ヤコビの三重積という公式を最近知ったので導出を書いてみます。ただ何せ浅学ですので導出の流れを書き留めた程度のものだと思っていてください。(厳密性は分かりません...)
$|q|<1,|z|<1$のとき
$$
\begin {aligned}
\sum_{n \in \mathbb Z}q^{n^2}z^n&=\prod _{n=1}^\infty (1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})
\end {aligned}
$$
(無限和)=(無限積)の形をしていて面白いと思います。
証明に使う関数をいくつか定義します。
$$ \begin {aligned} L(q;z)&=L(z)=\sum_{n \in \mathbb Z}q^{n^2}z^n\\ R(q;z)&=R(z)=\prod _{n=1}^\infty (1-q^{2n})(1+q^{2n-1}z)(1+q^{2n-1}z^{-1})\\ F(q;z)&=F(q)=L(q;z)/R(q;z) \end {aligned} $$
示したい主張は$L(q;z)=R(q;z)$,要するに$F(q;z)=1$です。
以下を順に示していきます。
代入します。はい。
$L(z)$と$R(z)$のローラン展開の係数を比較します。
$F(q)=F(q^4)=F(0)=1$を示します。
$qzR(q^2z)=R(z)$を示します。
$$
\begin {aligned}
qzR(q^2z)&=qz\prod _{n=1}^\infty \left (1-q^{2n}\right )\left (1+q^{2n-1}(q^2z)\right )\left (1+q^{2n-1}(q^2z)^{-1}\right )\quad (定義に代入)\\
&=qz\prod _{n=1}^\infty (1-q^{2n})\textcolor {blue}{(1+q^{2n+1}z)}\textcolor {green}{(1+q^{2n-3}z^{-1})}\\
&=\frac {qz\textcolor {green}{(1+q^{-1}z^{-1})}}{\textcolor {blue}{1+qz}}\prod _{n=1}^\infty (1-q^{2n})\textcolor {blue}{(1+q^{2n-1}z)}\textcolor {green}{(1+q^{2n-1}z^{-1})}\quad (\textcolor {blue}{青},\textcolor {green}{緑}のところを調整)\\
&=R(z)\quad (係数を整理。無限積の部分は定義。)
\end {aligned}
$$
$F(q;z)$がzによらないことを示します。
$R(z)$のローラン展開を
$$
\sum_{n \in \mathbb Z}a_nz^n
$$
としましょう。Step.1で示した式より
$$
\begin {aligned}
\sum_{n \in \mathbb Z}a_nz^n&=qz\sum_{n \in \mathbb Z}a_n(q^2z)^n\\
&=\sum_{n \in \mathbb Z}a_{n}q^{2n+1}z^{n+1}\\
&=\sum_{n \in \mathbb Z}a_{n-1}q^{2n-1}z^n\quad (n+1だったものをnに置き換え)
\end {aligned}
$$
両辺の$x^m$の係数を比較すると
$$
a_m=q^{2m-1}a_{m-1}
$$
という漸化式が出てきます。これを解いて
$a_m=q^{m^2}a_0 $
が分かります。$a_2=q^3a_1=q^4a_0$といった具合です。$a_{-m}=a_m$となっていることからも妥当性が確認できます。
従って
$$
\begin {aligned}
R(z)=\sum_{n \in \mathbb Z}a_0q^{n^2}z^n
&=a_0L(z)
\end {aligned}
$$
が分かり、$a_0$は$z$によりませんからStep.2が完了しました。
$F(q)$が$q$によらず1であることを示します。$z$によらないことは既にStep.2で示しました。
そのために、まず$F(q)=F(q^4)$を以下で示します。
$$
\begin {aligned}
L(q;i)&=\sum_{n \in \mathbb Z}q^{n^2}i^n\\
&=\sum_{n \in 2\mathbb Z}q^{n^2}i^n\quad (奇数項目は正負で打ち消しあう)\\
&=\sum_{n \in \mathbb Z}q^{4n^2}(-1)^n\\
&=L(q^4;-1)
\end {aligned}
$$
$$
\begin {aligned}
R(q;i)&=\prod _{n=1}^\infty\textcolor {blue}{(1-q^{2n})}\textcolor {green}{(1+q^{2n-1}i)(1-q^{2n-1}i)}\\
&=\prod _{n=1}^\infty \textcolor {blue}{(1-q^{4n})(1-q^{4n-2})}\textcolor {green}{(1+q^{4n-2})}\quad \left (4n-2,4nは全ての正の偶数を走る\right )\\
&=\prod _{n=1}^\infty \textcolor {red}{(1-q^{4n})}\textcolor {purple}{(1-q^{4n-2})(1+q^{4n-2})}\\
&=\prod _{n=1}^\infty \textcolor {red}{(1-q^{8n})(1-q^{8n-4})}\textcolor{purple}{(1-q^{8n-4})}\quad (8n-4,8nは全ての正の4の倍数を走る)\\
&=R(q^4;-1)
\end {aligned}
$$
であるから、
$$
\begin {aligned}
F(q)=F(q;i)=F(q^4;-1)=F(q^4)
\end {aligned}
$$
です。従ってこれを繰り返し適用して
$$
\begin {aligned}
F(q)=F(q^{4^n})&\overset{n\to \infty }=F(0)=1
\end {aligned}
$$
これにより、ヤコビの三重積が示されました。$\boxed{}$