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大学数学基礎議論
文献あり

ばこてんとかSchutzの行間補完したい

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} $$

ばこてんとかSchutzの行間補完したい

動機 => おそらく線型代数(と多様体あたり(からのテンソル解析))の知識が足りなくて死んでるから軽くそこらへんを見たい。

まだ編集するかもしれない。

線型代数の部分

テンソルの実体をとりあえず知るための最短ルートっぽくはなってると思う。

線型空間

$\mathbb{K}$上の線型空間$V$とは、集合$V$であって、2つの2項演算

  • $V \times V \rightarrow V \ ;\ (x, y) \mapsto x+y$ (和)
  • $\mathbb{R} \times V \rightarrow V \ ;\ (\lambda, x) \mapsto \lambda \cdot x = \lambda x$ (スカラー倍)
    が与えられ、以下の性質を満たすものをいう。
  1. $\forall x, y \in V\;x+y = y+x$ (交換律)
  2. $\forall x, y, z \in V\;x+(y+z)=(x+y)+z$ (結合律)
  3. $\exists x \in V\;\forall y \in V\;x+y=y$
    この論理式は$x$という任意の$y \in V$に足しても変えない元が存在することを要請していて、そういう元を零元とかゼロとかいう(一般には実数のゼロとは別物であることに注意)。
  4. $\forall x \in V\;\exists y \in V\;x+y=0$
    この論理式はすべての$x \in V$について、それぞれ足すとゼロになるような元$y \in V$が存在することを要請していて、そういう元を逆元という。
  5. $\forall \lambda, \mu \in \mathbb{K}\; \forall x \in V\;(\mu + \lambda)x = \mu x + \lambda x$
  6. $\forall \lambda \in \mathbb{K}\; \forall x, y \in V\;\lambda (x+y) = \lambda x + \lambda y$
  7. $\forall \lambda, \mu \in \mathbb{K}\; \forall x \in V\;\lambda(\mu x) = (\lambda \mu)x$
  8. $\forall x \in V\; 1x = x$
    この$1$$\mathbb{K}$の要素であることに注意。

1~4までの要請から、線型空間は和によりAbel群を成すことがわかる。

線型空間としての実数

実数$\mathbb{R}$は体としての演算(和と積)を以て線型空間を成す。

この場合体$\mathbb{K}$を線型空間$V$の係数体という。
今後、係数体は$\mathbb{R}$(か$\mathbb{C}$)に限ることにする。

線型写像

線型写像とは、線型空間$V, W$の間の写像$f:V \rightarrow W$であって、
$$ \forall \lambda \in \mathbb{R} \; \forall v_1, v_2 \in V \; f(\lambda \cdot_{V} v_1+_{V} v_2) = \lambda \cdot_{W} f(v_1) +_{W} f(v_2) $$
を満たすものをいう(演算の区別のために$V$の演算には$_{V}$を、$W$のものには$_{W}$を記した)。

要は線型空間のもつ2つの演算を保存する写像のこと。

恒等写像

線型空間$V$上の恒等写像$\mathrm{id}_V:V \rightarrow V ;\; v \mapsto v$は明らかに線型。

線型写像の核

線型写像$f:V \rightarrow W$の核$\mathrm{Ker}f$とは、$\{ v \in V \mid f(v) = 0_{W} \}$のことをいう。

また、始域の像の記法も用意されていて$\mathrm{Im}f$と書くらしいです(正直$f[V]$の記法でいいと思う)。
核に関して重要な性質がある。

線型写像$f:V \rightarrow W$について、核が自明であること$\mathrm{Ker}f = \{ 0_V \}$と単射であること$\forall v_1, v_2 \in V\; f(v_1) = f(v_2) \Rightarrow v_1 = v_2$は同値。
則ち、
$$ \mathrm{Ker}f = \{0_V\} \Leftrightarrow [\;\forall v_1, v_2 \in V\;f(v_1)=f(v_2) \Rightarrow v_1 = v_2 \;] $$

($\Rightarrow$)
$v_1, v_2 \in V$について、$f(v_1) = f(v_2)$とする。
$$ \begin{align*} f(v_1) & = f(v_2) \\ f(v_1) - f(v_1) & = f(v_2) - f(v_1) \\ 0_W & = f(v_2 - v_1) \\ \end{align*} $$
ここで、$\mathrm{Ker}f = \{0_V\}$より$v_2 - v_1 = 0_V$、よって$v_1 = v_2$

($\Leftarrow$)
$v \in V$について$0_W = f(v) - f(v) = f(v - v) = f(0_V)$より常に$0_V \in \mathrm{Ker}f$
さらに$f$は単射より、$\mathrm{Ker}f = \{0_V\}$

同型

線型空間$V, W$について、$V$から$W$への線型写像と$W$から$V$への線型写像の両方が存在するとき、$V$$W$は同型であるという。このことを$V \simeq W$と記す。

他の代数系と一緒ですね。

線型写像に逆射が存在すれば、それは線型写像となる。

線型写像$f:V \rightarrow W$に逆射$f^{-1} : \mathrm{Im}f \rightarrow V $が存在すると仮定する。
このとき任意の$w_1, w_2 \in \mathrm{Im}f$について$f(v_1) = w_1, f(v_2) = w_2$なる$v_1, v_2 \in V$が存在する。
これを用いて、
$$ \begin{align*} f^{-1}(\lambda w_1 + w_2) & = f^{-1}(\lambda f(v_1) + f(v_2)) \\ & = f^{-1}(f(\lambda v_1 + v_2)) \\ & = \lambda v_1 + v_2 \\ & = \lambda f(w_1) + f(w_2) \end{align*} $$
よって$f^{-1}$は線型写像。

補題2

線型写像$f:V \rightarrow W$が双射(全単射)であれば$V\simeq W$

線型写像$f:V \rightarrow W$全体の空間$L(V, W)$は線型空間を成す。

$\lambda \in \mathbb{R}$$f, g \in L(V, W)$について、$W$の演算をそのまま用いて
$$f+g : V \rightarrow W ;\ v \mapsto f(v) +_{W} g(v)$$
$$\lambda f : V \rightarrow W ;\ v \mapsto \lambda \cdot_{W} f(v)$$
となるように演算を定義すると、明らかに$L(V, W)$とこの演算は線型空間を成す(定義の条件を満たします)。

もちろん$L(V, V)$みたいなものもあって、こういうやつは自己同型とかいいます。

双対空間

線型空間$V$の双対空間$V^{*}$とは、$L(V, \mathbb{R})$のことをいう。

命題3でみたように、双対空間も線型空間。

線型結合, 線型従属

空でない集合$A$を線型空間$V$の部分集合とする。$v \in V$$A$の線型結合であるとは、
$$ \exists \xi \in \mathbb{R}^{A} \; v = \sum_{a \in A} \xi_a a $$
であることをいう。このことを$v$$A$に線型従属するともいう。
ただし、$\mathbb{R}^{A}$$A$から$\mathbb{R}$への関数全体の集合であり、$\xi$$A$の要素に応じて実数を定める座標系である。
また、$v$に対して$\xi$が一意に定まるとき、$v$$A$に一意に線型従属するという。

基底, 枠

線型空間$V$とあり空でない$V$の部分集合$A$について、任意の$v \in V$$A$に一意に線型従属するとき、$A$$V$の基底であるという。
また、$A$が自然数により順序付けられているとき、これを枠という。
枠の場合は、線型結合は$\sum_{i \in n} \xi_i a_i$と表される($a_i \in V$)。

線型空間$\mathbb{R}$の基底

線型空間としての実数$\mathbb{R}$について、任意の実数$a$が基底$\{a\}$を成す(任意の実数$x$$a$を用いて$x = (x/a) a$と表せる。ここでは$(x/a) \in \mathbb{R}$が成分である)。
そのなかでも標準的であるものは$\{1\}$である。この標準基底のもとではベクトル自体と成分の表記を区別する必要がない。

$\mathbb{R}^2$の標準基底

$\mathbb{R}^2$に自然に演算を入れたもの(成分ごとに実数の計算をする)は線型空間を成す。$e_0 = (1, 0), e_1 = (0, 1)$とすると$(e_i)_{i \in \{0, 1\}}$は枠を成すが、これを$\mathbb{R}^2$の標準基底という。上の例と同様に、この標準基底のもとでは成分とベクトル自体が同じものであって区別しなくてすむため、我々は$(2, 3)$のようにベクトルを記述できる。

時間とか距離とかそういった「量」の線型空間

秒という単位そのものを数学的対象としてみたとき、$\{ \text{秒} \}$が生成する線型空間を考えてみる(秒と記している対象そのものをベクトルとしてみています)。
例えば、$2\text{秒} + 3\text{秒} = (2+3)\text{秒} = 5\text{秒}$
こんな感じで単位をもつ量の空間は線型空間で考えられる(ただし集合論的には秒とかいう対象を(それが宇宙に存在すると)認めなければならない。)。

流派(?)にもよるかもしれないが、普段基底と呼んでいるものは厳密には基底の要素である。さらに自然数によって指定できるものは枠と呼ばれる。要素と集合のどちらを基底と呼ぶかは些細な問題だが、有限どころか可算ですらない基底も考えることができることに注意。

線型空間$V$の基底の要素$e \in E$について、$e^{*} \in V^{*}$を次のように定義する。
$$ e^{*} \left( \sum_{e' \in E} c_{e'} e' \right) = c_{e} $$
このとき、$e^{*}$全体の集合は$V^{*}$の基底となる。
($E$は基底であるから、$\sum_{e' \in E} c_{e'} e'$$V$の要素を網羅できる)

任意の$f \in L(V, \mathbb{R})$について、
$\xi_{e} = f(e)$となるよう$\xi \in \mathbb{R}^{E}$を定義すると、
$f(v) = f\left(\sum_{e \in E} c_{e} e\right) = \sum_{e \in E} c_{e} f(e) = \sum_{e \in E} c_{e} \xi_{e} = \sum_{e \in E} \xi_{e} e^{*}(v) $より、
$$ f = \sum_{e \in E} \xi_{e} e^{*} $$
よって、$f$$\{ e^{*} \mid e \in E \}$に一意に線型従属する。

双対基底

線型空間$V$の基底の要素$e$に対し、$e^{*} \in L(V, \mathbb{R})$を命題4と同様に定義する。
命題4よりこれら$e^{*}$の集合は$V^{*}$の基底を成すためこれを双対基底という。

双対基底の要素はつまり基底$e$に関する座標関数のこと。

再双対空間

線型空間$V$について、双対空間の双対空間$V^{**}$を再双対空間という。

線形空間$V$について、$V \simeq V^{**}$

$\psi:V \rightarrow V^{**};\ v \mapsto [ f \mapsto f(v) ]$とおく。
$f$はベクトルを実数に移す線型写像、すなわち$L(V, \mathbb{R})$の元である。
まず$\psi$が線型であることを示す。
$$ \begin{align*} \psi(\lambda v_1 + v_2) & = [f \mapsto f(\lambda v_1 + v_2)] \\ & = [f \mapsto \lambda f(v_1) + f(v_2)] \\ & = [f \mapsto \lambda f(v_1)] + [f \mapsto f(v_2)] \\ & = \lambda[f \mapsto f(v_1)] + [f \mapsto f(v_2)] \\ & = \lambda \psi(v_1) + \psi(v_2) \end{align*} $$

次に単射であることを示す。
$\psi(v_1) = \psi(v_2)$を仮定する。
$[f \mapsto f(v_1)] = [f \mapsto f(v_2)]$
$f = e^{*}_{i}$である場合を考えると、$e^{*}_{i}v_1 = e^{*}_{i}v_2$。すなわち$v_1$$v_2$はあらゆる成分が等しいため$v_1 = v_2$である。

次に上射(全射)であることを示す。
双対基底の双対基底は
$$ e^{**} ;\; v^{*} = \sum_{e'^{*} \in E^{*}} c^{*}_{e'^{*}} e'^{*} \mapsto c^{*}_{e^{*}} = \sum_{e'^{*} \in E^{*}} c^{*}_{e'^{*}} e'^{*}(e) = v^{*}(e) $$
であるから$e^{**} = \psi(e)$(基底$E$の双対基底を$E^{*}$と記述しています)。
命題4より$E^{**}$$V^{**}$の基底であるから、任意の$v^{**} \in V^{**}$について$v^{**} = \sum_{e^{**} \in E^{**}} \xi'_{e^{**}} e^{**} = \sum_{e \in E} \xi_e e^{**}$となる。
これを用いて
$$ \begin{align*} v^{**} & = \sum_{e \in E} \xi_e e^{**} \\ & = \sum_{e \in E} \xi_e \psi(e) \\ & = \psi(\sum_{e \in E} \xi_e e) \end{align*} $$
よって、$\forall v^{**} \in V^{**} \; \exists v \in V \; \psi(v) = v^{**}$より上射。

以上より、補題2の系から$V \simeq V^{**}$

これによって、$V$$V^{**}$を同一視できる(すべての要素が一対一に対応するし構造も変わらないので単にラベルが違うだけと看做せて、このラベルを無視する)。

そしてついにきました。

テンソル積

線型空間$V, W$の要素$v \in V, w \in W$に対し、そのテンソル積$v \otimes w$とは、双線型写像
$$ (v^{*}, w^{*}) \in V^{*} \times W^{*} \mapsto v^{*}(v)w^{*}(w) \in \mathbb{R} $$
のことをいう。
可算個のテンソル積は
$$ \bigotimes_{i\in\mathbb{N}} v_{i} : \prod_{i\in\mathbb{N}} V^{*}_{i} \rightarrow \mathbb{R} ;\; (v^{*}_i)_{i\in \mathbb{N}} \mapsto \prod_{i\in\mathbb{N}} (v^{*}_i v_i) $$
と定義される(有限個にしたければ$\mathbb{N}$$n = \{ 0, 1, \ldots, n-1 \}$にかえればよい)。
さらに、線型空間$V, W$のテンソル積空間$V \otimes W$を、$v \in V, w \in W$のテンソル積全体が生成する線型空間とする。

$(p, q)$テンソル

線型空間$V$に対し、$\bigotimes^{p}_{i=0} V_i \otimes \bigotimes^{q}_{i=0} V^{*}_i$の元をタイプ$(p, q)$のテンソルという。

タイプ$(1,0)$のテンソル

これは定義から$L(V^{*}, \mathbb{R}) = V^{**}$の元であるから、もとのベクトルである(同型を同一視)。

タイプ$(0,1)$のテンソル

これは定義から$L(V^{**}, \mathbb{R})$の元であるから、$L(V, \mathbb{R})$と看做せる。

線型空間$V, W$のテンソル積空間$V \otimes W$の基底は$\{ e_V \otimes e_W \mid e_V \in E_V \land e_W \in E_W \}$である($E_V, E_W$はそれぞれ$V, W$の基底)。

$v \in V, w \in W$について$v = \sum_{e_V \in E_V} a_{e_V} e_V, w = \sum_{e_W \in E_W} b_{e_W} e_W$とする。
このとき
$$ \begin{align*} (v \otimes w)(v'^{*}, w'^{*}) & = (v'^{*}v)(w'^{*}w) \\ & = \left( v'^{*} \left(\sum_{e_V \in E_V} a_{e_V} e_V\right) \right) \left( w'^{*} \left(\sum_{e_W \in E_W} b_{e_W} e_W\right) \right) \\ & = \left(\sum_{e_V \in E_V} a_{e_V} v'^{*}(e_V)\right) \left(\sum_{e_W \in E_W} b_{e_W} w'^{*}(e_W)\right) \\ & = \sum_{e_V \in E_V} \left( a_{e_V} v'^{*}(e_V) \left(\sum_{e_W \in E_W} b_{e_W} w'^{*}(e_W)\right) \right) \\ & = \sum_{e_V \in E_V} \sum_{e_W \in E_W} \left( a_{e_V} v'^{*}(e_V) b_{e_W} w'^{*}(e_W) \right) \\ & = \sum_{e_V \in E_V} \sum_{e_W \in E_W} \left( a_{e_V} b_{e_W} (e_V \otimes e_W)(v'^{*}, w'^{*}) \right) \\ \end{align*} $$
より
$$ v \otimes w = \sum_{e_V \in E_V} \sum_{e_W \in E_W} a_{e_V} b_{e_W} (e_V \otimes e_W) $$
よって、$v \otimes w$$\{ e_V \otimes e_W \mid e_V \in E_V \land e_W \in E_W \}$に一意に線型従属する。

2つのテンソル積空間の場合が示せたので、帰納的に有限個の場合も示せる。

$(p,q)$テンソルの成分

線型空間$V$$(p,q)$テンソルの元$T$は命題6より定まる基底を用いて、
$$ T = \sum_{i_1, \ldots, i_p, j_1, \ldots, j_q} T^{i_1, \ldots, i_p}_{j_1, \ldots, j_q} e_{i_1} \otimes \cdots \otimes e_{i_p} \otimes e^{*}_{j_1} \otimes \cdots \otimes e^{*}_{j_q} $$
と線型結合の形に表せる。
このときの$T^{i_1, \ldots, i_p}_{j_1, \ldots, j_q}$をテンソル$T$の成分という。

上付きだったり下付きだったりしたあの添字はこっからきます。

ばこてん

1章

いきなり4元ベクトルとかいうのがでてきて時間成分(添字0)以外の添字の上げ下げでは$-1$かけますとか言われて戸惑う。
添字の上げ下げについてはSchutzの方にあったけど、計量テンソルとその逆を使うと添え字の位置を変えられるので、計量テンソルによって添字の上げ下げの関係が記される。ここの相対論で扱う空間($(ct, x, y, z)$の成す空間)がMinkowski空間と呼ばれるもので内積みたいなやつ(正定値性を満たさない)をもっている。こいつを計量ともいう(多分)けど、そいつの符号が$(+, -, -, -)$であるから時間成分(添字0)以外の添字の上げ下げでは$-1$かける。ばこてんでは計量テンソルがあとから定義されているみたいだけど、計量テンソルがあって初めて添字の上げ下げができるようになる、という順序だと思う。

座標系によって変わる変わんないみたいな話をよくしているけど、相対論で考える空間(時間も位置も含めて)は擬Riemann空間というやつらしく、これは可微分多様体と計量もどきを合わせたものらしいです。
多様体は局所的な座標系をいくつかもっており、幾何的実態を捉えたいとなったときに、座標系に依存してほしくないので座標変換で不変かどうかを気にしているんだと思う。

参考文献

投稿日:2022611

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