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フィボナッチ数列の研究まとめ 3

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前回の記事ではL(n)/l(n)1,2,4のいずれかになるということを示しました. 今回は, nが素数の場合1,2,4のどれになるかということがmod20でほとんどの場合決定できることを示します.

前提知識
  • 数2Bまでの知識
  • 集合, 写像についての記法, 用語が一通りわかる
  • 群論について基本的なことがわかる(わからなくても一部証明以外は読めます)
  • 平方剰余の議論に慣れていると楽に読める(基本的な内容には触れます)

また, 前回の記事 を先に読むことを推奨します.

前回までのまとめ

フィボナッチ数列

数列{Fn}n=F0=0,F1=1,Fn+2=Fn+1+Fn(nZ)で定め, フィボナッチ数列と呼ぶ. この集合に登場する整数をフィボナッチ数と呼ぶ.

加法定理

任意のn,mZに対しFn+m+1=FnFm+Fn+1Fm+1が成立する.

乗法定理

任意のn,mZに対しFn+mFnm=Fn2(1)n+mFm2が成立する.

周期関数

正整数nに対して関数l,L:Z>0Z>0を以下のように定める:
l(n)=min{kZ>0Fk0(modn)}
L(n)=min{kZ>0Fk0(modn)Fk+11(modn)}

これらはそれぞれ, フィボナッチ数をnで割った余りを考えたときに何個周期で0が出てくるか, 何個周期で余りが循環するか, ということを表しています( 前回の記事 参照).

前回の主定理

任意の正整数nに対してL(n)/l(n)の値は1,2,4のいずれかになる.

今回の話の準備

主定理の主張

まず, 今回示したいのは以下の主張です.

主定理

25を除く任意の素数pに対してL(p)/l(p)の値は以下の表のようになる. ここで, mod2019の場合はmod20の情報のみでは特定できない.
!FORMULA[29][-498813063][0]の値 L(p)/l(p)の値

mod2019の場合はほかのmodで特定できるのかと思ったのですが, mod40で少し情報を得られるのみでした. この内容を初等整数論の内容のみで示していきます.

平方剰余について

奇素数p, pと互いに素な整数aに対してルジャンドル記号(ap)を以下のように定める:

  • n2a(modp)となる整数nが存在するとき(ap)=1
  • n2a(modp)となる整数nが存在しないとき(ap)=1

このとき, 有名事実として以下を認めます.

平方剰余の諸法則

p,qを相異なる奇素数, a,bpと互いに素な整数とする. このとき, 以下が成立する.

  • (abp)=(ap)(bp)(ここでは積の法則と呼ぶ)
  • p1(mod4)のとき(14)=1, p3(mod4)のとき(14)=1(第一補充則)
  • (pq)(qp)=(1)p12q12(相互法則)

補題の証明

主定理を示すために, 4つの補題を示していきます. 以下, p5でない奇素数とします.

(1p)=1のときl(p)は偶数.

F2k+10(modp)とする. このとき, 乗法定理で(n,m)=(2k,1)とすることでFn21となり, 矛盾.

L(p)/l(p)=1,2l(p)が偶数 が成立.

)l(p)が奇数であるとき, 乗法定理で(n,m)=(l(p)+1,1)とすれば, Fl(p)0(modp)からFl(p)+121である. 前回の議論よりFl(p)+1GFi(p)の生成元なのでGFi(p)C4である. 前回の主定理より対偶を取れば示された.
)l(p)が偶数のとき上と同様にFl(p)+121であるので, GFi(p)E,C2であり示された.

(5p)=1かつl(p)が偶数のときL(p)/l(p)1

以下合同式の法はpとする. 2k=l(p)とおけば加法定理より
F2k=FkFk1+FkFk+1=Fk(Fk1+Fk+1)
今, F2k0であり, l(p)Fn0なる最小の正整数nなのでFk0. すなわち, Fk1+Fk+10,Fk1Fk+1
再び加法定理より
F2k+1=Fk2+Fk+12=(Fk+1Fk1)2+Fk+12
Fk1Fk+1を代入することでF2k+15Fk+12となる.
ここで, 平方剰余の積の法則より
(F2k+1p)=(5p)(Fk+12p)=(5p)=1
従って, F2k+11. 従って, GFi(p)の生成元F2k+1は単位元でないので, L(p)/l(p)1である.

(5p)=1かつl(p)が偶数のときL(p)/l(p)2

先の補題と同様に文字を置けばF2k+15Fk+12となる.
ここで, 平方剰余の積の法則より
(F2k+1p)=(5p)(Fk+12p)=(5p)=1
従って, F2k+11. 従って, GFi(p)の生成元F2k+11でないので, L(p)/l(p)2である.

主定理の証明

p3(mod4),p1,4(mod5)の場合

積の法則, 相互法則, 第一補充則より(1p)=1,(5p)=1,(5p)=1に気を付けると, 補題6, 7(), 9よりL(p)/l(p)=1である.

p3(mod4),p2,3(mod5)の場合

相互法則, 第一補充則より(1p)=1,(5p)=1に気を付けると, 補題6, 7(), 8よりL(p)/l(p)=2である.

p1(mod4),p2,3(mod5)の場合

積の法則, 相互法則, 第一補充則より(1p)=1,(5p)=1,(5p)=1に気を付けると, 補題7(の対偶)よりl(p)が奇数のときL(p)/l(p)=4であり, 補題8, 9よりl(p)が偶数のときもL(p)/l(p)=4である. なお, 実際は補題7(の対偶)よりl(p)は奇数である.

以上で, 主定理の証明ができました. お疲れ様でした.

おまけ

主定理の主張を書いたときに?部分についてmod40で少しわかるという話をしたので, それについて書きます.

おまけ

p5(mod8),p1,4(mod5)のときL(p)/l(p)2になり得ない.

以下合同式の法はpとする.
(5p)=1であるので, α25なるαを取ることができる. また, ϕ1+α2とおけば, フィボナッチ数の一般項についてFn1α(ϕn(1)nϕn)が成立する.
さて, L(p)/l(p)=2と仮定すると補題7()よりl(n)=2Mなる正の整数Mを取ることができる. ここで, フェルマーの小定理よりL(n)|p1であることに気を付ければ4M|p1である. 従って, Mが偶数であることを示して矛盾を導けばよい.
0F2M1α(ϕ2Mϕ2M)
よりϕ2Mϕ2M0,ϕ4M=1,ϕ2M=±1である.
ここで, ϕ2M=1であると仮定すると, F2M+11について
1F2M+11α(ϕ2M+1+ϕ2M1)=1α(ϕ+ϕ1)=1
であるので矛盾. よって, ϕ2M=1, すなわちϕM=ϕMである. 今, FMについて
FM1α(ϕM(1)MϕM)=1α(1+(1)M)ϕM
が成立する. l(p)の最小性よりこれは0ではないのでMは偶数になる. よって, 4M|p1とあわせ8|p1となるが, これは仮定に矛盾.

おわりに

最後まで読んでいただきありがとうございます. Z[ϕ]での議論などをすればもっと簡単に示せるかもしれないですが, 初等整数論でもここまでできます. 次回は指数を含む不定方程式とフィボナッチ数列の関係か, 群論と合わせたもっと踏み込んだ話かどちらかを書く気がします. それではまた次回!

投稿日:2022112
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  1. 前回までのまとめ
  2. 今回の話の準備
  3. 主定理の主張
  4. 平方剰余について
  5. 補題の証明
  6. 主定理の証明
  7. おまけ
  8. おわりに