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競技数学解説
文献あり

Pascalの定理(円の場合)の計算による証明

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でBrianchonの定理を証明したので今回はその双対であるPascalの定理も証明します.

Pascalの定理

$2$次曲線上に$6$$A,B,C,D,E,F$があるとき,$AB$$DE$の交点を$X$$BC$$EF$の交点を$Y$$CD$$FA$の交点を$Z$とすると,$X,Y,Z$は同一直線上にある.

$AB$$DE$が平行なときは$X$は無限遠点であると考え,$Y,Z$を通る直線と$AB,DE$が平行であることを意味します.$2$つ以上が無限遠点の場合は$3$つとも無限遠点であることを意味します.

この定理は$2$次曲線で成り立ちますが,ここでは円の場合のみを証明します.

以下使う公式をまとめます.(知っている方は読みとばしてください.)

複素平面上に$4$$A(a),B(b),C(c),D(d)$があるとき,直線$AB$$CD$の交点の座標は$\displaystyle\frac{(a-b)(\bar{c}d-\bar{d}c)-(c-d)(\bar{a}b-\bar{b}a)}{(a-b)(\bar{c}-\bar{d})-(\bar{a}-\bar{b})(c-d)}$で与えられる.

$Z(z)$$AB$上にあるとき,$\left|\begin{array}{ccc}a&&\bar{a}&&1\\b&&\bar{b}&&1\\z&&\bar{z}&&1\end{array}\right|=0$すなわち$(\bar{a}-\bar{b})z+(b-a)\bar{z}=-(a\bar{b}-b\bar{a})$となる.(前の記事の補題3を参照)
同様に,$Z$$CD$上にあるとき$(\bar{c}-\bar{d})z+(d-c)\bar{z}=-(c\bar{d}-d\bar{c})$となるので,$AB,CD$の交点の座標はこの連立方程式を解くことで求まり,$z=\displaystyle\frac{-(d-c)(a\bar{b}-b\bar{a})+(b-a)(c\bar{d}-d\bar{c})}{(\bar{a}-\bar{b})(d-c)-(b-a)(\bar{c}-\bar{d})} \\=\displaystyle\frac{(a-b)(\bar{c}d-\bar{d}c)-(c-d)(\bar{a}b-\bar{b}a)}{(a-b)(\bar{c}-\bar{d})-(\bar{a}-\bar{b})(c-d)}$となる.

$4$$A(a),B(b),C(c),D(d)$が単位円上にあるとき,直線$AB$$CD$の交点の座標は$\displaystyle\frac{ab(c+d)-cd(a+b)}{ab-cd}$で与えられる.

$\displaystyle\bar{a}=\frac{1}{a},\bar{b}=\frac{1}{b},\bar{c}=\frac{1}{c},\bar{d}=\frac{1}{d}$を使うとわかる.

本題に入ります.
場合分けで証明します.

$X,Y,Z$がどれも無限遠点でないとき

定理$3$から$\displaystyle x=\frac{ab(d+e)-de(a+b)}{ab-de} \\\displaystyle y=\frac{bc(e+f)-ef(b+c)}{bc-ef} \\\displaystyle z=\frac{cd(f+a)-fa(c+d)}{cd-fa}$
がわかる.
これより,
$\left|\begin{array}{ccc}\frac{ab(d+e)-de(a+b)}{ab-de}&&\frac{a+b-d-e}{ab-de}&&1\\\frac{bc(e+f)-ef(b+c)}{bc-ef}&&\frac{b+c-e-f}{bc-ef}&&1\\\frac{cd(f+a)-fa(c+d)}{cd-fa}&&\frac{c+d-f-a}{cd-fa}&&1\end{array}\right|=0$
すなわち
$\left|\begin{array}{ccc}ab(d+e)-de(a+b)&&a+b-d-e&&ab-de\\bc(e+f)-ef(b+c)&&b+c-e-f&&bc-ef\\cd(f+a)-fa(c+d)&&c+d-f-a&&cd-fa\end{array}\right|=0$を示せばいいことになる.
ところで,前回の記事を見るとこれが$0$になることは既に示してある.

$X,Y,Z$のうちちょうど$1$つが無限遠点であるとき

$X$が無限遠点であると仮定してよい.
このとき,$ab=de$が成り立つ.
これより,
$\displaystyle y=\frac{bc(e+f)-ef(b+c)}{bc-ef} \\\displaystyle z=\frac{cd(f+a)-fa(c+d)}{cd-fa} \\\displaystyle=\frac{bc(f+a)-ef(c+d)}{bc-ef}$
となって,
$\displaystyle z-y=\frac{bc(a-e)-ef(d-b)}{bc-ef} \\\displaystyle=\frac{bc(a-e)-bf(a-e)}{bc-ef} \\\displaystyle=\frac{b(c-f)(a-e)}{bc-ef}$
となる.
ここで,偏角を考えると単位円上の$2$$\alpha,\beta$について$\displaystyle\frac{\alpha-\beta}{i\sqrt{\alpha\beta}}$は実数である.(複素数の平方根は符号が一意に定まらないがどちらの符号を取っても実数であるかに影響はない)
これより,$\displaystyle\frac{z-y}{a-b}=\frac{b\frac{c-f}{i\sqrt{cf}}\frac{a-e}{i\sqrt{ae}}}{\frac{bc-ef}{i\sqrt{bcef}}\frac{a-b}{i\sqrt{ab}}}\frac{i\sqrt{cf}i\sqrt{ae}}{i\sqrt{bcef}i\sqrt{ab}}$は実数であり,$YZ$$AB$は平行であることがわかる.

$X,Y,Z$のうち$2$つ以上が無限遠点であるとき

(この場合を示す問題が2011年のJJMOにあります)

$X$$Y$が無限遠点であるとしてよい.
$ab=de$および$bc=ef$が成り立つので$cd=fa$となり,$Z$も無限遠点である.

以上より証明できました.

参考文献

[1]
Evan Chen, Euclidean Geometry in Mathematical Olympiads, MAA PRESS, 2016, p.104
投稿日:2022224

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