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Kroneckerの稠密定理と1の累乗根(1:Kroneckerの稠密定理)

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Kroneckerの稠密定理とは

「Kroneckerの稠密定理と1の累乗根」という題となっているのでまずKroneckerの稠密定理について解説する。

Kroneckerの稠密定理

$\alpha$を無理数とし、$0\leq a< b\leq 1$を満たす任意の区間$(a,b)$に対して$$\{ n\alpha \} \in (a,b)$$を満たす自然数$n$が存在する。ただし、$\{ x\}$$x$の小数部分を表す。

言い換えれば、「無理数の自然数倍の小数部分による集合は、区間$(0,1)$を埋め尽くす」ということになる。

定理に関する問題

 一例を示してみよう。これは私が自ら運営する数学サークルのメンバーに出題した問題の一部で、それ自体の難易度は高くない。

Kroneckerの稠密定理に関する問題

集合$A$$A=\{ m\sqrt{2}|\ m\in\mathbb{N}\}$と定義する。
(1) 自然数$x$が平方数でないならば$\sqrt{x}$は無理数となることを示せ。
(2) 集合$A$のどの異なる2つの要素も小数部分が異なることを示せ。

(1)は数学AやⅡで扱うような簡単な問題。

$\sqrt{x}$を有理数と仮定して、自然数$p,q$を用いて
$\sqrt{x}=\cfrac{p}{q}$と表せるとする。このとき、$q^2x=p^2$となり、自然数$x$がこの等式を満たすためには$x$の素因数がすべて偶数であることが必要。しかし、$x$は平方数でないのでこの必要条件を満たさず矛盾。よって題意は示された。

厳密には素因数がすべて偶数であることはこの場合必要十分条件であるが、反証をするならばこれで問題ない。
 (2)も数学Ⅱで扱う定番問題のようなものだが、題材としてKroneckerの稠密定理と関わっている。

2は平方数ではないので、(1)より$\sqrt{2}$は無理数。したがって集合$A$の異なる要素$a\sqrt{2},b\sqrt{2}$に対して$(a-b)\sqrt{2}$も無理数となり、$(a-b)\sqrt{2}\not \in \mathbb{N}$なので、題意は示された。

これによって、無理数の自然数倍の集合の異なる要素の小数部分は異なるということは言えたが、区間を埋め尽くすことができるかは示せていない。しかしそうであろうという予測をつけることはできる。

定理の証明

 それではKroneckerの稠密定理の証明に入ろう。例で示した「無理数の自然数倍ばそれぞれ異なる」という事実を前提に使っていて、証明では鳩ノ巣原理を利用している。鳩ノ巣原理も興味深いテーマなので、そのうち扱ってみたいと思っている。

$\alpha$を無理数として、区間$[0,1]$$N$等分した区間$I_1,I_2,...,I_N$を考える。ここで、無理数の自然数倍の小数部分はそれぞれ異なるので、$\{ \alpha\} ,\{ 2\alpha \},...,\{ (N+1)\alpha\}$の小数部分はそれぞれ異なり、鳩ノ巣原理より同じ区間に属する2つが存在する。これを$\{ j\alpha\} ,\{k\alpha\}$とする。ただし、$j<k$である。
(i) $\{ j\alpha\} <\{k\alpha\}$のとき、$\{ (k-j)\alpha\} =\{ k\alpha\} -\{ j\alpha\} <\cfrac{1}{N}$であるので、$\{ l(k-j)\alpha \} (l=1,2,3,...)$は十分狭い間隔で均等に散らばり、区間$(a,b)$よりその幅が小さくなるほど十分大きい$N$をとれば、区間内に$\{ n\alpha \} \in (a,b)$を満たす自然数$n$が存在する。
(ii) $\{ j\alpha\} >\{k\alpha\}$のときも同様に示せばよい。

このようにKroneckerの稠密定理が証明される。証明過程も大事だが、この事実と、それをどう使うかもとても重要である。ここから1の累乗根について話すこともできるが、次回は少し寄り道してみる。

投稿日:2020118

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投稿者

数学の研究(主にランダムウォークと行動経済学について)をしている高校生です。高校数学からでも数学の楽しさを伝えたいと思っています。

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