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大学数学基礎解説
文献あり

赤雪江第1章のまとめノート作ってみた

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はじめに

今回から雪江明彦先生の「群論入門」のまとめノート的なアレを作っていきたいと思います(需要があるのかと言われてしまうと何とも言えませんが......)。本記事で扱う範疇を逸脱する証明は省略することにします。誤植などあればコメントやtwitterでご連絡頂けると幸いです。

集合と論理の基礎

集合Aの任意の元aに対し集合Bの元f(a)がただ一つに定まっているとき,fAからBへの写像という.

fが集合Aから集合Bへの写像なら, このことを f:ABと表す.

部分集合SA,TBに対し,f(S)={f(a)AaS},f1(T)={aAf(a)T} とおき,それぞれS, T逆像という.

一般に, 逆像は写像であるとは限らない.

A,Bを集合, f:ABを写像とする. 任意のa,aAに対し, f(a)=f(a)a=aという条件が成り立つとき, f単射であるという. また,任意のbBに対し, f(a)=bとなるaAが存在するとき,f全射であるという. 写像が単射かつ全射なら, 全単射であるという.

集合Aから集合Bへの全単射写像があるとき, 集合Aと集合B一対一に対応するという. また, ABなら,Aの元をBの元とみなす写像のことを包含写像という.

  1. 集合AからAへの写像fで, 全てのaAに対しf(a)=aとなるものを恒等写像といい, idAと書く.

  2. f:AB,g:BCが写像なら,AからCへの写像gfgf(a)=g(f(a))と定義し,f,g合成という.

  3. A,Bが集合, f:ABが全単射写像であるとする.このとき, 任意のbBに対してb=f(a)となるaAが常にただ一つ存在する. そこでbBに対して, a=g(b)となるaAを対応させ, BからAへの写像gが一意に定まる. この写像をfの逆写像といい,g=f1と表す.

f1逆写像にも逆像にも用いる用語であるため, どちらの意味で使うのか注意する必要がある.

A,Bが有限集合で|A|=|B|なら,以下が成り立つ.

  1. ABA=B

  2. f:ABが写像なら, fが単射であることと全射であることは同値である. つまり, このときfは全単射になる.

  1. B=A(BA)A(BA)=なので, BA=, つまりB=Aである.

  2. fを単射とする.
    このとき |f(A)|=|B|=|A| である.
    したがって, fが写像であることからf(A)Bなので,(1)の結果より, f(A)=Bとなり, fは全射である.
    逆にfを全射とする.
    任意のbBに対し,$a_b \in A, , f(a_b) = ba_b.b, b' \in B, , b \neq b', , a_b \neq a_{b'}b = f(a_b) = f(a_{b'}) = b',.b \neq b'\Rightarrow a_b \neq a_{b'}\left{a_b,\vert, b \in B\right} \subset A\left| B \right| = \left| A \right| $ に等しい.
    したがって, (1)より, $\left{a_b,\vert, b \in B\right} = A$.
    これは, 任意のbBに対し,f1(b)が1つの元よりなることを意味している. ゆえに,fが単射であることと全射であることは同値であるから,fは全単射である.

well-definedと自然な対象

本節で紹介する概念はイメージしにくいので、実際に出てきた際に詳しく解説したいと思います。

Aという数学的対象からBという数学的対象を定義するとき,Aから複数定まるCという数学的対象を経由してBを定めるとする.
このとき, Bの定義がCによらない(つまり, Aにのみ依存する)ことを示してはじめてBの定義が確定する. このようなとき, この定義はwell-definedであるという.

Aを数学的対象とするとき, Aのみから,それ以外の情報を用いずに定義できる数学的対象をAにより自然に定まる対象であるという.

自然な対象という用語は, 正確には圏論の概念を用いて説明される.

Aを集合とするとき, Aの部分集合全体の集合はAにより自然に定まる.

選択公理とZornの補題

Λを集合とし, 各λΛに対し,集合Aλが与えられているとする. このようなとき,{Aλ}を, Λを 添字集合に持つ集合族という.

分かりやすい例で言えば、数列が挙げられる. この場合, Λ=Nになる.

Λを添字集合に持つ集合族{Aλ|λΛ}が与えられたとき, Λから和集合(Aλ|λΛ) への関数fのうちで,Λのどの元λに対しても f(λ)=fλAλとなるようなもの全体を集合族{Aλ|λΛ}直積といい, λΛAλと書く. また,各Aλ直積因子という.

つまり, 直積は定義の条件を満たす写像である.

xR{2x}の元は, f(x)=2xとなる写像f:RRのみである.

{Aλ|λΛ}のうち、空集合であるものが少なくとも1つ存在するならば, λΛAλ=である.

この例の逆が成り立つとしたものが後に述べる選択公理である.

{Xi}Iを添字集合とする集合族であるとき,X=iXi, Y=X×Iとし, 各iIに対してYiYの部分集合で, xXiにより(x,i)という形をした元全体よりなるものとする.このとき, Z=iYiを集合族{Xi}直和といい, iXiと書く.

ここで, YiXiと一対一に対応する. このことから, 直和は,Xiと一対一に対応する部分集合を含み,それらの交わりのない和になっている集合と考えることができる.

選択公理

{Aλ}λΛを添字集合とする空でない集合よりなる集合族とするとき, 直積λΛAλは空集合ではない.

本記事では選択公理を認めます.

Sを集合するとき, S上の関係とは, S×Sの部分集合のことである.RS×Sを関係とするとき,x,yS(x,y)R であるならば,x,yは関係Rがあるといい, そうでないとき, 関係Rがないという.

RS上の関係とするとき, x,ySに対して, x,yに関係RがあることをxRyと表すことがある.

集合X上の関係が次の(1)(3)の条件を満たす時に順序という. 以下,x,y,zXの元を表す.

  1. xx

  2. xy,yzxz

  3. xy,yxx=y

さらに, 任意のx,yXに対し
(4) xyまたはyxが成り立つ.

という条件が満たされるなら, 全順序という.
順序を持つ集合を順序集合, 全順序を持つ集合を全順序集合という.

はあくまで関係なのであって, 通常の不等号であるとは限らない.

集合X=R上でが通常の不等号なら, は全順序である.

  1. Xを順序集合, SXを部分集合とする.x0Xが任意のySに対しyx0という条件を満たすなら,x0S上界であるという.

  2. xXが順序に関して極大元であるとは,任意のyXに対しxyy=xが成り立つことである.

Zornの補題

Xは空でない順序集合で,Xの任意の全順序部分集合が上界を持つなら, Xは極大元を持つ

証明は省略しますがそのうち記事にしようと思ってます.

集合の濃度

正直、本節は触れなくても以降の内容に影響しないんですよね。それに演習問題にも関連したものはないです。もうここは本を見るとかして軽く理解するだけで大丈夫だと思います。
ということで省略させてください (懇願)。

...めんどくさいなんて思ってませんからね!!!

...なんて考えてた時期も私にはありました。フォロワーさんに青雪江で登場するとのご指摘を頂きましたので書きます。ちょっと待ってね

おわりに

お疲れさまでした。今回の内容は今後非常に大事になってくるので是非自分のものにしていきましょう!

私自身、Texはもちろん、記事を書くのも今回が初めてなので違和感等あったと思います。そこに関しては本当に申し訳ないです。...本当にたくさんの誤植がありました、ご指摘頂いた方々ありがとうございます。今後はより洗練された資料になるよう一層努力していく所存です。
ではでは~

参考文献

[1]
内田伏一, 集合と位相 補修新装版, 数学シリーズ, 裳華房, 2020
[2]
雪江明彦, 代数学1 群論入門, 日本評論社, 2010
投稿日:202255
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  1. はじめに
  2. 集合と論理の基礎
  3. well-definedと自然な対象
  4. 選択公理とZornの補題
  5. 集合の濃度
  6. おわりに
  7. 参考文献