前回の記事ではがのいずれかになるということを示しました. 今回は, が素数の場合のどれになるかということがでほとんどの場合決定できることを示します.
前提知識
- 数2Bまでの知識
- 集合, 写像についての記法, 用語が一通りわかる
- 群論について基本的なことがわかる(わからなくても一部証明以外は読めます)
- 平方剰余の議論に慣れていると楽に読める(基本的な内容には触れます)
また,
前回の記事
を先に読むことを推奨します.
前回までのまとめ
フィボナッチ数列
数列をで定め, フィボナッチ数列と呼ぶ. この集合に登場する整数をフィボナッチ数と呼ぶ.
これらはそれぞれ, フィボナッチ数をで割った余りを考えたときに何個周期でが出てくるか, 何個周期で余りが循環するか, ということを表しています(
前回の記事
参照).
今回の話の準備
主定理の主張
まず, 今回示したいのは以下の主張です.
主定理
とを除く任意の素数に対しての値は以下の表のようになる. ここで, でとの場合はの情報のみでは特定できない.
の値
でとの場合はほかので特定できるのかと思ったのですが, で少し情報を得られるのみでした. この内容を初等整数論の内容のみで示していきます.
平方剰余について
奇素数, と互いに素な整数に対してルジャンドル記号を以下のように定める:
- となる整数が存在するとき
- となる整数が存在しないとき
このとき, 有名事実として以下を認めます.
平方剰余の諸法則
を相異なる奇素数, をと互いに素な整数とする. このとき, 以下が成立する.
- (ここでは積の法則と呼ぶ)
- のとき, のとき(第一補充則)
- (相互法則)
補題の証明
主定理を示すために, つの補題を示していきます. 以下, はでない奇素数とします.
とする. このとき, 乗法定理でとすることでとなり, 矛盾.
が奇数であるとき, 乗法定理でとすれば, からである. 前回の議論よりはの生成元なのでである. 前回の主定理より対偶を取れば示された.
が偶数のとき上と同様にであるので, であり示された.
以下合同式の法はとする. とおけば加法定理より
今, であり, はなる最小の正整数なので. すなわち,
再び加法定理より
を代入することでとなる.
ここで, 平方剰余の積の法則より
従って, . 従って, の生成元は単位元でないので, である.
先の補題と同様に文字を置けばとなる.
ここで, 平方剰余の積の法則より
従って, . 従って, の生成元はでないので, である.
主定理の証明
の場合
積の法則, 相互法則, 第一補充則よりに気を付けると, 補題6, 7(), 9よりである.
の場合
相互法則, 第一補充則よりに気を付けると, 補題6, 7(), 8よりである.
の場合
積の法則, 相互法則, 第一補充則よりに気を付けると, 補題7(の対偶)よりが奇数のときであり, 補題8, 9よりが偶数のときもである. なお, 実際は補題7(の対偶)よりは奇数である.
以上で, 主定理の証明ができました. お疲れ様でした.
おまけ
主定理の主張を書いたときに?部分についてで少しわかるという話をしたので, それについて書きます.
以下合同式の法はとする.
であるので, なるを取ることができる. また, とおけば, フィボナッチ数の一般項についてが成立する.
さて, と仮定すると補題7()よりなる正の整数を取ることができる. ここで, フェルマーの小定理よりであることに気を付ければである. 従って, が偶数であることを示して矛盾を導けばよい.
よりである.
ここで, であると仮定すると, について
であるので矛盾. よって, , すなわちである. 今, について
が成立する. の最小性よりこれはではないのでは偶数になる. よって, とあわせとなるが, これは仮定に矛盾.
おわりに
最後まで読んでいただきありがとうございます. での議論などをすればもっと簡単に示せるかもしれないですが, 初等整数論でもここまでできます. 次回は指数を含む不定方程式とフィボナッチ数列の関係か, 群論と合わせたもっと踏み込んだ話かどちらかを書く気がします. それではまた次回!