対数の定義
次のように対数を定義する。
対数,底・真数条件
とする。を底とするの対数を
と定義する。
このとき、を真数という。
また、のことを底の条件、を真数条件と呼ぶ。
底の変換公式
底の変換公式
がそれぞれ底の条件、真数条件を満たしているとき
が成り立つ。
普段教科書で見る底の変換公式はという形だが、変換剤としての役割を強調するためにこの形で書いた。
この形を見ると、あたかもと底と真数で"約分"しているように見える。当然、としてはいけないが、底と真数が同じ値であるときであれば約分と同じ操作が可能であるといっているのがこの公式だ。
変換剤
をに変える操作を一般に変換と言うことにする。
例えばからを引いてを足せば、がになる。
またをで割ってを掛ければ、がになる。
そして、先ほどの注意で見たように指数と対数を用いても変換ができる。
それぞれのに施した演算を、変換剤と呼ぶことにする。
先ほどはという2文字の変換を考えたが、今度はという3文字の変換を考える。そして、この変換の合成とという変換を比較することによって先ほどの底の変換公式を証明したいと思う。
底の変換公式の変換を用いた証明
について
だが、指数法則より
が成り立つ。
ここでをに変換する変換剤はであったから変換剤を比較することによって
が示された。
今、当然のように変換剤を比較して等号で結んでしまったが、一般にこの操作はできるものではない。厳密には対数関数の単射性(単調性)を用いる。
変換剤を等式で結べるなら
が成り立つのではないか?という声が上がるかもしれないが、単純に変換剤としての役割が違うのでこう議論することはできない。
底の変換公式がなぜ分数の約分のよう振る舞うか、という問いには、変換剤として同じ役割をしているから、という答えを返すことができるだろう。
強いて言うなら、という等式がこの特徴をよく表しているともいえる。
底と真数の入れ替え
は真数条件、は底の条件を満たしているとする。このとき
が成り立つ。
大見出しで用いた"底"という言葉の使い方が、対数の定義に用いた底という言葉の使い方と違うので混乱してしまうかもしれないが、ここでの底は、と書いたときのを指す言葉だとしておく。(この"底"を「指数関数の底」と書くこともある。)
これの証明は具体例を見たほうがすんなりと入ってくるので、先に例を挙げたいと思う。
上の例は素直に定理2を用いたものだが、下の例はをとした後、を「底のをに変換する変換剤」として解釈した解法である。この解法をもとに証明を考えると、これは容易いものだということが分かる。
終わりに
今回は、対数を変換剤という視点から考察し、有名公式の変換的思考からの証明を試みた。今回は数から数への変換というものに焦点を当てたが、ベクトルからベクトルへの変換(これにはまさに一次"変換"という名前がついているが)に焦点を当てても面白いかもしれない。