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【ゲージ理論】ゲージ場、曲率、共変微分、共変外微分の定義

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 ゲージ理論または主G束の微分幾何で基本的な役割を果たすゲージ場、曲率、共変微分、共変外微分の定義をまとめます。Yang-Mills接続の安定性についての記事を書きたいので自分の中での整理も兼ねて準備のための記事です。相当手抜きです。

 $M$$m$次元多様体、$G$をLie群、$\mathfrak{g}$$G$のLie環とします。$\mathfrak{g}$の基底を$T_a,\ (a=1,2,\cdots,n)$$P=P(M,G)$を主$G$束とします。$M$の開被覆を$(U_\alpha,\{x^\mu_\alpha\}),(U_\beta,\{x^\mu_\beta\}),\cdots$とします。  

ゲージ場

ゲージ場

$P$ゲージ場(ゲージポテンシャル、ゲージ接続)とは、各$U_\alpha$上の$\mathfrak{g}$に値を取る1形式
$$ A_\alpha=A^a_\mu(x) dx_\alpha^\mu\otimes T_a $$
である。また$P$の変換関数$f_{\alpha\beta}:U_\alpha\cap U_\beta\to G$に対して、$A_\alpha,A_\beta$の関係はゲージ変換
$$ A_\beta=f_{\alpha\beta}^{-1}A_\alpha f_{\alpha\beta}+f_{\alpha\beta}^{-1}df_{\alpha\beta} $$
で与えられる。

曲率

 $\mathfrak{g}$に値を取る1形式$A=A^a_\mu(x) dx_\alpha^\mu\otimes T_a,\ B=B^a_\mu(x) dx_\alpha^\mu\otimes T_a$に対して、微分形式の外積と$\mathfrak{g}$のLie括弧を同時に計算する記号を
$$ [A\wedge B]:=A^a_\mu B^b_\nu dx^\mu\wedge dx^\nu\otimes[T_a,T_b] $$
と定義します。

曲率

$P$のゲージ場$(U_\alpha,A_\alpha),(U_\beta,A_\beta),\cdots$に対して、曲率(フィールドストレングス)とは各$U_\alpha$上の$\mathfrak{g}$に値を取る2形式で
$$ F_\alpha:=dA_\alpha+\frac{1}{2}[A_\alpha\wedge A_\alpha] $$
で与えられる。

 多くのゲージ理論では$G$は線形Lie群なので、$T_a$は行列で与えることができます。このとき$A$を要素が1形式である行列と見なすことで、
$$ \begin{align} [A\wedge A]&=A^a_\mu A^b_\nu dx^\mu\wedge dx^\nu\otimes[T_a,T_b]\\ &=A^a_\mu A^b_\nu dx^\mu\wedge dx^\nu\otimes (T_aT_b-T_aT_b)\\ &=2(A^a_\mu dx^\mu\otimes T_a) \wedge (A^b_\nu dx^\nu\otimes T_b)\\ &=2A\wedge A \end{align} $$
とできます。ただし$A\wedge A$は行列の積と要素である1形式どうしの外積を同時に実行します。よって曲率は
$$ F=dA+A\wedge A $$
と書くこともできます。また$A_\mu=A_\mu^aT_a$と書くと
$$ F=dA+\frac{1}{2}[A\wedge A]\\ =\frac{1}{2}\left(\frac{\partial}{\partial x^\mu}A_\nu-\frac{\partial}{\partial x^\nu}A_\mu+[A_\mu,A_\nu]\right)dx^\mu\wedge dx^\mu $$
なので曲率の成分は
$$ F_{\mu\nu}=\frac{\partial}{\partial x^\mu}A_\nu-\frac{\partial}{\partial x^\nu}A_\mu+[A_\mu,A_\nu] $$
と表すことが出来ます。

同伴ベクトル束の共変微分

 $\rho:G\to GL(r,K),\ (K=\mathbb{R},\mathbb{C})$を表現とします。表現$\rho$に関する同伴ベクトル束を$E=P\times_\rho K^r$とします。$E$に値を取る$k$形式を$\Omega^k(E)$と書くことします。

共変微分

 $\psi\in\Gamma(E)$に対して、共変微分 $D_A:\Gamma(E)=\Omega^0(E)\to\Omega^1(E)$
$$ D_A\psi:=d\psi+\rho_\ast(A)\psi $$
で定義する。ただし、$\rho_\ast$$\rho$を滑らかな写像と見なしたときの微分写像である。$E$のフレーム場を$\{E_i\}$とし、$\rho(A)$$\{E_i\}$に関する表現行列を$\rho(A)^i_j$と書くとき、
$\psi=\psi^i\otimes E_i,\ (\psi^i\in\Omega^0(M))$に対して、共変微分の成分表示は
\begin{align} D_A\psi&=(D_A\psi)^i\otimes E_i\\ (D_A\psi)^i&=d\psi^i+\rho_\ast(A^a_\mu T_a)^i_j\psi^jdx^\mu \end{align}
である。

同伴ベクトル束の共変外微分

 $\Omega^k(E),(k\geq1)$に対しては、$D_A$を拡張した共変外微分が定義されます。

共変外微分

 共変外微分$d_A:\Omega^k(E)\to \Omega^{k+1}(E), (k\geq1)$
$$ d_A\psi=d\psi+\rho_\ast(A)\wedge\psi $$
で定義する。$\rho_\ast(A)\wedge\psi$は行列の作用と微分形式の外積を同時に計算する記号である。$E$のフレーム場を$\{E_i\}$とし、$\rho(A)$$\{E_i\}$に関する表現行列を$\rho(A)^i_j$と書くとき、
$\psi=\psi^i\otimes E_i,\ (\psi^i\in\Omega^k(M))$に対して、共変外微分の成分表示は
\begin{align} d_A\psi&=(d_A\psi)^i\otimes E_i\\ (d_A\psi)^i&=d\psi^i+\rho_\ast(A^a_\mu T_a)^i_jdx^\mu\wedge\psi^j \end{align}
である。

投稿日:20221116

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投稿者

Submersion
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専門は相対論やLorentz幾何です。Einstein系の厳密解の構成や接触幾何の応用などの研究をしています。Ph.D保有者の中ではクソ雑魚の部類です。

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