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大学数学基礎解説
文献あり

軌道空間 C^n/S_n が C^n に同相であることの証明

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以下の証明の大まかな方針は、参考文献[1]で紹介されていた参考文献[2]での議論に沿ったものです。

Cnの各元xに対し、成分入れ替えによってn次対称群Snを作用させることを考える。軌道空間Cn/SnCnに同相であることを示せ。

題意の作用のもとでのx=(x1,,xn)Cnの軌道をx=x1,,xnと書くことにし、写像xxπとおく。Cn/Snπを等化写像とする商空間である。ここで、

Cn/Sn上の距離distを次のように定めることができる:
dist(x1,,xn,y1,,yn):=minpSnmaxj|xjyp(j)|

well-definedness(値が代表元の取り方に依らないことと、min,maxが存在すること)、正定値性、および対称性は明らか。あとは三角不等式の成立を示せばよい。x,y,zCn/Sn(x=(x1,,xn),y=(y1,,yn),z=(z1,,zn))とする。このとき、distの定義式のminを達成する permutationqSnがとれて
dist(x,y)=maxj|xjyq(j)|
が成り立つ。よって
dist(x,z)=minpmaxj|xjxp(j)|(dist の定義)minp{maxj|xjyq(j)|+maxj|yq(j)zp(j)|}(max の三角不等式)=dist(x,y)+minpmaxj|yq(j)zp(j)|(q の定め方)=dist(x,y)+dist(y,z)(dist の定義)
がいえた。

Cn/Snの位相をOとおき、距離distによりCn/Snに定まる位相をOdとおくと、

O=Odである。

OOdであること:
UO,ξUとする。目的の包含を示すには、ξを中心とする或る開球 w.r.t.distUに包まれることを示せばよい。いまξCn/Snだからξ=π(x)(x=(x1,,xn)Cn)である。ここでxCnの開集合π1(U)の元だから、Cnの普通のノルムをと書くことにすれば
ε>0[Uε(x)π1(U)]
である。そこでε:=1nεとおく。ηCn/Sn,dist(ξ,η)<εとする。distの定義式のminを達成する permutation がとれることから
y=(y1,,yn)π1(η)[dist(ξ,η)=maxj|xjyj|]
である。このとき
xynmaxj|xjyj|( の性質)=ndist(ξ,η)(y のとり方)<nε(η のとり方)=ε(ε の定義)
である。よってyUε(x)π1(U)、ゆえにη=π(y)π(π1(U))Uである。よって、ξ中心の開球Uεdist(ξ)Uに包まれることがいえた。

OdOであること:
Oπが連続となるような最も細かい位相だから、目的の包含を示すにはπOdに関し連続であることを示せばよい。x=(x1,,xn)Cn,ε>0とする。πの点xでの連続性をいうために、δ>0[π(Uδ(x))Uεdist(π(x))]を示す。そこでδ:=εとおく。x=(x1,,xn)Uδ(x)とすると
maxj|xjxj|xx<δ
だから
dist(x,x)=minpmaxj|xjxp(j)|<δ=ε
よってπ(x)Uεdist(π(x))である。したがってπ(Uδ(x))Uεdist(π(x))がいえた。

以上でO=Odが示せた。

Cn/SnからCnへの同相写像を構成する。そのために、まず写像σ:CnCnを次のように定める:
x=(x1,,xn)(σ1(x),,σn(x))
ただしσj(j{1,,n})は次数jの基本対称式である (e.g. σ2(a,b,c)=ab+bc+ca)。σは明らかに連続である。また、

σは全射である。

α=(α1,,αn)Cnとする。代数学の基本定理より、多項式
zn+j=1n(1)jαjznj
C上に重複度を込めてちょうどn個の根(x1,,xn)を持つ。このとき、根と係数の関係よりσ(x1,,xn)=(α1,,αn)である。したがってσの全射性がいえた。

σ:CnCnが連続全射であることがいえたから、商空間の普遍性より、σ=σ~πをみたす連続全単射σ~:Cn/SnCnが存在する。逆写像をτ:=σ~1とおく。ここで、各α=(α1,,αn)Cnに対し、多項式
zn+j=1n(1)jαjznj
の因数分解は
(zζ1)μ1(zζk)μk(ζiζj if ij)
と表せるが、τ=σ~1は明らかにαを軌道ζ1,,ζ1μ1times,,ζk,,ζkμktimesに対応付ける写像である。さて、σ~Cn/SnCnの間の同相写像であることを示すには次をいえばよい。すなわち、

τは連続である。

τの連続性をいうには、多項式の零点が係数に対して連続的に変化するという事実を用いる。その証明には Rouché の定理を用いる。正確には以下の通りである。

α=(α1,,αn)Cnとする。ε>0とする。τの点αでの連続性をいうために、
δ>0αCn[αα<δdist(τ(α),τ(α))<ε]
を示す。ここで、Pα(z)αを係数とするモニック多項式、すなわち
Pα(z):=zn+j=1n(1)jαjznj
と定める。因数分解は
(zζ1)μ1(zζk)μk(ζiζj if ij)
と表せる。ここで、或る0<ρ<εがとれて、中心ζi半径ρの円周CiC(i{1,,k})らが pairwise disjoint であるようにできる。Q:=i=1kCiとおく。Ciらの定め方から
m>0zQ[|Pα(z)|>m]
である。ここでR:=max{1,maxzQ|z|},δ:=mnRn1(>0)とおくと、各αCnwithαα<δzQに対し
|Pα(z)Pα(z)|=|j=1n(1)j(αjαj)znj|(ただし Pα は α を係数とするモニック多項式)j=1n|αjαj||z|nj(三角不等式)ααnRn1(の性質、z のとり方)<δnRn1(αのとり方)=m(δ の定義)
が成り立つ。このような各αに対し、Rouché の定理より、各円周Ci(i{1,,k})に囲まれた領域上で多項式Pα,Pαは重複度を込めて同じ個数の零点を持つ。また、degPα=n=degPαより、Pαはこれら以外の零点を持たない。したがってdist(τ(α),τ(α))<εである。よってτの連続性がいえた。

したがってσ~Cn/SnCnの間の同相写像であることが示せた。

参考文献

投稿日:202243
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