ここでは東大数理の修士課程の院試の2025B08の解答例を解説していきます。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
2025B08
をの球面
とおく。またを上の級形式全体とする。以下の問いに解答しなさい。
- 任意のに対して積分
はで有限の値に収束することを示しなさい。 - を正定数とする。任意のに対して積分
がで収束するような実数の範囲を求めなさい。
- まず極座標表示
を取り、
とおくと、問題の積分は
と表される。この積分はある級関数を用いて
と書ける。ここで第二項はでに収束するから、問題の積分はでに収束する。よって結果が示せた。 - 問題の積分はストークスの定理から
と表される。
ここで積分
を考える。まず補題を及びに適用して
と表す。このとき
と表される。ここで(1)で用いた極座標表示により、任意のに対して
は収束する。
次に上記と同様に積分を定義したとき、上の議論と同様に補題を用いてを分解すると、は
とできる。このとき任意のに対して極限
は有限値に収束することが分かる。
以上から極限
は、の取り方に関わらず、が偶数の時は任意のに対して、が奇数のときは任意のに対して収束することが分かる。
が奇数とする。このとき
と置くと、考える極限は
であり、これはに於いて発散する。
一方が偶数の時
と置くと、これもに於いて発散する。
以上をまとめると極限が収束するようなの範囲は
である。
多変数版テイラーの定理
を級関数とする。このとき任意の自然数について
を満たす関数の族が存在する。