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コンパクト集合と閉集合の共通部分はコンパクト

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はじめに

こんにちは。MakkyoExistsです。Mathlogで記事を書くのも少し慣れてきました。こういった寄稿が数学科の学生にとって助けになる可能性があると思うとモチベーションが湧きますね。

今回は位相空間論の定理について解説したいと思います。主張は以下の通りです。

$X$を位相空間とする。$S$$X$のコンパクト集合、$F$$X$の閉集合としたとき、$S \cap F$もまたコンパクト集合となる。

位相空間論の授業では中盤くらいに習う定理でしょうか? 研究室で本を読むようになるとこういう定理はたくさん使いそうですね。

僕は普段の研究でこういった事実を頻繁に使っているわけではないのですが、最近読んでいる参考文献にこういった議論をしている箇所があったので位相空間論を復習したいと思い、この題材を選びました。ではさっそく中身に入っていきたいと思います。
(毎回前置きが長いのかな笑 まぁ良いや…笑)

定義(前提知識)

証明に入る前に、位相空間論の基礎知識をこの章でまとめておこうと思います。既に知っていらっしゃる方も多いと思うのでそういうときは読み飛ばして頂いて大丈夫です。まずは大前提となる位相空間の定義とは何かというところから軽く述べてみたいと思います。

位相空間、開集合系

$X$を集合とし、$\mathcal{O}$$X$の部分集合から成る族とする($\mathcal{O}$は必ずしも$X$の部分集合を「全て」取ってきているわけではない。)
$\mathcal{O}$が次の3条件をみたすとき、$X$位相(topology)が与えられたといい、$\mathcal{O}$に属する$X$の部分集合を$X$開集合(open set)、$\mathcal{O}$開集合系(open set system)という。

  1. $X$, $\emptyset$ $\in \mathcal{O}$
  2. $U_1, U_2, \dots U_n \in \mathcal{O}$ならば, $\displaystyle\bigcap_{i=1}^{n}{U_i} \in \mathcal{O}$となる。(つまり$\mathcal{O}$は有限回共通部分をとる操作で閉じている。)
  3. $\mathcal{O}$に属する部分集合からなる族$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$に対し、$\displaystyle\bigcup_{\lambda \in \Lambda}{U_i} \in \mathcal{O}$となる。(つまり$\mathcal{O}$は合併部分をとる操作で閉じている。)

位相が与えられた集合を位相空間(topology space)という。

これを初学者が見るとなんのこっちゃとなりますよね笑 僕も学部生の頃はそうでした。この記事のメインは冒頭の定理を示すのが目的なので定義について深入りはしませんが、また機会があったら位相空間の基礎みたいなノートも書こうと思います。(ていうか世にはもう分かりやすくまとめられているものがたくさん存在していると思いますけどね…笑)

では次に、閉集合の定義です。冒頭で紹介した定理にも「閉集合」という単語がありますし、ここはおさえておかなければなりませんね。

閉集合

$X$を位相空間、$\mathcal{O}$$X$の開集合系とする。
$X$の部分集合$F$について、$F$の補集合$F^c$$\mathcal{O}$に属するとき、$F$閉集合(closed set)という。

つまり、$F$の補集合が開集合になるとき、$F$を閉集合というわけですね。そして$X$の閉集合全体を$\mathcal{F}$とすると以下の性質が成り立ちます。

  1. $X$, $\emptyset$ $\in \mathcal{F}$
  2. $F_1, F_2, \dots F_n \in \mathcal{F}$ならば, $\displaystyle\bigcup_{i=1}^{n}{F_i} \in \mathcal{F}$となる。
  3. $\mathcal{F}$に属する部分集合からなる族$\{ F_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$に対し、$\displaystyle\bigcap_{\lambda \in \Lambda}{F_i} \in \mathcal{F}$となる。

これは開集合の3条件から導かれます。閉集合の大切な性質です。

以上であげた閉集合の3条件は「性質」と解説したが、$X$に閉集合の3条件をみたす部分集合族$\mathcal{F}$を与える(つまり「定義」する)ことでも$X$上に位相を導入できる。本筋とはズレるのでここでは割愛。

最後にコンパクト集合の定義をします。

開被覆

$X$を位相空間、$S$$X$の部分集合とする。$X$の開集合族$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$
$$ S \subset \displaystyle\bigcup_{\lambda \in \Lambda}{U_i} $$
をみたすとき$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$$S$開被覆(open covering)という。

コンパクト集合

$X$を位相空間、$S$$X$の部分集合とする。ここで、$S$の「任意の」開被覆$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$に対し、
$$ S \subset \displaystyle\bigcup_{i = 1}^{n}{U_i} $$
となる$U_{\lambda_1}, U_{\lambda_2}, \dots ,U_{\lambda_n}$ ($\lambda_1, \lambda_2, \dots, \lambda_n \in \Lambda$)がとれるとき、$S$コンパクト集合(compact subset)という。

コンパクト集合のニュアンス的には「任意の開被覆は有限部分開被覆をもつ」といった感じですね。

文献によっては上のコンパクトの定義を準コンパクト(quasi-compact)としているものもある。

定理の証明

では、いよいよ冒頭の定理を証明したいと思います。

再掲

$X$を位相空間とする。$S$$X$のコンパクト集合、$F$$X$の閉集合としたとき、$S \cap F$もまたコンパクト集合となる。

閉集合の性質をうまく使ってコンパクト性を定義に従って示すというだけなのですが、初学者には良い演習問題だとと思います。コンパクトであることを示さなければいけないので、まず$S \cap F$の開被覆を任意にとってくる必要がありますね。あとは$S \cap F$が実は有限個の開集合で覆えていることを言えば証明終了です。

では、示していきましょう。

$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$$S \cap F$の開被覆とする。つまり
$$ S \cap F \subset \displaystyle \bigcup_{\lambda \in \Lambda}U_{\lambda} $$
という状況である。このとき$F$の補集合を$F^c$とすると
$$ S = (S \cap F) \cup (S \cap F^c) \subset F^c \cup \displaystyle \bigcup_{\lambda \in \Lambda}U_{\lambda} $$
となる。また$F$は閉集合なので$F^c$は開集合となり$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda} \cup \{ F^c \}$$S$の開被覆となる。
$S$はコンパクト集合なので
$$ S \subset F^c \cup \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}U_{\lambda_i} $$
となる有限個の開集合$U_{\lambda_1}, U_{\lambda_2}, \dots, U_{\lambda_n}$, $F^c$がとれる。これは
$$ S \cap F \subset \displaystyle \bigcup_{i = 1}^{n}U_{\lambda_i} $$
という意味なので、元々取ってきた任意の開被覆$\{ U_{\lambda} \}_{\lambda \in \Lambda}$から$S \cap F$を覆える有限個の開集合をとれたことになり、$S \cap F$がコンパクトであることが言えた。

おわりに

本日は位相空間論をテーマに記事を書きました。TeX打ちで疲れますねこれ…。
$\lambda$」と打つとき大変です笑

そして今日はYoutubeの動画もリンクとして載っけてみました。この記事で説明したことをそのまま喋っています。もし良かったらそちらも覗いてみて下さい。

あ、あと誤字脱字や間違っている箇所なども気付いた方がいらっしゃいましたら教えて下さい。(正直公開してここが一番怖い… いや何回か読み直しているので致命的なミスはしてないと思いますけど…笑)

最後まで見ていただきありがとうございました。良いねや感想コメントめっちゃ待ってます!!

では、また('-'*)

投稿日:2020118
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投稿者

音楽してます。数学科です。エースバーンが好きです。

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