ここでは京大数学教室・RIMSの修士課程の院試の2022基礎04の解答例を解説していきます(但し解説の都合上少し問題を改変しています)。解答例はあくまでも例なので、最短・最易の解答とは限らないことにご注意ください。またこの解答を信じきってしまったことで起こった不利益に関しては一切の責任を負いませんので、参照する際は慎重に慎重を重ねて議論を追ってからご参照ください。また誤り・不適切な記述・非自明な箇所などがあればコメントで指摘していただけると幸いです。
$n$を正の自然数とする。積分
$$
I_a=\int_0^\infty\frac{\sin^nx}{x^a}dx
$$
がwell-definedに定義されるような実数$a$の範囲を求めなさい。
初めに$\frac{\sin^nx}{x^n}$は$x=0$に解析接続され、その値は$1$であることから、積分
$$
\int_0^{2\pi}\frac{\sin^nx}{x^a}
$$
は$n+1\leq a$で発散し、$a< n+1$で収束する。
次に積分
$$
\int_{2\pi}^\infty\frac{\sin^{2k+1}x}{x^a}dx
$$
が任意の$a>0$で収束する一方$a\leq0$では収束しないことを示す。まず$F(\theta)$を$\sin^{2k+1}\theta$の原始関数とする。このとき上記の積分は、$F$の有界性を考慮すると、
$$
\begin{split}
\int_{2\pi}^\infty\frac{\sin^{2k+1}x}{x^a}dx&=\qty[\frac{F(x)}{x^a}]_{2\pi}^\infty+a\int_{2\pi}^\infty\frac{F(x)}{x^{1+a}}dx\\
&=-\frac{F(2\pi)}{(2\pi)^a}+a\int_{2\pi}^\infty\frac{F(x)}{x^{1+a}}dx\\
\end{split}
$$
と表せる。再び$F(\theta)$の有界性を考慮すれば、右辺第二項がルベーグの優収束定理からwell-definedに定まることが従う。よって上記の積分はwell-definedに定まる。一方$a=0$のときは$\sin^{2k+1}x$は周期関数なので収束せず、$a<0$のときも
$$
\int_{2\pi}^\infty x^{-a}\sin^{2k+1}xdx=\sum_{i=0}^{\infty}(-1)^iI_i
$$
$$
I_i:=\int_{(i+2)\pi}^{(i+3)\pi}\qty|x^{-a}\sin^{2k+1}x|dx
$$
と表せ、$I_i$は$i$に対して単調増加であることから収束しない。
次に積分
$$
\int_{2\pi}^\infty\frac{\sin^{2k}x}{x^a}dx
$$
はルベーグの優収束定理から任意の$a>1$で収束する一方、$a\leq1$では収束しない。
以上から$I_a$が収束するような$a$の範囲は
$$
{\color{red}\begin{array}
&0< a< n+1&(2\nmid n)\\
1< a< n+1&(2|n)
\end{array}}
$$
である。