因数定理において,根の候補を代入して因数を求める操作を求められる場合がある.その際,より効率的に根の候補を見つける方法があるとよいと思われる.
よって,ここではその方法の説明とそれが成り立つことの証明を与える.
(整数係数多項式)=0 の形の方程式が有理数解$\tfrac{q}{p}$をもつならば,$p$は最高次の係数の約数であり,$q$は定数項の約数である.
整数係数方程式$a_n x^n + a_{n-1} x^{n-1} + \cdots\cdots + a_1 x + a_0 = 0$ を考える.
この方程式が有理数解$\tfrac{q}{p}$($p$,$q$は互いに素 $\Leftrightarrow$$\tfrac{q}{p}$は既約分数)をもつとき,もとの方程式に代入すると,$a_n (\tfrac{q}{p})^n + a_{n-1} (\tfrac{q}{p})^{n-1} + \cdots\cdots + a_1 \tfrac{q}{p} + a_0 = 0$
両辺を$p^n$倍すると,$a_n q^n + a_{n-1} q^{n-1} p + \cdots\cdots + a_1 q p^{n-1} + a_0 p^n = 0$
よって
第二項以降はすべて$p$の倍数になる.$\therefore$ $(第一項)+($p$の倍数の和) = 0$より,第一項も$p$の倍数.
また,$p$と$q$は互いに素であるから,$a_n q^n$ は$p$の倍数.
よって,$a_n$が$p$の倍数であるから,$p$は最高次の係数$a_n$の約数.
定数項以外の項はすべて$q$の倍数になる. $\therefore$$(定数項) + ($q$の倍数の和) = 0$ より,定数項も$q$の倍数.
また,$p$と$q$は互いに素であるから,$a_0 p^n$ は$p$の倍数.
よって,$a_0$が$q$の倍数であるから,$q$は定数項$a_0$の約数.
したがって,$1.,2.$より,整数係数方程式が有理数解$\tfrac{q}{p}$をもつならば,$p$は最高次の係数の約数であり,$q$は定数項の約数である.