筆者が初学時,$\varepsilon$-$\delta$論法をどのように噛み砕いていたか紹介する掌編です.
早速ですが,関数$f:\mathbb{R}\rightarrow \mathbb{R}$と実数$a,\alpha$について
$$\lim_{x \to a}f(x)=\alpha$$
であるとは,次のような定義が標準的には書かれています.
任意の正数$\varepsilon$に対して正数$\delta$が存在し,
$|x-a|<\delta$なる任意の実数$x$について$|f(x)-\alpha|<\varepsilon$.
上記の定義を見たら次のように脳内補完していました.
任意の正数$\varepsilon$に対して正数$\delta(\varepsilon)$が存在して,
$|x-a|<$$\delta(\varepsilon)$なる任意の実数$x$について$|f(x)-\alpha|<\varepsilon$.
もっと言えば次のように置き換えられます.
次の条件を満たす関数$\delta: \mathbb{R}_{>0}\rightarrow \mathbb{R}_{>0}$が存在する.
「$|x-a|<\delta(\varepsilon)$なる任意の実数$x$について$|f(x)-\alpha|<\varepsilon$.ただし,$\varepsilon$は任意の正数.」
そういう関数$\delta$を$1$つでも見つければよいのだと思えば気持ちが楽になる人もきっといるはず……! 後で関数解析的な捉え方にも通じると思います(cf. Lebesgueの収束定理).
注) 関数$\delta$はその取り方に複数の可能性があり得ます.講義で示される解答例では上手く逆算して体裁が整えられているのでそれに戸惑うかもしれません.例えば筆者も一様収束する連続関数列の極限の連続性を示すときに突然出てくる$\frac{\varepsilon}{3}$に面食らった記憶があります.実は,$\varepsilon$を任意に持ってくることから始めて最終的に差を$\varepsilon$ではなく$g(\varepsilon)(>0)$で抑える形に着地してしまったとしても,$g(\varepsilon)\rightarrow 0\ (\varepsilon\rightarrow 0)$なら問題ありません(活用するのは慣れてからにしましょう).このことを示すのは読者への演習問題とします.