無限数列$\{a_n\}_{n=0,1,2,\cdots}$は常に$a_{n+1}=f(a_n)$を満たしている。このとき次が成り立つ。
(1)任意の$k\gt a_0$で$\inf_{x\in [a_0,k]}\{f(x)-x\}\gt0$が成り立つとき、数列$\{a_n\}$は正の無限大に発散する。
(2)任意の$k\lt a_0$で$\sup_{x\in [k,a_0]}\{f(x)-x\}\lt0$が成り立つとき、数列$\{a_n\}$は負の無限大に発散する。
(3)$f(\alpha)=\alpha$となる$\alpha(\gt a_0)$が存在し、区間$[a_0,\alpha]$において関数$f(x)$は(狭義)単調増加であり、任意の$k\in (a_0,\alpha)$に対して$\inf_{x\in [a_0,k]}\{f(x)-x\}\gt 0$である。このとき数列$\{a_n\}$は収束して、その極限値は$\alpha$となる。
(4)$f(\alpha)=\alpha$となる$\alpha(\lt a_0)$が存在し、区間$[\alpha,a_0]$において関数$f(x)$は(狭義)単調増加であり、任意の$k\in (\alpha,a_0)$に対して$\sup_{x\in [k,a_0]}\{f(x)-x\}\lt 0$である。このとき数列$\{a_n\}$は収束して、その極限値は$\alpha$となる。
(5)$a_0\lt a_2\lt a_1$であり、区間$[a_0,a_1]$において、$f(x)$は連続微分可能であり$-1\lt f'(x)\leq0$である。このとき数列$\{a_n\}$は収束する。
(1)~(4)は$f(x)$が連続であるという条件を加えれば$\sup$や$\inf$を取り払っても成立します。
つまり
無限数列$\{a_n\}_{n=0,1,2,\cdots}$は常に$a_{n+1}=f(a_n)$を満たしている。このとき次が成り立つ。
(1')関数$f(x)$は区間$[a_0,\infty)$において連続であり、$x\geq a_0\Longrightarrow f(x)\gt x$が成り立つとき、数列$\{a_n\}$は正の無限大に発散する。
(2')関数$f(x)$は区間$(-\infty,a_0]$において連続であり、$x\leq a_0\Longrightarrow f(x)\lt x$が成り立つとき、数列$\{a_n\}$は負の無限大に発散する。
(3')$f(\alpha)=\alpha$となる$\alpha(\gt a_0)$が存在し、区間$[a_0,\alpha]$において関数$f(x)$は(狭義)単調増加かつ連続であり、区間$[a_0,\alpha)$において常に$f(x)\gt x$である。このとき数列$\{a_n\}$は収束して、その極限値は$\alpha$となる。
(4')$f(\alpha)=\alpha$となる$\alpha(\lt a_0)$が存在し、区間$[\alpha,a_0]$において関数$f(x)$は(狭義)単調増加かつ連続であり、区間$(\alpha,a_0]$において常に$f(x)\lt x$である。このとき数列$\{a_n\}$は収束して、その極限値は$\alpha$となる。
$f(x)$が不連続だったら$\sup$や$\inf$がないとうまくいきません。(たとえば $f(x)=\frac{x[x]}{2}+1$ とか)
(1')
任意の$k\gt a_0$で関数$f(x)-x$は区間$[a_0,k]$において連続であるから、$f(x)-x$はこの区間における最小値$m$を持ち、$m\gt 0$であるので、
$$ \inf_{x\in [a_0,k]}\{f(x)-x\}=m\gt0$$
よって(1)より、数列$\{a_n\}$は正の無限大に発散する。
(2')
任意の$k\lt a_0$で関数$f(x)-x$は区間$[k,a_0]$において連続であるから、$f(x)-x$はこの区間における最大値$M$を持ち、$M\lt 0$であるので、
$$ \sup_{x\in [k,a_0]}\{f(x)-x\}=M\lt 0$$
よって(1)より、数列$\{a_n\}$は負の無限大に発散する。
(3')
(3)の証明と同じようにして、数列$\{a_n\}$は$a_0$より大きく$\alpha$以下である極限値を持つことが示せる。
ここで、$f(x)$は区間$[a_0,\alpha]$において連続であるから、
\begin{eqnarray} \lim_{n \to \infty}a_n&=& \lim_{n \to \infty}f(a_{n-1})\\ &=&f\left(\lim_{n \to \infty}a_n\right)
\end{eqnarray}
であるが、$a_0\leq x \lt \alpha$のときは$f(x)\gt x$なので、数列$\{a_n\}$の極限値は$\alpha$である。
(4')
$g(x)=-f(-x)$とすると無限数列$\{-a_n\}_{n=0,1,2,\cdots}$は常に$-a_{n+1}=g(-a_n)$を満たし、区間$[-a_0,-\alpha]$において$g(x)$は(狭義)単調増加かつ連続で、$g(-\alpha)=-\alpha$であり、区間$[-a_0,-\alpha)$において$g(x)\gt x$である。
よって(3')より、数列$\{-a_n\}$は収束して、その極限値は$-\alpha$となる。
したがって、数列$\{a_n\}$の極限値は$\alpha$である。
最後に上で証明したものを使って様々な数列の極限を求めていきましょう。
$f(x)=x+\frac{1}{x}$とすると、$x\gt 0$のとき$f(x)-x=\frac{1}{x}\gt0$であるから、(1')より、数列$\{a_n\}$は正の無限大に発散する。
$f(x)=1+\log x$とすると、$f(x)$は区間$[1,\infty)$で単調増加かつ連続であり、$x\gt 1$のとき$f(x)\lt x,f(1)=1$であるから、(4')より、数列$\{a_n\}$は$1$に収束する。
$0\lt \cos1\lt 1$であり、$(\cos x)'=-\sin x$で、$0\leq x\leq 1$のとき$-1\lt -\sin x\leq 0$であるので、(5)より、数列$\{a_n\}$は収束し、その極限値は$x=\cos x$の実数解である。