やあやあみなさん、こんにちは。$\mathbf{ぬるのぬ}$です。
ぬるのぬと名乗る事にしました。
どうですか?この名前、とても言いにくいですよね。
でもメリットがあって、ほぼ口を開けずに言えるんですね!
こう、上下の唇を少し離して...$\mathscr{nurununu}$
ほらね...
なんて、そんなことは置いておいて、
今回は
前回の記事
の続きで、調和総冪の極限についての議論を進めていきます。
前回の記事を見ていないひとはそれをみてきてね!
では早速いきましょう…
と、その前に…感謝と今回の流れについて話しておきます。
前回の記事についた
SunPillarさん
のコメントで$a_k=a$(定数関数)のときの無限冪乗、つまり
$$\underset{k=1}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} a=a^{a^{a^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
のときの特殊なaの値の存在と無限冪乗のグラフの書き方、更に前回出てきた2つの定数がオンライン整数列大辞典に載っていることも教えて頂きました。
特に前者(無限冪乗)に関連するトピックには$\mathbf{僕の本来の目的:総冪の研究} $に有益な情報がたくさんありそうだったので調べてきました。
すると、数列の総冪にも応用できそうな概念や手法がありかなり興味深かったので、
今回は既に明らかにされている $\mathbf{定数関数の総冪の極限=無限冪乗} $の性質や具体例から始め、本題である調和総冪の極限値を結論づけていきます。
無限冪乗っていうのが何か、皆さんのような方々なら既に知っているひとも多いであろうあの等式を使ってかる〜く説明します。
それは…
$\uparrow$これです。
やや厳密性には欠けますが、直感的な説明をいきましょう。
求める極限値を$I$とすると、
$$
\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}=I$$
より
$$
\sqrt{2}^I =I
$$
となり、$I=2$はこれを満たす。
っていうのがあります。
このように、$\mathbf{定数が無限に冪られまくっている}$(存在しない日本語)ものを無限冪乗とよびます。
次にこの無限冪乗の収束条件にいきます。
非自明を受け止める準備はいいですか?
$$ y=x^{x^{x^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}$$ としたとき、
$x$の値 | 収束値 | 収束 | 漸近の振舞 |
---|---|---|---|
$x \gt e^{\frac{1}{e}}$ | - | (収束しない) | $+\infty $への発散 |
$x = e^{\frac{1}{e}}$ | $y=e$ | 1つの値に定まる | 定まる値に収束 |
$1 \lt x \lt e^{\frac{1}{e}}$ | $1 \lt y \lt e$ | 2つの値に定まる | 定まる値のうち1つ目に漸近 |
$x=1$ | $y=1$ | 1つの値に定まる | ずっと$1$ |
$e^{-e} \lt x \lt 1 $ | $\frac{1}{e} \lt y \lt e$ | 1つの値に定まる | 定まる値に収束(振動) |
$x=e^{-e}$ | $y=\frac{1}{e}$ | 1つの値に定まる | 定まる値に収束(振動) |
$0 \lt x \lt e^{-e} $ | $0 \lt y_1 \lt \frac{1}{e} \lt y_2 \lt 1$ | 2つの値のサイクルになる | 2サイクルに収束 |
$ x \rightarrow 0^{+} $ | $y_1 \rightarrow 0,y_2 \rightarrow 1 $ | 2つの値のサイクルになる | 2サイクルに収束 |
ちなみに$e^{\frac{1}{e}} \approx 1.44467, e^{-e}\approx 0.065988$です。
$\mathbf{これは}$
$\mathbf{The \; strange\; properties\; of\; the\; infinite\; power\; tower}$
$\mathbf{からの引用です。詳しくはそちらをお読みください。}$
$1 \lt x \lt e^{\frac{1}{e}}$の$\mathbf{定まる値のうち1つ目に漸近}$というのは、
例えば先ほどの$
x=\sqrt{2}$の例だと
条件$\sqrt{2}^{I}=I$を満たす実数は$I=2$だけでなく$I=4$もありますが、
実際に漸近していくのは1つ目の$I=2$だ、っていう感じです。
(ちなみに$e^{\frac{1}{e}}$に関してはみんな大好き アジマティクス でも解説があります。)
更に追い打ち:なんと、$\mathbf{無限冪乗が収束する場合の収束値}$まで既に一般化されています。
しかも複素数範囲の$a \in \mathbb{C}$で!
それで、その公式がこれです。
ある定数$z \in \mathbb{C}$に対して,
無限冪乗$z^{z^{z^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}} $が収束する場合その極限値$c$は
$$
c = \frac{W(-\log{(z)})}{-\log{(z)}}
$$
と表すことができる.
ただし,$W(z)$は
LambertのW関数
で
$\log(z)$は複素対数関数の主値であるとする.
(LambertのW関数というのは、わかりやすく言うと$y=ze^{z}$の逆関数です。
つまり$W(ze^z)=z$です。)
この公式を利用すれば、$i^{i^{i^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}} $だって計算できます!(大体 $0.438283+0.3605924i$くらいの値になります)
Wolfram Alphaくんによる$i$の無限冪乗
さて、$a_k$が定数のときに利用できる武器を一通り観てきたところで本題である調和総冪極限について考えましょう。
$a_k$が定数のときの無限冪乗の結果の表をみた後に調和総冪極限を見てみると、大体予想が付きますかね?
結論からいうと、僕が前回調和総冪極限の定数と呼んだ
$$\underset{k=2}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{1}{k}=\frac{1}{2}^{\frac{1}{3}^{\frac{1}{4}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}=\mathcal{H}_{e\infty}
$$
は、1つの値に収束しません。
偶数項、奇数項でそれぞれ別の値に収束します。
そしてその値は前回の記事で計算した通り、
偶数項:$
0.6583655992663311881846549513080943690418...$
$\textcolor{lightgray}{OEIS}$
奇数項:$0.6903471261149643194673284384641894244398...$
$\textcolor{lightgray}{OEIS}$
になります。
これを説明していきましょう。
先の定数の場合の収束条件を踏まえて、
$0 \lt x \lt \frac{1}{16}\lt e^{-e}\lt \frac{1}{15} $であるので
$$\underset{k=16}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{1}{k}=\frac{1}{16}^{\frac{1}{17}^{\frac{1}{18}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
について考えることにします。
ここで、関数$y=\underset{k=16}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} x=^{\infty}x$をxy平面に図示すると、
$y=^{\infty}x$のグラフ(赤)
$\uparrow$このようになります。
このように、$x \;(\lt e^{-e})$が0に近づくにつれ2収束点の差は$\mathbf{大きくなって}$いきます。
よって、今回のような指数部分が段々小さくなっていくときでも1つではなく2つの値に定まります。
したがって、$$\underset{k=16}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{1}{k}=\frac{1}{16}^{\frac{1}{17}^{\frac{1}{18}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
は無限冪乗のときと同じく2つの値に収束します。
さらに
$$
\frac{1}{2}^{\frac{1}{3}^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{\frac{1}{15}}}}}}
$$
は当然1つの値であるから
以上より、
$$
\underset{k=2}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{1}{k}=\frac{1}{2}^{\frac{1}{3}^{\frac{1}{4}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
は2つの値に定まる。
というわけです。
$$ $$
というわけで、前回の疑問のうち最も重要なものであった収束先とその値について、大体解明しました。
調和総冪
$$
\underset{k=2}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{1}{k}=\frac{1}{2}^{\frac{1}{3}^{\frac{1}{4}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
の極限値は項数の偶奇により2つの値に定まり、
その値は
最後尾が$\frac{1}{偶数}$のとき$\mathcal{H}_{e\infty -even}\approx
0.658365599266331188184654951308094369042 $
最後尾が$\frac{1}{奇数}$のとき$\mathcal{H}_{e\infty -odd}\;\;\approx 0.690347126114964319467328438464189424434$
この場合だと項数が偶数のとき最後尾が$\frac{1}{奇数}$になってややこしいですね...
いい日本語が思いつきませんでした。
$ある晴れの篠突く昼下がり、\mathbf{ぬるのぬ}はこんなことに思索を巡らせていた。$
$「折角\mathcal{H}_{e\infty -even}と\mathcal{H}_{e\infty -odd}を定義したんだし、どうせなら使ってあげたいよな...」$
$そこで\mathbf{ぬるのぬ}は1つ、ある思い付きをしたのだ。$
$「総和の\alpha倍は結果を\alpha倍、総乗の\alpha倍は結果を\alpha^{n}倍する...」$
$「では総冪の\alpha倍は結果を^{n}\alpha=\underbrace{ a^{a^{\cdot^{\cdot^{\cdot^{a}}}}} }_{\text{高さ}n} 倍するのでは...?」$
$「調和総冪極限の記事だし、調和総冪極限に絡めてみようか。」$
$この\mathbf{ぬるのぬ}の種、つまりはこういうことになります。$
$$
\underset{k=2}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{\alpha}{k}=\frac{\alpha}{2}^{\frac{\alpha}{3}^{\frac{\alpha}{4}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}} \;\;\;\;\;\; (\alpha は 1 \lt \alpha \lt e^{\frac{1}{e}} の実数)
$$
は項数の偶奇で2つの値に収束し、それぞれの収束値は
$$^{\infty}\alpha \mathcal{H}_{e\infty -even}=\alpha^{\alpha^{\alpha^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\mathcal{H}_{e\infty -even}$$
$$^{\infty}\alpha \mathcal{H}_{e\infty -odd}=\alpha^{\alpha^{\alpha^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}\mathcal{H}_{e\infty -odd}$$
である。
では実験へいきましょう。
$\alpha=\sqrt{2}$は条件を満たしますね。
ということは$\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\sqrt{2}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}} =2$より
$$
\underset{k=2}{\overset{\infty}{\;\;\huge H^{\small 3}}} \frac{\sqrt{2}}{k}=\frac{\sqrt{2}}{2}^{\frac{\sqrt{2}}{3}^{\frac{\sqrt{2}}{4}^{\cdot^{\cdot^{\cdot}}}}}
$$
は$2\mathcal{H}_{e\infty -even}\approx 1.316731198$と
$2\mathcal{H}_{e\infty -odd}\approx 1.380694252$あたりに収束してほしいですね。
$n$ | $ 2\mathcal{H}_{en}$ |
---|---|
$34$ | $ 0.7968530732460665 $ |
$35$ | $0.8004862897196241$ |
$36$ | $ 0.7968663349445679$ |
$37$ | $ 0.8004757361974945 $ |
$\mathbf{いやならんのか~~~~~~~~~~~い}$
というわけで、またいつか。