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二進対数の有理数近似

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こんにちは! 入試問題をジョークのネタにするマッドサイエンティスト ことNayuta Itoです。

今日は、私が最近興味のある二進対数の有理数近似について紹介したいと思います。
(この時点でオチが読めた人へ: その通りです。)

導入

210=10241000=103

という近似は有名ですね。これを少し変形することで、

2735

という近似を得ることができます。また、両辺の二進対数を取ると、

log2573=2+13

となり、log25の近似値が得られました。

log25が簡単に求まるなら、他の素数pに対してもlog2pを求めてみたくなりますね。

3について考える

3を何乗かしていくと、こんな近似に気づくと思います。

312=531441524288=219

これを変形すると、こんな式を得ることができます。

log231+712

ここで、log2の後に来る数を1以上2未満に揃えておきましょう。こうすると、値が0以上1未満となり都合がよいです。
log25の近似と合わせると、こうなります。

log232712
log25413=412

これを使うと、こんなことができます。

2012=1
21122(32×54)=1615
2212(32)22=98
23123254=65
241254
2512232=43
2612=(2312)23625
271232
2812254=85
29122(3254)=53
210122(32)2=169
2111232×54=158
21212=2

1,98,54,43,32,53,158,2といったおなじみの有理数が出てくるのが面白いですね。

ところでこれを見て疑問に思った人もいることでしょう。

1以上2以下で分母が4以下の分数のうち、74だけ抜けているのはなぜだろう? これもうまく近似できるだろうか?」

このためには、log274の近似が必要です。しかし、実際に計算すると

log274=9.6812

となり、912に近似するにも1012に近似するにも遠すぎることがわかります。

さあ、12を飛び出して、二進対数の世界の深淵を覗いてみましょう。

7について考える

log274を近似するためには、分母を31まで増やす必要があります。

分母を31にすると、

log232=18.13311831
log254=9.97311031
log274=25.02312531

と近似できます。もちろん、12のときに近似した「おなじみの有理数」たち

1,98,54,43,32,53,158,2 

も分母が31の分数で近似することができ、

2031,2531,21031,21331,21831,22331,22831,23131

と表せます。

分子が5ずつ増える箇所と3ずつ増える箇所があるのが特徴的ですね。

また、log274>2531という不等式を使うと、

1792=1024×74>210+2531>210.8=25.4

と評価することもできます。

そして、プログラマの皆さんに朗報があります。分母を12で近似すると

log210241000=log2128125=log22(54)31412×3=0

となってしまいますが、分母を31にすると

log210241000=log2128125=log22(54)311031×3=131

となり、10001024を区別することができます!!!

11以上の素数

11以上の素数については、単純に分母を増やせばいいというものではなく、素数ごとに最適な分母があります。そのため、「これを使えば近似できる」とは一概には言えません。いくつか近似の例を示します。

log21181124
log2138710
log21716112
log21916312
log223161121

12やその倍数である24が見られるので、やはり12は有能なのかもしれませんね。

ほかの観点

今回は表現できる素数を増やすという観点で見ましたが、10001024のように区別できる数を増やすという観点で見ると、53が分母として優位に立ちます。

分母を53にすると、31のときには区別できなかった8081が区別できるようになります。また、10001024の違いももちろん区別できます。

また、

log232=31.0053
log254=17.0653
log274=42.7853
log2118=24.3453

と、素数35に関する近似が極めて良いため、7以降の素数が不要な場合は分母として53を使用するのが良いのかもしれません。

最後に

12にまつわる面白い近似式を紹介して終わりにしようと思います。

21+3121+312
21+4121+412
21+5121+512
21+6121+612

ネタばらし

実は、二進対数の有理数近似は音楽理論の一部です。最初に紹介した12とは単に、1オクターブの中にある半音の数のことです。むしろこのような性質があるからこそ、1オクターブは12半音になったのです。

「じゃあ、オクターブを31個や53個に分割してもいいの?」と思った方へ
ようこそ微分音の世界へ。「31平均律」「53 平均律」で検索して、新たな音楽の世界へ旅立ちましょう!

謝辞

査読くださった私のラマヌジャンこと みゆ@ますらば 様に感謝致します。

投稿日:2022331
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  2. $ 3 $について考える
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