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大学数学基礎解説
文献あり

G/HがGの積で群⇒Hは正規部分群

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$G$を群, $H$をその部分群とする.
普通, $G$$H$による剰余群$G/H$$H$が正規部分群, つまり任意の$g\in G$に対して$gH=Hg$が成り立つときに定義される.
直感的には
$$(xH)(yH)=xHyH=xyHH=(xy)H$$
と計算するために要請される条件であるが, 商集合$G/H$に他の定義で演算を入れることはできないのだろうか.
つまり
$$(xH)(yH)=zH$$
となるような$z$の定め方は他に存在しないのかということである.

松坂和夫『代数系入門』の演習問題にその答えがある:

$H$$G$の部分群とし, $H$を法とする任意の2つの左剰余類の積は$H$を法とする1つの左剰余類になるとする.
そのとき$H$$G$の正規部分群であることを示せ. [1,p.65]

つまり, $G/H$が積により群となるための必要条件(従って必要十分条件)が, $H$$G$の正規部分群であることだと主張している.

任意に$x\in G$を取る.
仮定より, $(xH)(x^{-1}H)=yH$となる$y\in G$が存在する.
ここで, $G$の単位元$1$$H$に含まれるので, ある$h'\in H$が存在して
$$1=x1x^{-1}1=yh'$$
を満たす.
よって$y=h'^{-1}\in H$であるから, 結局$yH=H$が従う.
従って, $(xH)(x^{-1}H)=H$だから, 任意の$h\in H$に対して
$$xhx^{-1}=xhx^{-1}1\in H$$
となる.
よって$H$$G$の正規部分群である.

参考文献

[1]
松坂和夫, 代数系入門, 岩波書店, 1976
投稿日:2022316

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オ
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