この記事の目的はタイトルにあるような小さな定理を示すことです。また一般相対論の数学的研究に興味を持つ初学者がEinstein系の数学的な研究のごく一部の雰囲気を感じることが出来ればと思います。
この記事ではリーマン幾何や一般相対論の基本的な事項は仮定します。例えばEinstein-Hilbert作用の変分によるEinstein方程式の導出などは理解しているとします。
この記事では以下の定理を示します。
時空
で与えられるEinstein-Scalar系を考える。ただし、
このとき、この系の解は
作用を変分してEinstein方程式と自由スカラー場の運動方程式が得られます。
4次元時空
を変分して得られるEinstein方程式と自由スカラー場の運動方程式は
である。ここで
作用を変分すれば
が得られる。さらに
である。
よって上の連立系を満たす
Einstein方程式は例えば4次元ですら2階非線形の10連立偏微分方程式ですので、一般的には非常に難しいです。なので時空や物質に関する仮定をおいて、各論的にその系の性質を考察することが多いです。
以降は主定理の証明を小さな命題に分けて進めていきます。
定理1の設定において、
となる。さらに
Ricciテンソルは対称テンソルであるから、任意の点
よって計量
と表される。ここで
と表されるようにすることができる。
構成の仕方から明らかに
となる。補題の最後の主張はこれまでの議論から明らかである。
開近傍
と表される。
2次元空間における楕円型偏微分方程式の解の存在と滑らかさについての議論により、ラプラス方程式
の解
となる。最後に
定理1の設定において、
となる。
となる。
よって
となる。
従って
であるから
定理1の設定において、
この記事では4次元の静的時空と実自由スカラー場の成すEinstein系の厳密解の性質を調べました。その結果、スカラー場は定数場で時空はRicci平坦しかありえないことが分かりました。従って4次元の静的時空においては実自由スカラー場は重力源としては意味のない設定であることになります。証明においては4次元という条件がかなり重要な役割を果たしていました。またポテンシャルがない自由場であるということも重要でした。これらのことから高次元化したり、複素スカラー場にしたり、ポテンシャルを入れたりすることが非自明な結果を得るためには必要なことであることが分かります。