長い数式が現れます。横幅の心もとないデバイスで本記事にアクセスした方は、どうにか数式を横スクロールする方法を探してください。ちなみに私のスマホだと横フリックで行けました。
イントロダクションは長めにすればよいと聞きました
前回に引き続き、本記事でも自作問題を扱おうと思う。
タイトルの通り、今回は円と楕円とレムニスケートが登場する図形問題である。だが、円と楕円はともかく、「レムニスケートって何?」という読者もいらっしゃるだろう。何か難しそうな響きの単語であるが、一応知らない読者のために簡単な説明をする。知っていたら読み飛ばしていただいて構わない。
【レムニスケートについて】
どう見ても無限大マーク(∞)
レムニスケートは、正の実数を用いてという方程式で表される4次曲線である(上の図はの場合)。 2点を、レムニスケートの焦点と呼ぶ(上の図の橙色の点)。なお、2つの焦点からの距離の積がになる点の軌跡としても、同じレムニスケートを描くことができる。(参考:
Wikipedia
) 方程式の左辺を見てみると、円の方程式の左辺と何となく似ている。それ故か、レムニスケートは円と類似した性質をもつ。例えば、半径の円の周長はと表され、それに内接するレムニスケートの周長はと表される。円の周を65537等分する点が作図できるのと同様に、レムニスケートの周を65537等分する点が作図できる(らしい、証明は読めていない)。また、「中心からの距離が一定」であった円が幾何とよく親和したように、「焦点からの距離の積が一定」という性質も、レムニスケートの幾何学的な応用可能性を示唆している。
それにもかかわらず、レムニスケートを題材にした幾何は非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に少ない。先述の通り、円の出てくる幾何はあまりにも多いのに。ほんの少し方程式が難解になっただけでこの仕打ち。どう考えても不公平だ。
……とレムニスケート氏から悲痛な相談を受けた私は、彼の無念を晴らすべく、レムニスケートが持つ様々な性質を調べた。既知の性質が殆ど無く、自力で試行錯誤を繰り返し苦節1週間強。結果、本記事の最後に記す性質に辿り着けたので、それを活かした自作問題を紹介する。
問題紹介前にブラウザバックした人がいると聞きました
楕円とレムニスケートはともに2点を焦点とし、互いに接している。これらの中心をとし、上のに関してと同じ側に2点をとると、四角形は円に内接した。から引いたの接線ととの交点をとしたとき、ならばの大きさはいくらか。
見た目が綺麗(感じ方には個人差があります)
本記事では(分量削減のため)座標計算で上の問題を解いていくが、座標に頼らない(幾何学的アプローチによる)証明も可能であることを申し添えておく。というかそもそも幾何学的アプローチが無ければ、このような問題は作れなかったであろう。幾何万歳。
すぐ下に解答があるので、自力で考えたい方はここでスクロールをストップするように。
解答は行間に高密度の議論を詰め込むべきだと聞きました
レム睡眠(レムニスケートを考察しながら取る睡眠のこと)
となるように直交座標平面を定める。このとき、の式は
と表せる。
の中心の座標をとおくと、の式は
である。から引いたの接線をとすると、その式はとなる(ここまで証明略)。
いま、以下の4点を考える。
各々の式に代入して計算することにより、2点はおよび上に、2点はおよび上に存在することが示せる。よって、と、と、と、とはそれぞれ一致する(座標の大小関係を考慮した))。
以下のような3つの式変形を考える。なお、はの逆関数(逆正接関数)である。逆正接関数の加法定理については
Wikipedia
の「Arctangent 加法定理」の項を参照されたい。
ここで、
とおくと、上記の式変形を統合してを得る。本当に分量を削減できているか?
式の形から明らかに、は直線と軸のなす角の大きさであり、は直線と軸のなす角の大きさである。ゆえには直線と直線のなす角の大きさであり、すなわちその絶対値はである。
同様に、は直線と直線のなす角の大きさであり、すなわちその絶対値はである。したがって、を用いれば、が導かれる(図より)。
本問ではであるため、が答えとなる。
あとがきには何を書いても良いと聞きました
やはり幾何の問題を無理に座標で解こうとするのは良くない。計り知れないほどの高エネルギーリン酸結合を犠牲にした。
さて、問題図のような状況においてつねにが成立することは、かなり非自明であるように感じる。自身の具有する特別な性質に、天国のレムニスケート氏も満足してくれることだろう。
とはいえ、こういった性質には大抵先行研究が存在するものなので、ご存知の方が居ればコメントなどでご教示をねがう。万が一、いや万が、この性質を最初に発見したのが私であることを否定されないならば、親しみを込めて『レムちゃんの定理 ~ Il teorema inutile in lemniscata ~ 』と命名したい。言い換えれば、私のネーミングセンスを許せない人は何としてでも先行研究を探し出せということになる。頑張れ。
どうしても幾何学的に解きたい方向けのヒント。本問はから引いたの接線の交点が、に関してと対称な位置に存在することを示せば十分である。