Brown運動をする粒子の運動方程式のような、確率変数が運動方程式に確率的変動をもたらす系は確率微分方程式(Stochastic Differential Equation:SDE)で記述することができる。SDEを解いて得られる微分方程式の解
本文では粘性が強い溶媒下でBrown運動をする粒子などの記述に使われるOverdamped-Langevin方程式のFokker-Planck方程式を導出し、Fokker-Planck方程式がどのような性質を満たすのかについて考察する。
粘性が強い条件下では、粒子の分布関数はカノニカル分布
に至ることが予想される(
Overdamped-Langevin方程式は以下のとおりである。系の自由度を
ブラウン運動
伊藤の公式を
ここで、δ関数に関する以下の公式を使用した。
各項に対してアンサンブル平均をとる。ブラウン運動
この確率分布が満たす線形偏微分方程式をFokker-Planck方程式と呼ぶ。
方程式を具体的に解かなくとも、解の挙動に関して幾つかの情報は得られる。
線形偏微分方程式なので、解の重ね合わせができる。初期条件が
と書くことができる。
確率の時間変化があれば、確率がどのように流失するか知りたいものである。確率流を以下のように定義する。
と定義すると、Fokker-Planck方程式はシンプルにかける。
確率分布が時間依存しない定常状態に至れば、確率流
温度の空間勾配がない時は、Fokker-Planck方程式の定常解として
が得られる。これはまさにカノニカル分布である。
では、任意の初期条件から出発した分布関数
はカノニカル分布に至るだろうか。これに肯定的に答えてくれるのがKullback-Leiblerエントロピー
である。一般に
故に