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フィボナッチ数列の研究まとめ 2

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体験記の合間にフィボナッチ数列を少しまとめます(体験記はもう少しお待ちを). 初めに重要な公式をいくつか復習しましょう. 余談ですが, フィボナッチ数列全体の集合を F とかしてしまったので有限体の議論が見づらくなりそうで困っています...

前提知識
  • 数2Bまでの知識
  • 集合, 写像についての記法, 用語が一通りわかる
  • 群論, 環論についての基本的な事項がわかる

また, 前回の記事 を先に読むことを推奨します.

前回のまとめ

フィボナッチ数列

数列{Fn}n=F0=0,F1=1,Fn+2=Fn+1+Fn(nZ)で定め, フィボナッチ数列と呼ぶ. この集合に登場する整数をフィボナッチ数と呼ぶ.

フィボナッチ数の集合について
  • 正のフィボナッチ数全体の集合をFとあらわす
  • フィボナッチ数全体の集合をFとあらわす
加法定理

任意のn,mZに対しFn+m+1=FnFm+Fn+1Fm+1が成立する.

乗法定理

任意のn,mZに対しFn+mFnm=Fn2(1)n+mFm2

前者関数, 後者関数

FF2,F2Fへの関数をそれぞれ
nn+5n2±42,nn+5n2±42
で定め, それぞれsuc, preとする. これらのwell-defined性, 互いに逆写像(従っていずれも全単射)であることは前回の記事を参照.

周期関数

今回のメインの話題になる, フィボナッチ数をある整数で割った余りがどれくらいの周期で現れるかという関数, 周期関数を二つ定義します.

周期関数

正整数nに対して関数l,L:Z>0Z>0を以下のように定める:
l(n)=min{kZ>0Fk0(modn)}
L(n)=min{kZ>0Fk0(modn)Fk+11(modn)}

イメージとしては小文字のほうは0がいくつ間隔で現れるか, 大文字のほうは余りがいくつ周期か, という感じです. (このイメージは実際に成立します)
ところで, 実際にこのような関数は存在するのでしょうか? かなり自明ではありますが, 一応証明しておきます.

全てのnZ>0に対しある正整数kが存在し, Fk0(modn)Fk+11(modn)が成立する.

正整数nに対してZ/nZを剰余環とし, 剰余類[k]を単にkと書き, Z/nZの元と同一視する. 以下Z/nZで考える. 正整数iに対し順序対(Fi,Fi+1)(Z/nZ)2として取り得るものは高々有限である. すなわち, あるa<bなる正整数の組(a,b)が存在し(Fa,Fa+1)=(Fb,Fb+1)となる. (Fa,Fa+1)が決まると帰納的に{Fn}が一意に定まることに留意すると, (Faa,Fa+1a)=(Fba,Fb+1a)が成立する. このとき(Fba,Fb+1a)=(0,1)となり, ba>0より題意は示された.

あまりの周期性についてもほとんど同様に示せるのでここでは省略します.
また, 周期性の系としてl(n)|L(n)もわかりますね.

少しこの関数の観察をしてみましょう.

nl(n)L(n)L(n)/l(n)
1111
2331
3482
46122
55204
612242
78162
86122
912242
1015604

予想できることとしてはL(n)/l(n)2べきになることなどがあると思います. あとはnが素数になるときにL(n)の値がある程度絞れたりとか...

実は結論から言いますと以下の命題が成立します.

任意のnZ1に対してL(n)/l(n)=1,2,4

これを示していきましょう!

主定理の証明

まず, L(n)/l(n)の言い換えを行います.

m2以上の整数とする. Z/mZFnl(m)+1として取り得る値は積について巡回群の構造をなす.その群をGFi(m)と定める.

加法定理より
Fnl(m)+1=F(n1)l(m)Fl(m)+F(n1)l(m)+1Fl(m)+1=F(n1)l(m)+1Fl(m)+1
が成立し, F1=1であるのでこれらはFl(m)+1と記述でき, 特に巡回群である.

m2以上の自然数とする. #GFi(m)=L(m)/l(m)が成立する.

GFi(m)は巡回群であるので, #GFi(m)の値は生成元Fl(m)1の位数と等しい. 上の補題の証明より, 非負整数nに対してFnl(m)+1=Fl(m)+1nが帰納的にわかる. よって, 位数の定義よりFnl(m)+1=1となる最小の正整数n#GFi(m)であり, L(m)の定義と0の出現の周期性より#GFi(m)=L(m)/l(m).

従って, 結局GFi(m)の群構造を調べればよいことになります(そもそもが巡回群なのでかなり単純な構造になるが).
今, Fl(m)+1として表せる項はZ/mZ上で0の"後"に現れる項です. このことから, 剰余環上において後者関数で0を飛ばすという発想に行きつきます. 実際には, はじめその方法で行ったのですが平方根や除算の扱いが難しく若干方針を変えました. 中国剰余定理の適用を考えればまず素べきについて考えればよさそうです.

奇素数の素べきの場合

奇素数p, 正の整数nに対してGFi(pn)C4が成立する.

後者関数導出の際のFx2+FxFx+1Fx+12(1)x=0を考えることで(x=ml(pn)を代入)Fml(pn)+1=±1を考えればよい. 1について,
k2=1(k1)(k+1)=0k=1,1
が成立する. (ただし最後のは法が素べきであるため). さらに,α2=1なるαZ/pnZの存在を仮定すると, αpZ/pnZ であることから
k2=1(kα)(k+α)=0k=α,α
が成立(αα). αが存在するとき, 上の議論より, {±1}は位数4の群になり,特に
αC4に同型. 存在しないとき,
{±1}={1}となり, 上の議論よりこれはC2(C4)に同型.
GFi(pn)はこれの部分群なのでGFi(pn)C4.

2べきの場合は少し違う議論が必要ですが, 大筋は変わりません.

2べきの場合

正の整数nに対してGFi(2n)C2が成立する.

n=1,2のとき明らかなので以下n3とする. 先の補題と同様にFml(2n)+1=±1を考えればよい. 1について,
k2=1(k1)(k+1)=0k=1,1,2n1+1,2n11
が成立する. (k+1,k1のちょうど一方のみが4Z/2nZに属することを用いた). また, mod4で考えることでk2=1の解は存在しない.
よって,
±1=1,1,2n1+1,2n11
となり, これにはC2×C2に同型な構造が入る. GFi(2n)はこれの部分群かつ巡回群なので位数を考えればGFi(2n)C2が従う.

これらより, 素べきの場合にはGFi(m)E,C2,C4のいずれかになることが言えましたね. あとはすぐです.

再掲

任意のnZ1に対してL(n)/l(n)=1,2,4

L(1)/l(1)=1よりn=1で成立.以下n2とする.
中国剰余定理より互いに素である自然数n,m2に対してZ/nZ×Z/mZZ/nmZである. この同型写像をφ:Z/nZ×Z/mZZ/nmZとおく. 今, 積についてのモノイドとしてGFi(n)Z/nZ,GFi(m)Z/mZが成立している. さらに, GFiの定義より, aZ/nmZに対し, aGFi(nm)であるときφ1(a)GFi(n)×GFi(m)が成立する. よって, GFi(nm)φ(GFi(n)×GFi(m)).
今, GFi(n)×GFi(m)は成分ごとの演算で群になるので, φ(GFi(n)×GFi(m))も群になり, これはGFi(n)×GFi(m)と同型.
(a,b)GFi(n)×GFi(m)をとったとき, (a,b)の位数はaの位数とbの位数の最小公倍数となる. 特にいずれも1,2,4のいずれかの場合, (a,b)の位数も1,2,4のいずれかになる. よって, 任意のcGFi(nm)に対して位数は1,2,4のいずれか. 補題5よりGFi(nm)は巡回群なので#GFi(nm)=1,2,4.
今, 全ての素べきpnについて#GFi(pn)=1,2,4が示されているので, 帰納的に任意のnに対して#GFi(n)=1,2,4となる. これと補題6より主張が従う.

まとめ

フィボナッチ数と群論, 面白くないですか?僕はこの方法に気づいたとき結構感動しました. 次回はL(n)/l(n)の具体的な値について考えていきます.
余談ですが, りんさん(@.rin_math28)の固ツイの問題の解答に近い内容だったのでそれに沿って記事を書いてみました. また次回!

投稿日:2022722
更新日:202483
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