をヒルベルト空間とする。がとのテンソル積であるとは
(1) はヒルベルト空間であってが双線形である
(2)
(3) を満たすことと定める。HとKのテンソル積, 特にをと記述する。
以下, まずが一意に存在することを示す。をからへの反線形作用素全体とする。:
任意のに対し一意に
が存在する。以下作用素ノルムを略記して単に区別なくとかく。
を任意にとる。上の有界線形汎関数をで定めると, よりは有界である。よってリースの表現定理からあるが存在し
である。をで定めればからである。反線形性は内積の公理とリースの表現定理より簡単に
と分かる。
をそれぞれとの任意の有限部分集合とすると
である。次に
を示す。を固定すると, 「」とであることから
が成り立つ。逆側の不等式を確かめる。
もしあるに対しならば, 明らかな不等式から
ゆえに終える。もしならば, あるの有限部分集合の族が存在して
となる。とおくとこれはまたの有限部分集合なので
よっての任意の有限部分集合に対し,で, より
対称的な議論よりである。
をの正規直交基底とする。よりで前命題と前々命題より
のため, はの正規直交基底の取り方には依存せず定まる。
をヒルベルト空間の正規直交基底とし,
とおくと, これは線形空間をなすことは明らか。次にに対しては絶対収束し, の正規直交基底の選び方に依存しないことを示す。まず極化等式を用いて(本稿は第一変数が線形, 第二変数が反線形の内積。絶対収束性も極化等式から自明)
これより上に任意のについて次で
という内積を定義することができる。なぜならでその他も明らかである。
はこの内積によってヒルベルト空間をなすことを示す。全ての(可分)ヒルベルト空間はと同型であったことを思い出す。に対し, を
で定める。より上の写像は各定義域の元に対し終域の元へと対応させていると言う意味で良定義である。は線形同型であることも線形性はより成り立ち同型性も逆写像を
として自明である。よってはヒルベルト空間をなす。
との今の流儀におけるテンソル積の存在について示せ。
と定義する。以後をと記述されたい。より, である。
なので
が成り立つ。また任意のに対し,なので
である。これで冒頭の定義のを示せた。最後に(2), すなわちがの正規直交基底であることを示す。まず
より正規直交系であることは良い。下の命題を適用すればよく, もしとすると
よりはにおいて稠密である。
ヒルベルト空間の完全正規直交系
がヒルベルト空間の正規直交系であるとは,を満たすことを言う。の正規直交系に対しての閉包 (i.e. の線形結合の閉包)がに等しいことと次は同値である。
・
・
・
・ これらの条件のうちのどれかを満たすをの正規直交基底と呼んだ。
一意的であることを次から示すが線形空間の一般論的なことから始める。
をで張られる空間の正規直交基底とし, に対しあるを用いてとかくとの双線形性から
ここで, とおけばである。でとが線形独立なベクトルだったのでとなる。
で張られる空間において独立なベクトルをとして勝手にとる(正規である必要はない)。あるでとかけるので
であり前補題からである。は双線形であることより
と定義するとこれはの稠密部分空間である。をとのテンソル積とする。を線形性を持ち重要な対応は指定するととなるよう定める。すると補題5よりは無限次元もありうるヒルベルト空間への写像として良定義である。
よりは上の等距離同型作用素で, である。位相線型空間の一般論の話では一意にに拡張でき, はで閉となる。, ただし冒頭の定義(2)より。よってが成り立つ。の等距離性からであり, この意味でテンソル積の存在は一意である。