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積分で面積や体積を求める際の直感的なアプローチ

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はじめに

高校数学では, 求積においては, "積分" という演算を "公式で定義したただの計算" として扱われるが, 具体的な計算方法はさておいて "何のためにそのような計算をするのか" について考えている生徒があまりにも少ないように思える (他の分野でも広く言えることにも思えるが).

そこで, 今回は特に積分に焦点を当てて, より直感的に積分を捉えて意味のある計算がそこにはあるのだと強く思っていただけるように, 個人的に集めた知識ではあるが紹介したいと思う.

前置き

高校の教科書や授業では, 積分を$$\displaystyle\int_\alpha^\beta f(x) \ dx = F(\beta)-F(\alpha)$$と数式で "定義" してこれが面積などを表すことを "性質" として導いているが, ここでは忘れてもらいたい.

少々細かい話

ここでは, 求積のための積分とは "リーマン積分" を指すとする.

本題

積分の定義

積分記号の意味

まず, "$\int$" という記号がどのような意味を持つのかを説明しておくが, 高尚な説明なしに端的に 区間内の全実数を順々に代入しながら足し合わせたもの と言えることを知っておいて欲しい.
 多くの方が数列に度々登場する "$\sum$" をご存じだと思うが, これが整数を順々に代入しながら足し合わせたものを表すことを思い出していただければ, ただ細かさを変えただけで意味はほとんど同じであると即座に分かるだろう.

積分の定義

では, 積分の定義に触れようと思う. 実は主に以下の2通りの定義がある.

不定積分

曲線の長さや面積, また体積など, 図形的な大きさの情報を求めること.
 例えば, 区間$[\alpha, \ \beta]$$y=f(x)$$x$軸の囲む面積を
$$\displaystyle\int_\alpha^\beta f(x) \ dx$$
とおく.

逆微分

原始関数を求めること.
 すなはち, 関数$f(x)$の原始関数の1つを$F(x)$として, 任意の原始関数を
$$\displaystyle\int f(x) \ dx=F(x)+C \ (C:任意定数)$$
と表す. (このとき積分記号は形式的なものでしかなく, 前述の意味はない.)

ここで, 微分前の関数は 原始関数 と呼ばれ, 面積を表す関数は 不定積分 と呼ばれる.
 特に, 原始関数とは微分法の知識のみで説明される言葉であり, 不定積分とは積分法の知識のみで説明される言葉であることに注意してほしい.

定義2については勘を働かせて微分したら見事に戻る関数を探すほか無いが, 今回この記事で主眼を置くのは定義1の不定積分を求めるための積分であり, 一線を画する.

以降, 積分とは定義1を指すこととする.

不定積分とは何であるか

不定積分が面積や体積を表すというのは前述のとおりであるが, 我々がなぜ面積を求めるために積分を行うのかということに軽く触れておく.

まず大前提として, ここでは不定積分が面積を表すのは定義そのものであって, あとから示すものではない. つまり, "なぜ積分で面積や体積が求まるのか" という疑問はそもそも生じるはずがないのである.

積分とは端的に言えば 求めたいものを細切れにして再び足し直すこと であるが, なぜそのようなことをわざわざするのかと言えば, ただ 直接求めるのが難しくても微小変化量には意味がありそうだから 程度のものである.

具体的な手法

面積の場合

まずは面積を例にとって考察してみよう.

$y=f(x)$のグラフと$x$軸の$[\alpha, \, x]$の部分との成す符号付き面積を表す関数 (当然ながら不定積分) を $S$ と置くことにすると,
$$S = \displaystyle\int_0^S dS$$
と表現することから始まる.
 しかし, この状態ではまだ $S$ はよくわからないものであり, $dS$ については "ほとんど0である" という情報しか分からないから, 意味のある計算ができそうにない. よって, $dS$をより意味のある値を持つ何かに置き換えることができないかと考えるのが自然である.

ここで, 微小面積が 底辺$dx$, 高さ$f(x)$の長方形を成している と考えて, 直感的に$$dS=f(x)dx$$が即座に分かるだろう.

したがって,
$$ \begin{align*} S&=\int_0^S dS \\ \\ &=\int_{\alpha}^x f(x) \ dx \end{align*} $$

$$ \begin{array}{c||c c c} S & 0 & \to & S \\ \hline x & \alpha & \to & x \end{array} $$

と続けられる. これが我々の普段よく目にする式であるが, 本来はこのように導かれるものである. 厳密には, 微分学の知識を用いて$\displaystyle \frac{dS}{dx}=f(x)$を示すことでこのような解釈が与えられるがここでは既知とすることで実際に正しい解釈であったことになる. 証明は後述する.
 また, 慣れてしまえば初めに$S$を持ち出すことなくいきなり $\displaystyle\int_\alpha^x f(x) \ dx$ が求めたい面積であることを明示してここから始めれば良い
 ちなみに, 多くの場合見た目を重視して深いことを考えずにいちなりこちらの表記を求めたい量の定義としている.

ここまでが多くの積分の問題の山場であるから, あとは具体的に計算する方法さえ分かってしまえばおしまいである. ただし, 愚直に区間内の全実数を代入しながら足し合わせることが現実的でないのはすぐに分かるから, 別のうまい計算方法を模索することになる.

ここで再び微分法の力を借りると, $\displaystyle\frac{dS}{dx}=f(x)$により$S$$f$の原始関数の一種である ということが分かるから, $f$の定数分の違いだけ無数に存在する原始関数の1つを適当に選んでそれを$F$と置くと,
$$S(x)=F(x)+C, \ C:定数$$
と書くことができる. ここで, $C$とは$S$$F$の "ズレ" を補正するための丁度良い定数であるから, 決して任意にとれるものではない.
 そして, $S(\alpha)=0$であることは$S$の意味から当然であるから,
$$\begin{array}{c} S(\alpha)=F(\alpha)+C=0 \\ \\ \therefore \ C=-F(\alpha) \end{array}$$
となる. よって, これらをまとめて,
$$\begin{align*} S(x)&=\int_\alpha^x f(x) \ dx \\ \\ &=F(x)-F(\alpha) \end{align*}$$
という結果を得る.

特に,
$$\displaystyle\int_{\alpha}^x f(x) \ dx = F(x)-F(\alpha)$$
の部分を取り出してみると, 不定積分は原始関数の最初と最後の差をとることに対応するということが分かった. しかし, 数学的に示しはしたが, 積分が開始時を0セットにした相対的な増加量を表すことを考えれば比較的容易に意味を理解できるだろう. つまり, 直接加え合わせる計算を行うのを回避して変化を見たに過ぎないのである.

微分積分学の基本公式

$$ \displaystyle\int_{\alpha}^x f(x) \ dx = F(x)-F(\alpha) \ (F:fの任意の原始関数) $$

重要な補題の証明

ここで後回しにしていた補題を示す.

ただし, ここまでの内容を理解して余裕が出てくるまでは一旦読み飛ばしてもらっても構わない.

微分積分学の基本定理

微分可能関数$f(x)$について,
$$\displaystyle\frac{d}{dx}\int_\alpha^x f(x) \ dx = f(x)$$
が成立する.

"微分可能関数$f(x)$について, $[\alpha, \ x]$において$x$軸と$y=f(x)$のグラフの囲む面積を$S$として$\displaystyle\frac{dS}{dx} = f(x)$が成立する." を示す.

区間$[x, \ x+\Delta x]$ における$S$の部分を$\Delta S$ とおき, 同区間において
$$\begin{align*} {\rm max} \ f(x) &= M \\ \\ {\rm min} \ f(x) &= m \end{align*}$$
とする. (最大値・最小値の定理より確かに存在する.)

このとき, 底辺が$\Delta x$の高さの異なる2つの長方形に着目することで
$$\begin{align*} & m\Delta x \lesseqgtr \Delta S \lesseqgtr M \Delta x \\ \\ \iff & \ \ \ \ \ m \lesseqgtr \frac{\Delta S}{\Delta x} \lesseqgtr M \end{align*}$$
が得られる.

したがって, $\ m, \ M \longrightarrow f(x) \ (\Delta x \to 0)$ と はさみうちの原理 により,
$$\displaystyle\frac{dS}{dx} = \lim_{\Delta x \to 0} \frac{\Delta S}{\Delta x} = f(x). $$

よって, 証明は完結した. $\Box$

補足

$\varepsilon - \delta$論法により "面積" という解釈なしに機械的な計算によってこの公式を示すことも可能であるが, 高校生にとって身近なものとして面積による評価の方法を採用した.

面積以外の場合

基本公式はいつも同じであるから, 以降は "何を積分すれば良いか (計算対象)" のみ考えてみる.

というのも, 補題と同様の手法で基本公式を示せたり, また実際は面積でなくても式の上では面積とみなしてそのまま補題の証明を適用したり, また単に結果をただ適用するなどして結局同じ公式を得るからである.

体積

求めたい体積を$V$とすると, 位置$x$での断面積を$S(x)$としてこの位置での微小量$dV$とは, 底面$S(x)$, 高さ$dx$の柱とみなして
$$dV = S(x) \ dx$$
となり, あとはかき集めることで計算対象の特定は完了する.

バウムクーヘン分割

$y=f(x)$のグラフと$x$軸の$[\alpha, \ \beta]$で囲まれた部分を$y$軸の周りに一回転させて得られる立体の体積を考える.

求めたい体積を$V$とすると, 位置$x$での微小量$dV$とは, 底面積$\pi(x+dx)^2-\pi x^2$, 高さ$f(x)$の薄い円環とみなして
$$\begin{align*} dV &=f(x) (\pi (x+dx)^2-\pi x^2) \\ \\ &= f(x)(2\pi \cdot x \cdot dx + \pi(dx)^2) \\ \\ &\approx 2\pi x f(x) \ dx \end{align*}$$
となる. ただし, 補題の証明を考えて$dx$の2次以上の項は無視できることに注意した. あとはかき集めることで計算対象の特定は完了する.

関数の復元

これは面積などとは少し異なるが, 積分の重要な有用性であるから一応紹介しておく.

ここまでの通り, 積分がかき集める操作なのであるから,
$$f(x)=f(\alpha)+\int_\alpha^x f'(x) \ dx$$
と復元できるのは容易に分かる. 積分の部分は$f$とは別の原始関数を用いて行っても良い.

ここで, よく注意すればこれは基本公式を移項して変形したものになっていると気づく. しかし, 基本公式の意味を考えれば当然の結果と言える.

ほとんど重要でない補足

一応説明しておく程度の話なので, この記事の本筋とはあまり関係ない. したがって特に疑問が無ければ読み飛ばしてもらって構わない.

では, いくつかの補題として与える.

微分係数が常に0であれば, 関数は恒等的に定数値をとる.

考える関数を$f(x)$とする.

ある区間$[a, \ b] \subset \mathbb{R}$において, 平均値の定理より
$$^\exists c \in (a,b), \ \frac{f(b)-f(a)}{b-a}=f'(c)$$

ただし, 条件より$f'(c)=0$であるから$f(a)=f(b)$となるしかないが, これはどのように区間$[a, b]$をとっても同様に言える.

よって, 常に$f(x)$は定数値をとり, 証明は完結した. $\Box$

原始関数は任意の定数分の差だけ無数に存在する.

"すべての原始関数がたかだか定数分の差しかない" を示せば十分であるから, これを示す.

$f(x)$のある2つの原始関数を$F, G$とすると, 原始関数の定義より,
$$\begin{align*} &F'=f=G' \\ \\ \Longrightarrow \ &F'-G'=0 \\ \\ \Longrightarrow \ &(F-G)'=0 \ (\because 微分の線形性) \\ \\ \Longrightarrow \ &F-G=Const. (\because 直前の補題) \end{align*}$$

よって証明は完結した. $\Box$

変数変換の説明の補足

上で例えば$dS$を求める際に "長方形の面積と解釈する" と説明したが, 実は機械的に
$$\int_0^S dS = \int_\alpha^x \frac{dS}{dx}\cdot dx = \int_\alpha^x f(x) \ dx$$
と変形しても良かった.

しかし, この記事では "直感的な解釈" に主軸を置いており, なるべく図形的解釈を与えるためにこちらを採用しなかった. どちらをとるかは各々の自由にしてほしいが, 個人的にはやはり長方形や柱の解釈をおすすめしたい.

最後に

以上のことをまとめると,

  1. 何を計算すれば良いか.

  2. どのように計算するか.

が求積のための積分の重要なステップである.

1は面積であれば$dS$を特定することであり, 2は微小量の関数の原始関数を何か1つ見つけて差をとることであるが, 2は毎回決まりきったことであるから問題の特徴が出るのは1であり, ここが山場である.

ここまで長々と語ってきたが, 結局は積分の問題を解くときに "何を" と "どのように" の2つを切り分けて 考えてもらいたかったということである.

ここで紹介したような直感的な意味の解釈により, 求積するための積分が問われる問題で方針に困ることはまずなくなると思う. 是非ご活用されたい.

少し言い訳

図を挿入して説明すべき部分でそれをしてないのは単に僕の怠慢によるものです. 時間を作れたら加筆します.

投稿日:2020118

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