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単純な逆ラプラス変換でも留数の総和がそのまま答えにならないことがある

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関数F(s)の逆ラプラス変換は、任意の正の数σを用いて次のように表されます。
L-1[F(s)]=limR12πiσiRσ+iRF(s)estds
これを比較的簡単に計算する方法として、次の公式が知られています。
L-1[F(s)]=Res[F(s)est]
abのとき、たとえば
L-1[1(sa)(sb)]=Res[est(sa)(sb)]=limsaestsb+limsbestsa=eatebtab
となり、正しく逆ラプラス変換できています。
このように、ただの分数関数などでは問題ありません。
しかし、変換表で求められる程度の単純な関数の逆ラプラス変換でも、留数の総和では正しい答えにならないことがあります。
その例を示します。
変換表を用いると
L-1[ess]=U(t1)
であることはすぐにわかります。ただし、関数U(t)は単位ステップ関数です。
しかし
Res[es(t1)s]=lims0es(t1)=1
となり、t0の範囲で不連続点を除いても、関数として一致しません。
そこで、逆ラプラス変換を表す複素積分に立ち返ってみましょう。
L-1[F(s)]=limR12πiσiRσ+iRF(s)estds
σ+iRが始点、σiRが終点である半径Rの左半円状の積分路を、Γとします。
逆ラプラス変換が留数の総和で計算できるとされる理由は
limRΓF(s)estds=0
という仮定です。
σを全ての特異点の実部より大きくなるように固定します。
すると、十分大きいRで二つの積分路を繋げた内部に全ての特異点が含まれます。
積分路がΓの積分は0になりますから、留数定理より留数の総和で求まるというわけです。
つまり、積分路がΓの積分が0にならない場合があると予想できます。
複素積分では求められるということを、先ほどの関数で確かめましょう。
σを固定して、逆ラプラス変換を表す複素積分に当てはめてみると
L-1[ess]=limR12πi1iR1+iRes(t1)sds
です。
1+iRが始点、1iRが終点である半径Rの左半円状の積分路を、Γとします。
tの値によって場合分けをしながら、積分を評価していきます。
t1>0の場合
Γes(t1)sds=π23π2e(1+Reiθ)(t1)1+ReiθiReiθdθ
積分の三角不等式や、π2θ3π2cosθ0|1+Reiθ|R1が成立することを用いると
|π23π2e(1+Reiθ)(t1)1+ReiθiReiθdθ|π23π2Re(1+Rcosθ)(t1)R1dθ0(R)
よって
L-1[ess](t)=limR12πi1iR1+iRes(t1)sds=limR[112πiΓes(t1)sds]=1
t1=0の場合
L-1[ess](t)=limR12πi1iR1+iRdss=limR12πiRRs+is2+1ds=limR12πi[log(s2+1)+itan-1s]RR=limR2i2πiπ2=12
t1<0の場合
1iR1+iRes(t1)sds=1+iR1iRes(1t)sds
1+iRが始点、1iRが終点である半径Rの左半円状の積分路を、Γとします。
特異点は原点のみなので
1+iR1iRes(1t)sds=Γes(1t)sds=π23π2e(1+Reiθ)(1t)1+ReiθiReiθdθ
積分の三角不等式や、π2θ3π2cosθ0|1+Reiθ|1+R2が成立することを用いると
|π23π2e(1+Reiθ)(1t)1+ReiθiReiθdθ|π23π2Re(1+Rcosθ)(1t)1+R2dθ0(R)
よって
L-1[ess](t)=limR12πi1iR1+iRes(t1)sds=limR12πiΓes(1t)sds=0
まとめると
L-1[ess]={1(t>1)12(t=1)0(t<1)
不連続点を除いて、U(t1)と等しくなりました。

投稿日:2022613
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