こんにちは, numcaです.
この記事では私が以前ツイートした素数に関する不等式の証明をします.
$n$を正整数とするとき,
$$\prod_{i=1}^{n}(1+\frac{1}{\sqrt{p_i}})^2>p_{n+1}-1$$
を示せ.
$p_k$は$k$番目に小さい素数のことを表します.
任意の正整数$n$は正整数$m$と無平方数$k$によって$n=m^2k$の形に一意的に表せる.
無平方数とは$1$より大きい平方数で割り切れないような正整数のことです.
$n$を素因数分解した形で
$$\prod_{i=1} {p_i}^{a_i}$$
と表し, $a_i=2b_i+c_i(c_i=0,1)$とおくと
$$m=\prod_{i=1} {p_i}^{b_i}, k=\prod_{i=1} {p_i}^{c_i}$$
と一意に定まる.
$n$を正整数とするとき, $m^2k\leq n$なる正整数$m$と無平方数$k$の組$(m, k)$はちょうど$n$個存在する.
補題1より$a$を正整数とするとき, $m^2k=a$を満たす正整数$m$と無平方数$k$の組$(m, k)$がちょうど$1$組存在する.
$n$以下の正整数はちょうど$n$個存在するから, $(m, k)$も$n$組存在する.
$n$を正整数とするとき, $n$以下の無平方数$k$すべてについての$\displaystyle\lfloor\sqrt{\frac{n}{k}}\rfloor$の総和は$n$である.
$m^2k\leq n$なる正整数$m$と無平方数$k$の組$(m, k)$の組数を数える.
無平方数$k$を固定したとき, $m^2k\leq n$なる正整数$m$は$\displaystyle\lfloor\sqrt{\frac{n}{k}}\rfloor$個ある. よって補題1より$n$以下の無平方数$k$すべてについての$\displaystyle\lfloor\sqrt{\frac{n}{k}}\rfloor$の総和は$(m, k)$の組数と等しく, 補題2よりこれは$n$に等しい.
$n$を正整数とするとき, $n$以下の無平方数はすべて$n\#$の約数である.
$n\#$は$n$以下の素数を全て掛け合わせたものを表します.
$n$以下の無平方数$k$は$n$より大きい素因数を持ちえない.
よって$n$以下の最大の素数を$p_m$と表すと
$$n\#=\prod_{i=1}^{m} {p_i}, k=\prod_{i=1}^{m} {p_i}^{c_i}(c_i=0, 1)$$
と表されるから,
$$\frac{n\#}{k}=\prod_{i=1}^{m} {p_i}^{1-c_i}$$
であり, これは整数である.
$n$を正整数とするとき,
$$\sum_{d\vert n\#} \lfloor\sqrt{\frac{n}{d}}\rfloor=n$$
が成立する.
$d\leq n$の部分の総和は補題3, 補題4より$n$である.
$d>n$の部分の総和はすべての項が$0$になるため$0$である.
よって全体の総和は$n+0=n$である.
補題5より
$$\sum_{d\vert p_{n}\#} \sqrt{\frac{p_{n+1}-1}{d}} > \sum_{d\vert p_{n}\#} \lfloor\sqrt{\frac{p_{n+1}-1}{d}}\rfloor=p_{n+1}-1$$
が成立します.
また,
$$\begin{eqnarray}
\sum_{d\vert p_{n}\#} \sqrt{\frac{p_{n+1}-1}{d}}
&=&\sqrt{p_{n+1}-1}\sum_{d\vert p_{n}\#} \frac{1}{\sqrt{d}} \\
&=&\sqrt{p_{n+1}-1} \prod_{i=1}^{n} (1+\frac{1}{\sqrt{p_i}})
\end{eqnarray}$$
が成立します.
以上より,
$$\begin{eqnarray}
\sqrt{p_{n+1}-1} \prod_{i=1}^{n} (1+\frac{1}{\sqrt{p_i}})&>&p_{n+1}-1 \\
\prod_{i=1}^{n} (1+\frac{1}{\sqrt{p_i}})&>&\sqrt{p_{n+1}-1} \\
\prod_{i=1}^{n} (1+\frac{1}{\sqrt{p_i}})^2&>&p_{n+1}-1
\end{eqnarray}$$
となり, 示されました.