義だけを見ると、条件に実数と直接関係のあるものは含まれていないため、ウリゾーンの補題の主張は(個人的に)かなり非自明なものだと思います。実は、ウリゾーンの補題はある意味で正規空間の特徴づけになっています:

正規空間の特徴づけ

XT1 空間とする。このとき、次の 2 条件は同値である。

  1. X は正規空間。
  2. 任意の交わらない閉集合 F1,F2X に対し、連続写像 f:X[0,1]F1f1(0), F2f1(1) なるものが存在する。

(i)(ii): ウリゾーンの補題から明らか。
(ii)(i): F1,F2XX の交わらない閉集合とする。

  1. 仮定より、連続写像 f:X[0,1]F1f1(0), F2f1(1) なるものが存在する。
  2. U:=f1([0,12)), V:=f1((12,1]) とおくと、[0,12), (12,1][0,1] の開集合であるから、U,VX の開集合である。
  3. U,V の定め方から UV= であり、
    F1f1(0)f1([0,12))=UF2f1(1)f1((12,1])=V
    が成り立つ。

よって X は正規である。

 それでは、ウリゾーンの補題を証明していきます。補題 4 が重要な補題で、補題 3 はその準備になります。補題 5 において(ウリゾーンの補題とほとんど同じ条件をみたす)連続写像 f:X[0,1] を構成します。

X を正規空間、FX を閉集合、UXFU なる開集合とする。このとき、開集合 VXFV, VU なるものが存在する。

  1. F1:=F, F2:=XU とおくと、F1,F2X の閉集合で F1F2= をみたす。
  2. X は正規空間だから、ある開集合 V,WXF1V, F2W, VW= なるものが存在する。
  3. FV はわかったから VU をいえばよい。
  4. VW= より VXW である。XWX の閉集合であるから、閉包の性質より VXW となる。結局、
    VXWXF2=X(XU)=U.

X を正規空間、FX を閉集合、 UXFU なる開集合とする。このとき、0<q<1 なる任意の 2 進小数 q に対して、次の 2 つの条件をみたす開集合 VqX が存在する。

  1. FVq, VqU.
  2. q<q なら VqVq.

 この補題は(正確さをある程度無視すれば)、 FU の間を、開集合 Vq たちによって "十分に細かく" かつ、 "F から U へ順に積み重なるように" 分割できる 、ということを意味しているといえます。

 q を既約分数として q=d2nd, n は正の整数)と表す。この q の表示の 分母の 2 の指数 n に関する帰納法 によって Vq を定める。

(n=1 のとき)

 V12X を、補題 3 から得られる FV12, V12U なる開集合として定める。

(k<n なる自然数 k について定まっているとき)
  1. k を任意の k<n なる正の整数としたとき、任意の既約な 2 進分数 q=d2k について Vq が定まっていると仮定する。
  2. q=d2n, d1 に対して、d1, d+1 はともに偶数である。したがって、 d12n, d+12n はともに、既約分数で表したとき分母の 2 の指数が n 未満となる。 よって開集合 Vd12n, Vd+12n はすでに定まっていて、Vd12nVd+12n が成り立つ。
  3. 閉集合 Vd12n と開集合 Vd+12n に対し補題 3 を適用すれば、開集合 VXVd12nV, VVd+12n なるものが選べる。この VVq とおく。
  4. 3 で選んだ Vq に対して主張の (i) が成り立つことは明らか。よって (ii) が成り立つことを示せばよい。q<q とする。
    a. q=d+12n なら、 Vq の選び方から VqVq が成り立つ。
    b. d+12n<q なら、 Vd+12n が条件 (ii) をみたすことから VqVd+12nVd+12nVq が成り立つ。
  5. もし d=1 なら、閉集合 F と開集合 Vd+12n=V12n1 に対して補題 3 を適用して FV12n, V12nV12n1 なる開集合 Vq=V12n を選ぶ。これが主張の条件をみたすことは 4 の b と同じようにして確かめられる。

以上より、すべての q に対して補題の条件をみたす Vq が定められた。

補題 4 の状況で、写像 f:XR
f(p)={inf {qpVq}(q  s.t.  pVq)1  (q , pVq)
と定める。このとき、f は連続写像 f:X[0,1] で、f(F)={0}, f(XU)={1} をみたす。

 補題 4 の直感によれば、この補題の f は、 FU の間の点 p (厳密には定義のように pVq なる q が存在する点 p )に対して、「層のように積み重なっている Vq たちの中で p はどの階層から含まれるのか」、その "番号" q を与える関数である、といえます(厳密には "inf" なので f の値が実際の "番号" であるとは限りません)。

 pX に対し Sp:={qpVq} とおく。 q の範囲は 0<q<1 であるから、f の定義より任意の pX に対し 0f(p)1 。すなわち、f は写像 f:X[0,1] である。
 まず、

  • pVq なら f(p)q     (A)
  • f(p)<q なら pVq     (B)

が成り立つ。


) pVq なら、条件「q  s.t.  pVq」がみたされるから、 inf の性質より f(p)=inf Spq が成り立つ。
f(p)<q なら、q<1 より f(p)=inf Sp<q 。このとき inf の性質から、ある qSp が存在して q<q となる。よって、補題 4 の条件 (ii) から pVqVqVq が成り立つ。


したがって、 q<q に対し、
pVqVq    qf(p)q     (C)
が成り立つ。

(Step1: f(F)={0}, f(XU)={1} であること)
  1. もし pF なら、任意の q に対して pVq だから、0<q<1 より f(p)=inf Sp=0 である。よって f(F)={0} が成り立つ。
  2. もし pXU なら、任意の q に対して qXUXVq、すなわち pVq が成り立つ。よって f(XU)={1} である。
(Step2: f が連続であること)

(i) f(p)=0 なる p での連続性:

  1. 任意の 0<ε<1 に対して、ある X の開集合 VXpV なるものが存在して f(V)[0,ε) が成り立つことを示す。
  2. f(p)=0 より、(A) から任意の q に対して pVq である。よって、0<q<ε なる 2 進分数 q を 1 つ選んだとき pVq となる。
  3. V:=Vq とおくと、(A) より任意の pV に対し f(p)q<ε である。すなわち、f(V)[0,ε) が成り立つ。
  4. ゆえに、1. の主張が示された。

(ii) f(p)=1 なる p での連続性:

  1. 任意の 0<ε<1 に対して、ある開集合 VXpV なるものが存在して f(V)(1ε,1] が成り立つことを示す。
  2. 0<q<q<1 なる 2 進分数 q, q に対し、(A) の対偶から pVq となる。補題 4 の条件 (ii) より VqVq だから pVq が成り立つ。
  3. 上の 2. における q, q1ε<q<q<1 なるように選び、この q に対して V:=XVq とおけば、VX の開集合で 2. より pV
  4. 任意の pV に対し pVq だから、 (B) の対偶より 1ε<qf(p) 。すなわち f(V)(1ε,1] が成り立つ。
  5. ゆえに、1. の主張が示された。

(iii) 0<f(p)<1 なる p での連続性:

  1. 任意の ε>0(f(p)ε,f(p)+ε)[0,1] なるものに対して、ある開集合 VXpV なるものが存在して f(V)(f(p)ε,f(p)+ε) が成り立つことを示す。
  2. 0<q<q<f(p)<q<1 なる 2 進分数 q, q, q に対し、
    a. q<q から VqVq、すなわち XVqXVq
    b. f(p)>q(A) の対偶から pVq
    c. f(p)<q(B) から pVq
    d. a. と b. から pVq
    e. c. と d. から pVqVq
    となる。
  3. 上の 2. における q, q, qf(p)ε<q<q<f(p)<q<f(p)+ε なるように選び、V:=VqVq とおくと 2. より pV で、VX の開集合( V=Vq(XVq) であり XVqX の開集合である )。
  4. 任意の pV に対して、VVqVq だから (C) より
    f(p)ε<qf(p)q<f(p)+ε
    が成り立つ。すなわち、f(V)(f(p)ε,f(p)+ε) である。
  5. ゆえに、1. の主張が示された。

 正規空間 X の交わらない閉集合 A,B が与えられたとき、F:=A, U:=XB とおいて補題 5 を適用することにより、直ちにウリゾーンの補題が得られます。

ウリゾーンの補題(再掲)

X を正規空間、A,BX を互いに交わらない閉集合とする。このとき、連続関数 f:X[0,1]f(A)={0}, f(B)={1} なるものが存在する。

 今回は省きましたが、ウリゾーンの補題からは ティーツェの拡張定理 を示すことができ、この定理もある意味で正規空間の特徴づけになっています。また、「第二可算かつ正規な位相区間は距離付け可能である(すなわち、その位相と同じ位相を与える距離が存在する)」という ウリゾーンの距離付け可能定理 もウリゾーンの補題から導かれます。

参考文献

[1]
川﨑 徹郎, 位相空間 例と演習, 共立出版, 2020
[2]
小山 晃, 位相空間論 ー現代数学への基礎一, 森北出版, 2021
投稿日:2022213
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Re_menal
Re_menal
206
28915
16歳 代数や積分,級数についての記事を書きます!(2021 年時点) → 17 歳 (無限)圏論についての記事を書きます!(2022 年 12 月時点)

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中