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min-max 定理と max-min 定理

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設定

$H$ を Hilbert空間,$a,b:H\times H\to\mathbb{R}$ を以下の条件を満たす正定値対称双線型形式とする:

条件1: $H$ は2つのノルム $\|\cdot\|_a:=\sqrt{a(\cdot,\cdot)}$, $\|\cdot\|_b:=\sqrt{b(\cdot,\cdot)}$ についてそれぞれ完備である

条件2:$b$$a$ に関してコンパクトである.すなわち,$\|\cdot\|_a$ に関して有界な任意の点列 $\{v_n\}\subset H$$\|\cdot\|_b$ に関する収束部分列をもつ.

以下の固有値問題の固有値を $0<\lambda_1\leq\lambda_2\leq..$ とし,$\lambda_k$ に属する $\|\cdot\|_b$ で正規化された固有ベクトルを $u_k$ とする.

Find $\lambda\in\mathbb{R}$, $u\in H$ such that
$$ a(u,v)=\lambda b(u,v)~~v\in H. $$
レイリー商 $R:H\to\mathbb{R}$
$$ R(v):=\frac{a(v,v)}{b(v,v)} $$
によって定める.

min-max 定理

$k$ 固有値 $\lambda_k$ に対して,
$$ \lambda_k=\min_{V^k\subset H}\max_{v\in V^k}R(v) $$
が成り立つ.ただし,$V^k$$H$ の任意の $k$ 次元部分空間を動く.
(証明)
まず,$H$$k$ 次元部分空間として $V^k:=\mbox{span}\{u_1,u_2,..,u_k\}$ をとると,
$$ \max_{v\in V^k}R(v)=\max_{|(x_1,..,x_k)|=1}(x_1^2\lambda_1+x_2^2\lambda_2~+..+x_k^2\lambda_k)\leq\lambda_k $$
が分かる.よって
$$ \inf_{V^k\subset H}\max_{v\in V^k}R(v)\leq\lambda_k $$
となる.

$V^k$$H$ の任意の $k$ 次元部分空間とする. するとある番号 $l~(\geq k)$ が存在して, $V^k\cap\mbox{span}\{u_l\}\neq\emptyset$ が成り立つ.

よって
$$ \max_{v\in V^k}R(v)\geq\lambda_l\geq\lambda_k $$
となり,
$$ \min_{V^k\subset H}\max_{v\in V^k}R(v)\geq\lambda_k $$
が成り立つ.以上より主張が証明された.

max-min 定理

$k$ 固有値 $\lambda_k$ に対して,
$$ \lambda_k=\max_{V^{k-1}\subset H}\min_{v\in V^{{k-1},\bot}}R(v) $$
が成り立つ.ただし,$V^{k-1}$$H$ の任意の $k-1$ 次元部分空間を動く.
(証明)
まず,$H$$k-1$ 次元部分空間として $V^{k-1}:=\mbox{span}\{u_1,u_2,..,u_{k-1}\}$ をとると,
$$ \min_{v\in V^{k-1,\bot}}R(v)\geq\lambda_k $$
が分かる.よって
$$ \sup_{V^{k-1}\subset H}\min_{v\in V^{{k-1},\bot}}R(v)\geq\lambda_k $$
となる.

$H$$k-1$ 次元部分空間 $V^{k-1}$ を任意にとる. するとある番号 $l~(\leq k)$ が存在して, $V^{k-1,\bot}\cap\mbox{span}\{u_l\}\neq\emptyset$ が成り立つ.
$$ \min_{v\in V^{k-1,\bot}}R(v)\leq\lambda_{l}\leq\lambda_k $$
となり,
$$ \max_{V^{k-1}\subset H}\min_{v\in V^{{k-1},\bot}}R(v)\leq\lambda_k $$
が成り立つ.以上より主張が証明された.

投稿日:2022810

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投稿者

「音の現象」を数学的に検証することに興味を持っています. 微分作用素の固有値問題に対する計算機援用証明について研究しています.

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