こんにちは ごててんです
準同型定理はwell-definedな同型を誘導する手続きなんだな~と感じたので記事にします
この記事の主役は次の定理です.(証明はしません)
$f:G \rightarrow H$が群準同型であるとき, 同型$G/\mathrm{Ker}(f) \cong \mathrm{Im}(f)$が対応$\overline{x} \mapsto f(x)$で与えられる.
加群の場合もほぼ同じです.
$u:M \rightarrow N$が$A$加群の準同型であるとき, $A$加群の同型$G/\mathrm{Ker}(u) \cong \mathrm{Im}(u)$が対応$\overline{x} \mapsto u(x)$で与えられる.
以下, $i$を虚数単位とします.
群準同型写像$f$を次のように定めます.
$f: \mathbb{Z} \rightarrow \{ $$ x \in \mathbb{C} $$|$$x^n-1=0$$ \} ; $$m \mapsto \zeta_n ^m$ ($\zeta_n = \exp(2\pi i/n)$とする. )
すると気づきます. 「これ周期$n$だ!!!!!!!」
周期が$n$なら, 定義域を$x\mod n$で考えることができる気がしてきます. そのアイデアを形にしてみましょう.
$g: \mathbb{Z}/n\mathbb{Z} \rightarrow \{ $$ x \in \mathbb{C} $$|$$x^n-1=0$$ \}$を$g( \overline{m})=f(m)$で定める.
well-defined警察「おい!大丈夫なのかそれは」
ぼく「ひい >_<」
怯むことはありません. well-definedであることを証明しましょう.
$\overline{x},\overline{y} \in \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$とする. $ \overline{x}=\overline{y}$のとき$f(x)=f(y)$であることを示せば, 代表元によらないことがわかる.
$ \overline{x}=\overline{y}$とすれば$x \equiv y \mod n$であるので $x-y=nz$($z$は整数)とかけ, $f(x)=\zeta_n^x=\exp(2x\pi i/n)=\exp(2(y+nz)\pi i/n)=\exp(2z\pi i+2y\pi i/n)=\exp(2y\pi i/n)=\zeta_n^y=f(y)$.
また全射(証明略)なのでこれは同型写像な気がします. 単射であることを示しましょう.
$\mathrm{Ker}(g)=\{\overline{0}\}$を示す. $g(\overline{m})=1$なら$\exp(2m\pi i/n)=1$であるので$m/n$は整数であり, $m$は$n$の倍数. よって$\overline{m}=\overline{0}$.
以上で, 準同型写像$f$から同型写像を導くことができました!!!!!
さて, この流れですが 「もったいない」です. 何がもったいないのか. それは準同型定理を使っていないからです!
準同型定理を使うために, 準同型の核を求めます.
$\textrm{Ker}(f)=n\mathbb{Z}$ な気がします. 実際そうです.
$m \in \textrm{Ker}(f) \Longleftrightarrow \exp(2m\pi i/n)=1 \Longleftrightarrow m/n $は整数 $\Longleftrightarrow$ $m$は$n$の倍数.
さて, 全射(証明略)なので$\textrm{Im}(f)=\{ $$ x \in \mathbb{C} $$|$$x^n-1=0$$ \}$であり準同型定理を適用すると, 同型 $g: \mathbb{Z}/n\mathbb{Z} \rightarrow \{ $$ x \in \mathbb{C} $$|$$x^n-1=0$$ \}$$;$$\overline{x} \mapsto f(m)$を得ます. 一瞬でここまでたどり着けました.
最初に行ったプロセスは,
というものでした. これを準同型定理を使うプロセスと照らし合わせてみます.
準同型定理は「周期に気づく作業」を「$\textrm{Ker}(f)$を求める」という作業に言い換えています.
そしてそれに応じた対応を与える, well-definedであることがすでにわかっている同型$G/\mathrm{Ker}(f) \cong \mathrm{Im}(f)$(準同型定理を証明する段階に組み込まれている)に核と像を当てはめるだけで一連の流れが終わってしまいます.
もっと言えば, 「単射になるように最小の周期を見つける」ことまで$\textrm{Ker}(f)$を求める段階でやっています.
複素数体上の多項式環$\mathbb{C}[X]$から複素数体の直積$\mathbb{C}^2$への写像を$t \in \mathbb{C}$を代入したものと微分した多項式に$t$を代入したものの組で定めます. ($f(X) \mapsto (f(t),f'(t))$) これは$\mathbb{C}$加群の準同型になります.($1$と対応する元が$(1,0)$であるため環準同型ではない)
徒手空拳で観察してみます. 「これ, $(X-t)^2$で割ってみればよくない?」と思えます(?)
準同型定理を通して観察してみます. 核を考えてみると, なんだか$((X-t)^2)$な気がしてきます. 実際そうです. これは$\alpha$が$f(X)$の重根であることと$f(\alpha)=f'(\alpha)=0$であることが同値であることからわかります. また, この写像は$a(X-t)+b \mapsto (b,a)$であることから全射もわかります.
以上をまとめて準同型定理を適用すると, dual numberによる環との$\mathbb{C}$加群の同型$\mathbb{C}[X]/((X-t)^2) \cong \mathbb{C}^2$がわかります. 環同型ではないので注意です.
定義域を割って「小さく」するにはwell-definedであるかの確認が必要となる場合が多々あります. しかしながら, 群などの対象を考えるときは準同型定理という手続きを利用することがその確認をせずに, すでに確立されたものによって見通しよく同型まで見えてしまうというのは群の良い部分だと感じました.
ここまで読んでいただきありがとうございました~~~~~~