行列の階数は編入数学においても得点源として非常に重要なのでしっかりと対策していきましょう。そんな行列の階数ですが、どんな意味を持っているのかご存知でしょうか。
今回は行列の階数を連立方程式と紐付けて解き明かしていきたいと思います。なお、行列の階数を計算するためには、行基本変形が必須となるので、まだ理解していない方は先に勉強しておくことを推奨します。
まずは、行列の階数のイメージを確認しておきましょう。以下の連立方程式をご覧ください。
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
x + y = 1 \\
2x + 2y = 2
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
これをみてどう思いましたか?
「解けねーよ」と思った方正解です。この連立方程式は解けません。それではなぜ解けないのでしょうか。それは、結局同じことを表している方程式が2つあるだけだからです。実際、上の式を2倍したものが下の式になっていることがわかるでしょう。つまり1つの式のみ有効となります(どちらか1つでどちらでもよい)。
次の式はどうでしょうか。
$$
\begin{eqnarray}
\left\{
\begin{array}{l}
2x + y + z = 1 \\
4x + 2y + 2z = 2 \\
3x + y +3z = 3
\end{array}
\right.
\end{eqnarray}
$$
こちらは先ほどと同様解けないことに変わりはないのですが、有効な式が2つになったのがわかるでしょうか。実際1番目と2番目のみが結局同じ式であり、他の組合せはすべて違う式です。
さてなぜこのような話をしたかというと、拡大係数行列の階数は有効な式の個数だからです。
ここで、拡大係数行列について復習しておくと、今回の場合だと以下のようなものです。
$$ \begin{eqnarray} \left( \begin{array}{ccc|c} 2 & 1 & 1 & 1 \\ 4 & 2 & 2 & 2 \\ 3 & 1 & 3 & 3 \\ \end{array} \right) \end{eqnarray} $$
まあ、言い換えれば行基本変形は、無駄な式を消していく作業と言えますね。そして無駄なものを消して残ったものが階数となるということですね。次の節の実際に計算してみましょう。
$$
\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc|c}
2 & 1 & 1 & 1 \\
4 & 2 & 2 & 2 \\
3 & 1 & 3 & 3 \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
2行目から1行目×2を引きます。
$$
\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc|c}
2 & 1 & 1 & 1 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
3 & 1 & 3 & 3 \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
2行目と3行目を入れ替えて(勘がいい方はここでわかるかもしれませんが)、1行目を3倍、2行目を2倍します。
$$
\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc|c}
6 & 3 & 3 & 3 \\
6 & 2 & 6 & 6 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
2行目から1行目を引きます。
$$
\begin{eqnarray}
\left(
\begin{array}{ccc|c}
6 & 3 & 3 & 3 \\
0 & -1 & 3 & 3 \\
0 & 0 & 0 & 0 \\
\end{array}
\right)
\end{eqnarray}
$$
これで階段行列になったので、階数が2になったことがわかったでしょう。
いかがでしたか、行列の階数と連立方程式の関係性について理解できたでしょうか。行列の階数は他にも色々な意味がありますが、イメージができない方は、まずこちらからおさえてみてはいかがでしょうか。