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大学数学基礎解説
文献あり

【反例】「広義積分をする」と「関数列の極限を取る」の計算順序が交換可能ならば関数列は一様収束している

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背景

関数列が一様収束する時に、積分と関数列の極限が交換可能である事を示す事が出来ます。(詳しくは河添先生の書籍やwikipedia等をご覧下さい。)

では「積分と関数列の極限が交換可能である場合、関数列は一様収束している」という命題が成り立つか?と言われるとそうではありません。反例があります。(詳しくは式変形チャンネルさんの動画をご参考下さい。)

今回は、自分が気付いた別の反例をここで共有いたします。

要するに、「積分と関数列の極限が交換可能であるが、関数列が一様収束しない例がある。」という話です。

ただのグレゴリー・ライプニッツ級数の話

$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty } \sum_{k=1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7} + \cdots = \frac{\pi}{4}\ \ $ が成り立つ。

proof

公比が$-x^2$初項が$1$の等比数列の和を考えると、これは
$\displaystyle f_n(x)=1+(-x^2)+(-x^2)^2+\cdots + (-x^2)^{n-1}=\sum_{k=1}^n(-x^2)^{k-1}$
という関数列と見る事ができ、これは等比数列の公式を用いて、$\displaystyle f_n(x) = \sum_{k=1}^n(-x^2)^{k-1} = \frac{1-(-x^2)^n}{1+x^2}$となる。

式の両辺を$[0,1]$で積分すると有限和なので普通に計算できて、
$\ \ \ \ \ \displaystyle \int_{0}^{1} \Bigr( \sum_{k=1}^n(-x^2)^{k-1} \Bigl) dx= \int_{0}^{1} \frac{1-(-x^2)^n}{1+x^2}dx$
$\Leftrightarrow \displaystyle \sum_{k=1}^n \Bigr( \int_{0}^{1}(-x^2)^{k-1} dx \Bigl) = \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x^2}dx + \int_{0}^{1} \frac{-(-x^2)^n}{1+x^2}dx$

$\Leftrightarrow \displaystyle \sum_{k=1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1} - \frac{\pi}{4}=(-1)^{n+1}\int_{0}^{1} \frac{x^{2n}}{1+x^2}dx$

両辺の絶対値を取り、
$\Big| \displaystyle \sum_{k=1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1} - \frac{\pi}{4}\ \Big|=\int_{0}^{1} \frac{x^{2n}}{1+x^2}dx < \int_{0}^{1} x^{2n}dx = \frac{1}{2n+1}\rightarrow 0 $
よって、$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty } \sum_{k=1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1}=1-\frac{1}{3}+\frac{1}{5}-\frac{1}{7} + \cdots = \frac{\pi}{4} \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \Box $

無限等比級数の和

上で登場した関数列$\displaystyle f_n(x)=\sum_{k=1}^n(-x^2)^{k-1}$を半開区間$[0,1)$上の関数と見ると、この関数列$(f_n)_{n \in \mathbb N}$は半開区間$[0,1)$上の関数$\displaystyle f(x)=\frac{1}{1+x^2}$に各点収束はするが、一様収束はしない。

 
これを踏まえた上で、広義積分と$lim$の順序交換を見てみる。$x=tan \theta $の置換積分により、
$\displaystyle \int_{0}^{1} \Bigr( \lim_{n \rightarrow \infty }f_n(x)\Bigl) dx= \int_{0}^{1}f(x)dx = \int_{0}^{1} \frac{1}{1+x^2}dx = \frac{\pi}{4} $である。

一方、$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty } \int_{0}^{1} f_n(x)dx \ $を計算してみると、上のグレゴリー・ライプニッツ級数の計算結果より
$\ \ \ \displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty } \int_{0}^{1} f_n(x)dx \ = \lim_{n \rightarrow \infty } \Bigr(\int_{0}^{1} \Bigr( \sum_{k=1}^n(-x^2)^{k-1} \Bigl) dx \Bigl) \ \\ \displaystyle = \lim_{n \rightarrow \infty } \Bigr(\int_{0}^{1} \Bigr( \sum_{k=1}^n (-1)^{k-1}x^{2k-2} \Bigl) dx \Bigl)\ = \lim_{n \rightarrow \infty } \Bigr( \sum_{k=1}^n \Bigr(\int_{0}^{1} (-1)^{k-1}x^{2k-2} dx \Bigl)\Bigl)\ \\ \displaystyle = \lim_{n \rightarrow \infty } \sum_{k=1}^n\frac{(-1)^{k-1}}{2k-1} = \frac{\pi}{4}$

なので、関数列は各点収束であり一様収束しないが、
$\displaystyle \lim_{n \rightarrow \infty } \int_{0}^{1} f_n(x)dx $=$\displaystyle \int_{0}^{1}\Bigr(\lim_{n \rightarrow \infty } f_n(x)\Bigl)dx = \frac{\pi}{4}$であり、広義積分と$lim$の順序を入れ替えても計算結果が一致する例となっている。

 
※メルカトル級数も全く同じ話になります。

参考文献

投稿日:202295
OptHub AI Competition

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投稿者

仕事は高校数学を教える事とプログラミングです。物理も少々。

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