3次元の回転変換をベクトルで記述する、ロドリゲスの回転公式を紹介します。なお、この内容は先日開催された 第3回すうがく徒のつどい の「四元数と回転」で話した内容の一部です。その際の 講演資料 には画像がありませんでしたが、今回は画像を作成しました。
以下、3次元ベクトル空間$\mathbb{R}^3$で考えます。ベクトル$\vec{x}$と$\vec{y}$の内積を$\langle\vec{x}|\vec{y}\rangle$と、外積を$\vec{x}\times\vec{y}$と書くことにします。
3次元空間のなかで、原点を通る回転軸の周りに回転角$\theta$だけ回転するという変換は、次のように記述できます。
大きさ$1$のベクトル$\vec{n}$があるとします。点$X$を$\vec{n}$の周りに角$\theta$だけ回転した点を$X'$とします。$X$の位置ベクトルを$\vec{x}$、$X'$の位置ベクトルを$\vec{x'}$とするとき、次が成り立ちます。
\begin{equation}
\vec{x'}=\cos\theta\vec{x}+(1-\cos\theta)\langle\vec{n}|\vec{x}\rangle\vec{n}+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x})
\end{equation}
$\vec{n}$は回転軸に沿う単位ベクトルです。$\vec{n}$の周りに角$\theta$だけ回転するという操作を図で示すと、次のようになります。
回転軸の周りの回転
ロドリゲスの回転公式は、回転後のベクトル$\vec{x'}$を、$\vec{x}$、$\vec{n}$、$\vec{n}\times\vec{x}$の3つのベクトルの和の形で記述しています。
以下、ロドリゲスの回転公式を証明します。
まず、$\vec{x}$を$\vec{n}$と平行な方向$\vec{x}_\parallel$と垂直な方向$\vec{x}_\perp$に分解します。
\begin{equation}
\vec{x}=\vec{x}_\parallel+\vec{x}_\perp
\end{equation}
このとき、$\vec{x}_\parallel=\langle\vec{n}|\vec{x}\rangle\vec{n}$となります。
$\vec{x'}$も同様に分解します。
\begin{equation}
\vec{x'}=\vec{x'}_\parallel+\vec{x'}_\perp
\end{equation}
このとき、点$X'$は点$X$を$\vec{n}$の周りに回転した点であることから、$\vec{x}$と$\vec{x'}$について、$\vec{n}$と平行な方向の成分は等しくなります。つまり$\vec{x'}_\parallel=\vec{x}_\parallel$です。
位置ベクトルの分解
よって、$\vec{x'}_\parallel$は$\vec{x}$と$\vec{n}$であらわせることが分かりました。次に、$\vec{x'}_\perp$を$\vec{x}$と$\vec{n}$であらわすことを考えます。
外積$\vec{n}\times\vec{x}_\perp$を考えます。外積の大きさは平行四辺形の面積でしたから、これは実は$\vec{n}\times\vec{x}$と等しいです。
$\vec{n}$と$\vec{x}_\perp$は直交していることから、次が成り立ちます。
\begin{equation}
|\vec{n}\times\vec{x}_\perp|=|\vec{n}||\vec{x}_\perp|\sin\frac{\pi}{2}=|\vec{n}||\vec{x}_\perp|=|\vec{x}_\perp|
\end{equation}
よって、$\vec{x}_\perp$、$\vec{x'}_\perp$、$\vec{n}\times\vec{x}_\perp$はすべて同じ大きさです。
外積ベクトル
$\vec{x'}_\perp$を$\vec{x}_\perp$方向と$\vec{n}\times\vec{x}_\perp$方向に分解します。
$\vec{x}_\perp$と$\vec{x'}_\perp$のなす角は$\theta$なので、次のようになります。
\begin{equation}
\vec{x'}_\perp=\cos\theta\vec{x}_\perp+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x}_\perp)
\end{equation}
ベクトルの分解
これで、$\vec{x'}_\perp$を$\vec{x}$と$\vec{n}$であらわすことができました。したがって、次が成り立ちます。
\begin{align}
\vec{x'} & =\vec{x'}_\parallel+\vec{x'}_\perp \\
& =\vec{x}_\parallel+\cos\theta\vec{x}_\perp+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x}_\perp) \\
& =\vec{x}_\parallel+\cos\theta(\vec{x}-\vec{x}_\parallel)+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x}) \\
& =\cos\theta\vec{x}+(1-\cos\theta)\vec{x}_\parallel+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x}) \\
& =\cos\theta\vec{x}+(1-\cos\theta)\langle\vec{n}|\vec{x}\rangle\vec{n}+\sin\theta(\vec{n}\times\vec{x})
\end{align}
以上でロドリゲスの回転公式が証明できました。