前回投稿した「相似比2:1の正多角形内接の定理」の記事はおかげさまで大好評でした。
実際、とても面白い性質を見つけることができたと思っていました。
しかし、それは実は、もっと面白い性質のほんの一瞬を切り取ったものにすぎなかったのです!
そのことを発見したときは本当に驚きました。
そのときの感動を少しでも記事に表現することができればと思います。
この記事では、その性質を紹介し、さらに証明にも挑戦します。
少し長くなると思いますが、お急ぎの方は「もっと面白い性質」の部分だけでもご覧いただければ幸いです。
まずは前回の記事で証明した定理を再掲します。
このとき、
相似比2:1の正"奇数"角形内接の定理
具体例
このとき、
相似比2:1の正"偶数"角形内接の定理
具体例
「もっと面白い性質」の発見のきっかけとなったのは、ますたぁP@ポップン(4) (@0625Master)さんのこれらのツイートでした。
これの定理2【相似比2:1の正"偶数"角形内接の定理】について、正n角形を全てπ/nずつ傾けたものについても成り立ちそうだということを見つけました
— ますたぁP@ポップン(4) (@0625Master) July 26, 2022
真上に頂点がくるように全ての正n角形を配置しても成り立つという感じです
まだ……終わらないのか!? https://t.co/tW6dMb4kT9
当然、こういう疑問が湧く
— ますたぁP@ポップン(4) (@0625Master) July 26, 2022
π/n傾けても成り立つんなら実は任意の角度傾けても成り立つのでは?
試してみると、確かに真上に頂点がくるように全ての正n角形を配置しても同様の配置にできることがわかりました。
頂点が上になるようにしても成立する
そして、さらなる一般化・・・すなわち、任意の角度で同様の配置が可能なのではないか、という重要な予想がされました。
実は、当初私は「さすがにそれは無理では?」と考えていたのですが・・・
さすがにこれは無理…な気がします🤔 https://t.co/KJiNW5StZF pic.twitter.com/T919000zyX
— apu (@apu_yokai) July 26, 2022
試行錯誤の様子
しばらく考えていたところ、
「スライドパズルのように各パーツをシンクロさせながら平行移動することで少しずつ位置を回転できるのでは?」
「仮にスライドパズルのように各パーツの位置を一周させることができたなら、その状態をベースに、
というヒラメキが訪れました。
実際にやってみると、直感どおり、各パーツをシンクロさせながら平行移動することで少しずつ位置を回転させることも、その状態をベースに、
それではご覧ください。これが任意の角度に一般化された「相似比2:1の正"偶数"角形内接の定理」の姿です!
相似比2:1の正"偶数"角形内接の定理の一般化
「正"偶数"角形でできたんなら、正"奇数"角形でもできるのでは?」というのは自然な発想ではないでしょうか。偶数の場合は上下対象ですが、奇数の場合は上下対象ではないので、一見うまくいかなさそうに思えます。
・・・が、試行錯誤を続けた結果、「上半分と下半分の向きを逆にすれば、同じことができる」ということを発見しました!
これが任意の角度に一般化された「相似比2:1の正"奇数"角形内接の定理」の姿です!
相似比2:1の正"奇数"角形内接の定理の一般化
定理っぽく表現するとこんな感じでしょうか。
「相似比2:1の正"偶数"角形内接の定理」又は「相似比2:1の正"奇数"角形内接の定理」の配置を基準とする。ただし、"奇数"の場合は、
基準の位置から始めて、
一周させる間、
(文章にしてしまうと意味不明な感じになってしまいますが)いやあ、これは美しいですね!
前回の記事が、この美しい関係のほんの一瞬を切り取った姿にすぎないことがお判りいただけましたでしょうか。
とはいえ、前回証明した定理がなければこの美しい性質を証明することは(私には)できません。
前回証明した定理により、その「一瞬」の状態が可能であることは証明済ですので、あとは、その「一瞬」の状態からスムーズに1回転させることが可能であることだけを証明すればよいことになります。
それではここから証明パートに入りたいと思います。
証明しやすいように、ここからは一番大きい正多角形を固定します。
そして、その内部を大小の正
スライドパズルのような平行移動で1回転させることができることを示したい
なるべく場合分けはしたくないのですが、最小限の場合分けは必要です。
まず、正"奇数"角形の場合の証明をします。
各パーツが内部を
この動きが可能であることを証明すればよい
具体的には、
(
このとき、
実際、全体として移動前と移動後の位置は時計回りにちょうど
もう少し細かく分析しましょう。
赤い線と青い線が
右側の赤線と青線は、それぞれ
左側の赤線と青線は、それぞれ
どうやら、赤線どおし、青線どおしはそれぞれが同じタイミングで角度が変わり、常に平行になっているように見えます。
もし、本当に同じタイミングで角度が変わっているのであれば、
各正
以上から、赤線どおし、青線どおしそれぞれが同じタイミングで角度が変わっているのであれば全体としてこのような動きが可能であるとわかります。
したがって、証明すべきことは「赤線どおし、青線どおしはそれぞれが同じタイミングで角度が変わり、常に平行になっていること」となります。
赤線どおし、青線どおしはそれぞれが同じタイミングで角度が変わり、常に平行になっていること
さて、ここからさらに場合分けをします。
移動前の配置(移動後の配置でも同じ)において、
まずは移動前の配置で
移動前の配置
「移動前の配置」が可能であることは既に前回の記事で証明済みです。
まずは、赤線どおしは同じタイミングで角度が変わり、常に平行になっていることを示しましょう。
前回の記事の「系」と同様の考え方により、図の黒い線分は長さが同じであることがわかります。
黒い線分の長さは全て同じになる
赤線の向きが変わった瞬間
新しい赤線も平行になります。また、新たな黒線の長さは
次の新しい赤線も平行になります。また、新たな黒線の長さは
最後の移動
というわけで、赤線は常に平行となります。
では次に、青線も常に平行であることを示しましょう・・・と言いたいところですが・・・。
赤線と青線は鏡像の関係
上図のとおり、図を直線
次に、移動前の配置で
正
辺接触かどうかわかりにくいので拡大してみました。確かに辺接触ですね。
接触している部分の拡大図
証明は、先ほどと全く同様に行うことができます。詳細は割愛しますが、下図を見ていただければご理解いただけると思います。
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同じ方法で偶数の場合も証明できます。
ここでは補助線の一例だけ紹介します。
方向転換したとき、次の頂点までの移動距離が必ず
正
直観的な証明ですませてしまい、厳密な証明の形にはなっていませんが、この問題に関しては厳密に表現するとかえって難解になってしまうと思います(言い訳)。
また、場合分けを全部まじめにやると膨大になってしまうので、途中からは端折ってしまいました。
とはいえ、どのパターンでも同様の方法で証明できるはずです。
Desmosファイルへのリンクを置いておきますので、いろいろ遊んでみてください。
この問題を考え始めた当初は「任意の
これほど美しい関係がこれまで知られていなかったというのは考えにくいような気もしますが、新発見でなかったとしても、このような美しい関係を発見することができたのは私にとって非常に感動的な出来事でした。ご協力いただいた皆さんにはあらためて感謝を伝えたいと思います。
記事の内容に関連する情報等ありましたらどんどん教えてくださいね。
今後ともよろしくお願いいたします。