8

オリジナル図形問題 with 円 and 楕円 and レムニスケート

465
0
 長い数式が現れます。横幅の心もとないデバイスで本記事にアクセスした方は、どうにか数式を横スクロールする方法を探してください。ちなみに私のスマホだと横フリックで行けました。


イントロダクションは長めにすればよいと聞きました

 前回に引き続き、本記事でも自作問題を扱おうと思う。
 タイトルの通り、今回は楕円レムニスケートが登場する図形問題である。だが、円と楕円はともかく、「レムニスケートって何?」という読者もいらっしゃるだろう。何か難しそうな響きの単語であるが、一応知らない読者のために簡単な説明をする。知っていたら読み飛ばしていただいて構わない。
【レムニスケートについて】
どう見ても無限大マーク(∞) どう見ても無限大マーク(∞)
 レムニスケートは、正の実数aを用いて
(x2+y2)2=2a(x2y2)という方程式で表される4次曲線である(上の図はa=1の場合)。
 2点(±a,0)を、レムニスケートの焦点と呼ぶ(上の図の橙色の点)。なお、2つの焦点(±a,0)からの距離の積がaになる点の軌跡としても、同じレムニスケートを描くことができる。(参考: Wikipedia )
 方程式の左辺を見てみると、円の方程式x2+y2=r2の左辺と何となく似ている。それ故か、レムニスケートは円と類似した性質をもつ。例えば、半径1の円の周長は40111x2dx(=2π)と表され、それに内接するレムニスケートの周長は40111x4dx(=5.24411509)と表される。円の周を65537等分する点が作図できるのと同様に、レムニスケートの周を65537等分する点が作図できる(らしい、証明は読めていない)。また、「中心からの距離が一定」であった円が幾何とよく親和したように、「焦点からの距離の積が一定」という性質も、レムニスケートの幾何学的な応用可能性を示唆している。
 それにもかかわらず、レムニスケートを題材にした幾何は非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に非常に少ない。先述の通り、円の出てくる幾何はあまりにも多いのに。ほんの少し方程式が難解になっただけでこの仕打ち。どう考えても不公平だ。
 ……とレムニスケート氏から悲痛な相談を受けた私は、彼の無念を晴らすべく、レムニスケートが持つ様々な性質を調べた。既知の性質が殆ど無く、自力で試行錯誤を繰り返し苦節1週間強。結果、本記事の最後に記す性質に辿り着けたので、それを活かした自作問題を紹介する。


問題紹介前にブラウザバックした人がいると聞きました

 楕円ϵとレムニスケートλはともに2点F,Fを焦点とし、互いに接している。これらの中心をOとし、λ上のOに関してFと同じ側に2点A,Bをとると、四角形OAFBは円γに内接した。Fから引いたγの接線とϵとの交点をC,Dとしたとき、CFD=41ならばAFBの大きさはいくらか。

見た目が綺麗(感じ方には個人差があります) 見た目が綺麗(感じ方には個人差があります)


 本記事では(分量削減のため)座標計算で上の問題を解いていくが、座標に頼らない(幾何学的アプローチによる)証明も可能であることを申し添えておく。というかそもそも幾何学的アプローチが無ければ、このような問題は作れなかったであろう。幾何万歳。
 すぐ下に解答があるので、自力で考えたい方はここでスクロールをストップするように。






解答は行間に高密度の議論を詰め込むべきだと聞きました

レム睡眠(レムニスケートを考察しながら取る睡眠のこと) レム睡眠(レムニスケートを考察しながら取る睡眠のこと)


 F(1,0),F(1,0)となるようにxy直交座標平面を定める。このとき、ϵ,λの式は
ϵ:x2+2y2=2,λ:(x2+y2)2=2(x2y2)
と表せる。
 γの中心の座標を(12,tan(a)2)とおくと(0<a<45)γの式は
γ:(2x1)2+(2ytan(a))2=1cos2(a)
である。Fから引いたγの接線をlとすると、その式はl:y=x1tan(a)となる(ここまで証明略)。


 いま、以下の4点A,B,C,Dを考える。
{A(cos(2a)(2cos2(a)2sin(a))2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+1,cos(2a)(2sin(a)2)cos(a)2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+1)B(cos(2a)(2cos2(a)+2sin(a))2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+1,cos(2a)(2sin(a)+2)cos(a)2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+1)C(2cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a),(sin(a)2)cos(a)1+cos2(a))D(2cos2(a)2sin(a)1+cos2(a),(sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a))
 各々の式に代入して計算することにより、2点A,Bλおよびγ上に、2点C,Dϵおよびl上に存在することが示せる。よって、AABBCCDDはそれぞれ一致する(x座標の大小関係を考慮した))。


 以下のような3つの式変形を考える。なお、tan1tanの逆関数(逆正接関数)である。逆正接関数の加法定理については Wikipedia の「Arctangent 加法定理」の項を参照されたい。

42cos(a)8cos2(a)1=2(22cos(a))1(22cos(a))2=tan(2tan1(22cos(a)))42cos(a)8cos2(a)1=(sin(a)2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a)(1)(sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)2sin(a)1+cos2(a)(1)1+(sin(a)2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a)(1)(sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)2sin(a)1+cos2(a)(1)=tan(tan1((sin(a)2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a)(1))tan1((sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)2sin(a)1+cos2(a)(1)))tan1(22cos(a))=tan1(cos(2a)(2sin(a)+2)cos(a)2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)+2sin(a))2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+11cos(2a)(2sin(a)2)cos(a)2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)2sin(a))2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+111+cos(2a)(2sin(a)+2)cos(a)2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)+2sin(a))2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+11cos(2a)(2sin(a)2)cos(a)2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)2sin(a))2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+11)=tan1(cos(2a)(2sin(a)+2)cos(a)2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)+2sin(a))2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+11)tan1(cos(2a)(2sin(a)2)cos(a)2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)2sin(a))2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+11)


ここで、
{tan1((sin(a)2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a)(1))tan1((sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)2sin(a)1+cos2(a)(1))=Xtan1(cos(2a)(2sin(a)+2)cos(a)2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)+2sin(a))2cos2(a)+42sin(a)cos2(a)+11)tan1(cos(2a)(2sin(a)2)cos(a)2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+10cos(2a)(2cos2(a)2sin(a))2cos2(a)42sin(a)cos2(a)+11)=Y
とおくと、上記の式変形を統合してtan(X)=tan(2Y)を得る。本当に分量を削減できているか?


 式の形から明らかに、tan1((sin(a)2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)+2sin(a)1+cos2(a)(1))は直線CFx軸のなす角の大きさであり、tan1((sin(a)+2)cos(a)1+cos2(a)02cos2(a)2sin(a)1+cos2(a)(1))は直線DFx軸のなす角の大きさである。ゆえにXは直線CFと直線DFのなす角の大きさであり、すなわちその絶対値はCFDである。
 同様に、Yは直線AFと直線BFのなす角の大きさであり、すなわちその絶対値はAFBである。したがって、tan(X)=tan(2Y)を用いれば、CFD+180=2AFBが導かれる(図より90<AFB<180)。


 本問ではCFD=41であるため、AFB=110.5が答えとなる。


あとがきには何を書いても良いと聞きました

 やはり幾何の問題を無理に座標で解こうとするのは良くない。計り知れないほどの高エネルギーリン酸結合を犠牲にした。
 さて、問題図のような状況においてつねにCFD+180=2AFBが成立することは、かなり非自明であるように感じる。自身の具有する特別な性質に、天国のレムニスケート氏も満足してくれることだろう。
 とはいえ、こういった性質には大抵先行研究が存在するものなので、ご存知の方が居ればコメントなどでご教示をねがう。万が一、いや万が1010000!、この性質を最初に発見したのが私であることを否定されないならば、親しみを込めてレムちゃんの定理 ~ Il teorema inutile in lemniscata ~と命名したい。言い換えれば、私のネーミングセンスを許せない人は何としてでも先行研究を探し出せということになる。頑張れ。


 どうしても幾何学的に解きたい方向けのヒント。本問はA,Bから引いたγの接線の交点Pが、CDに関してOと対称な位置に存在することを示せば十分である。


投稿日:202261
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

匿(Tock)
匿(Tock)
201
28715
主に初等幾何・レムニスケート。時々偏差値・多重根号。 「たとえ作曲家が忘れ去られた日であっても、彼の旋律が街並みを縫って美しく流れていますように。」

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中
  1. イントロダクションは長めにすればよいと聞きました
  2. 問題紹介前にブラウザバックした人がいると聞きました
  3. 解答は行間に高密度の議論を詰め込むべきだと聞きました
  4. あとがきには何を書いても良いと聞きました