整数係数多項式
$$f(x) = a_0 + a_1 x + a_2 x^2 + \cdots \cdots + a_{n-1} x^{n-1} + a_n x^n$$の係数について次の3つの条件を満たす素数$p$が存在するとき,多項式$f(x)$は有理数の範囲でそれ以上因数分解することが出来ない.
$a_0$は$p$の倍数であるが,$p^2$の倍数ではない.
$a_1$ ~ $a_{n-1}$はすべて$p$の倍数である.
$a_n$は$p$の倍数でない.
この定理と平行移動を利用することで,与えられた多項式が有理数の範囲で因数分解可能かどうかを判定できる.
また因数分解可能であったとしても,この定理をもう一度今度は$1 \leq k < n$となる整数$k$について適用すれば,与えられた多項式が有理数の範囲で何次以上の因数を持つかを判定することが出来る.
$$f(x) = a_0 + a_1 x + a_2 x^2 + \cdots \cdots + a_{n-1} x^{n-1} + a_n x^n$$が上記の3つの条件を満たした上で,整数係数の多項式に因数分解可能である ^1
と仮定して,背理法で示す.
今,整数係数多項式$f(x)$が,2つの整数係数多項式$g(x)h(x)$に因数分解されたとする.$g(x),h(x)$を
$$\begin{eqnarray}
&g(x) = g_0 + g_1x + g_2x^2 + \cdots \cdots + g_{r-1}x^{r-1} + g_rx^r\\
&h(x) = h_0 + h_1x + h_2x^2 + \cdots \cdots + h_{n-r+1}x^{n-r+1} + h_{n-r}x^{n-r}\end{eqnarray}$$とおく.
定数項を比較すると,条件より$p$は$a_0 = g_0h_0$を割り切るが,$p^2$は$a_0$を割り切らないことより,$p$は$g_0$か$h_0$のどちらか一方しか割り切らない.ここで$p$は$g_0$を割り切り,$h_0$を割り切らないと決めても一般性を失わない.
次に一次の係数を比較すると,条件より$p$は$a_1 = g_0h_1 + g_1h_0$を割り切る.また先の結果より$p$は$h_0$を割り切らないから,$g_1$を割り切ることが要請される.
同様にして順番に$f(x)$と$g(x)h(x)$の係数を比較していくと,$p$は$f(x)$のすべての係数を割り切ることがわかる.しかしこれは条件の一つである$p$は$a_n$を割り切らないことに矛盾する.したがって,$f(x)$はそれ以上因数分解できない.